055 景色のいい外国で家族の髪を切りたいって? [Mar 12, 2017]

昨年4月以来電車に乗ることがほとんどなかったのに、この1月から職業訓練所に通い出して毎日電車に乗っている。座って本を読めるのはうれしいが、車内に掲示されている広告にはあいかわらず腹立たしいものが多い。毎日これらのジャンク情報が目に入ってくるのは、たいへん煩わしい。今日はその中のひとつについて。

「景色のいい外国で、家族の髪を切る」のが、二十何歳美容師男の夢なんだそうだ。おそらくモデルになった美容師男はそんなことを言ってなくて、コピーライターが恰好よさげな事を書いただけなんだろうと思う。そうだとしても、このCMを出している会社も、代理店も、このコピーを見る人も、このコピーに違和感を持たないとすればどこか頭の配線が逝っちゃっている。

このコピーを見て私が真っ先に思い浮かんだのは、何年か前に香港で大陸からの観光客が急増し、街中で子供にウンチをさせてそのまま放置していたという話である。そもそも、髪を切ってさっぱりする人は気持ちいいかもしれないが、切った髪は他人にとってただのゴミである。この会社は自分達の感性が大陸客並みということが分かっているのだろうか。

そして、美容師の職業倫理として、客からオーダーがあればどこであろうと仕事をするのがあるべき姿で、「自分も景色を楽しみたい」などと言うのはプロではない。まして、カットした髪の毛はきちんと片づけて終わりにするのが当たり前で、その場に放置していいはずがない。近所の誰かがそういうことをしていてわが家に髪の毛が飛んできたら、おそらく文句を言うだろう。

それをまた、自分の庭ではなく、日本でもなく、外国の景色のいいところでやろうというのである。箒や塵取りを持って行くはずもないし、だいいち地面に落ちた髪の毛を回収などできやしないから、きっと放置する前提なんだろう。よその国の人に対して、プロとして恥ずかしいとは思わないのだろうか。

もちろん私だって、外国の景色のいいところで立ちションを絶対しないのかと言われると、絶対とは言い切れない。それでも、少なくとも人目につかないところで見つからないように気を付けるはずである。景色がいいところですれば気持ちいいことはいいだろうけれど、そう思ったとしても人前であけっぴろげに言うべきことではない。

あえて決めつけてしまうと、美容師男(またはコピーライター)はろくに外国に行ったこともなければ、景色のいいところに行ったこともなく、どういうことをすればどうなるという想像力もなければ、プロとしての職業倫理もないということなのである。

実はこのCM、なんとかいう結婚相談所のCMである。こういう感性・品格の男性会員と、こういうコピーに惹かれる女性会員が大勢集まっているんだろう。そして、こういう大規模CMで数千万かけるということは、少なくとも十何万かの会費を取るのだろう。まともな情報提供ができるのか、大いに首をひねるところである。

こういう会社に十万以上も払うくらいなら、1人1万円×2くらいの夕食に女の子を5回誘った方がよっぽどいいと思う。結果はそれほど出ないかもしれないが、ともかくおいしいご飯は食べれる訳だし、こういうCMを作るろくでもない会社に、ろくでもないカネの使い方をされることに比べると、プラスマイナスで金額以上の差が出てくると思う。

[Mar 12, 2017]