012 斎場御嶽(せーふぁ・うたき) [Feb 1, 2010]

第二次世界大戦により、沖縄県内にある琉球王国の遺跡の多くは破壊されたり焼失してしまい、首里城をはじめ多くの建築物は本土復帰後に再建されたものであることは、以前説明した。その中で、例外的に戦前からの姿がそのまま残っている遺跡が、斎場御嶽(せーふぁ・うたき)である。もちろん、世界遺産である。

斎場御嶽(せーふぁ・うたき)は琉球王国の神事が行われた王朝の聖地である。今でもビジターセンターより奥には入場料を払わないと入れないが、琉球王国の時代には一般庶民はもちろん、神職であっても相当格の高い者でないと、この神域に入ることはできなかったという。入場料さえ払えば誰でも入ることのできるのは、まことにありがたいことである。

ビジターセンターを入るとすぐ、森の中の細い上り坂になる。杖として使えるように、太い竹が置いてあるのはありがたい。参道の幅はそれほど広くないので、係の人達がずっと掃除してきれいにしている。周りの樹木は、テニアンを思わせる亜熱帯仕様で、ガジュマルの巨大な根が張り出していた。テニアン移住者の多くが沖縄県人だったというのもうなずける。気候風土が近いのである。

やがて巨大な石灰岩が張り出した場所に出る。ユインチ(寄満)、ウフグーイ(大庫理)と呼ばれる神域である。岩が張り出した下で、神事が行われたという。万一、上の岩が崩れるようなことがあれば、よくて大けが、まずくすると生き埋めである。周囲を見回すと、最近落ちて来たと思われる新しい岩も転々としており、ちょっと近寄りがたい。

そして、最も奥にある神域がサングーイ(三庫理)、巨大な岩が三角形の窓を作っている。これは、三角形に掘ったり人力で移動した訳ではなく、大自然の偶然の産物であるらしく、とても人が動かせるような大きさではない。上の方をみるともろくなっている岩が落ちてきそうな箇所もあり、やはり長居は遠慮したくなる場所である。

この三角形のトンネルを抜けた高台から、東方海上への展望が開けている。はるかに望むのは、沖縄本島東方の久高島(くたかじま)である。おそらく、真夜中に神事を行い、ここから海から上がってくる日の出を拝んで、王朝の繁栄を祈ったのではないだろうか。

こうして、はるか昔に思いをはせる斎場御嶽であるが、戦争の傷跡が全くないという訳ではない。神域の一つウフグーイ(大庫理)の近くの森の中に、忽然と小さな池が現れる。この池はなんと、米軍の砲弾によってできた穴に水がたまってできたということである。もちろん、もともと水路があった場所なのだろうが、何とも不思議な話である。


世界遺産・斎場御嶽(せーふぁ・うたき)のメイン、三庫理(サングーイ)。二つの巨石が三角形の通路を形作っている。

[Feb 1, 2010]