210 出雲大社 [May 1, 2006]

岡山の帰り道に、米子道から山陰道を経由して出雲大社にお参りした。

出雲大社は、大国主命(オオクニヌシノミコト)をお祀りしている神社である。大国主命は、天照大神(アマテラスオオミカミ)に国譲りをした神であることから、大和朝廷成立以前に日本を治めていた王を神話に反映したものであると考えられている。この地方には、宍道湖の向こう側(松江市あたり)は力持ちの神が朝鮮半島から綱で引いて持ってきたという伝説があり、青銅器(銅剣とか銅矛)以前の伝承ではないかといわれている。

さて、この大社(通常たいしゃ、と読むが、大社パンフによれば、おおやしろ)、通常の神社とは大きく異なる点が二つある。ひとつは、神社の構造である。国宝の本殿は江戸時代半ばの創建であるが、古代からの建築方法を踏襲しているといわれる。それは大社造りという独特の構造で、ちょうど碁盤の星に九子置いた形に、左・真ん中・右にそれぞれ三本ずつ計九本の柱を立て、その周囲に板壁を巡らすというものである。

そして、真ん中の柱(これを心御柱~しんのみはしら、と呼ぶ)から右の柱にも板壁を置き、ご神体に拝謁する場合は入口から左・上・右と向きを変えてお参りする必要がある。だから、ご神体は正面からみると左側(西側)を向いていることになり、一生懸命拝んでも神様はそっぽを向いている形になるのである(お寺ではないので、実際に仏像がそちらを向いている訳ではない)。だから、本殿西側のある場所には、「ここから拝むと、大国主命の正面になります」という立て札とお賽銭箱が置いてある。

 


出雲大社拝殿。注連縄の張り方が左右逆であるという特徴がある。


本殿の中心にある心御柱を回って、ご神体に拝謁する。

 

もう一つの特色は、柏手の回数である。普通の神社なら、「2礼・2柏手・1礼」が正式なのだが、出雲大社は「2礼・4柏手・1礼」なのである。ちょっと違和感があるのだが、実際やってみるととても落ち着くのは不思議である。この形式は全国で出雲大社とあと宇佐神宮だけということである。

大国主命はその語感から仏教の大黒天と意図的に混同されており、七福神の一柱として米俵に打出の小槌を持っている像が一般的に用いられているが、もともと「因幡の白うさぎ」で丸裸のウサギを助けてあげた心優しい神である。かつては大国主命の下に全国の神々が10月に集まったため、出雲ではこの月を神在月(かみありつき)、出雲以外では神無月(かんなづき)と呼ぶそうである。

天照大神に現世の国を譲ったことから、大国主命は常世(とこよ、いわゆる”あの世”)の神とされており、そのため縁結びに霊験があるとされる。それはそれとして、非常に静かな心が落ち着くお社である。門前町には多くの出雲そば店があり、中でも重要文化財であるJR大社駅跡の近くにある「大梶」は、地元でも有名なお店のようだ。一番人気の三色割子そばには生卵がのっているので、苦手な人は違うものを頼むといい。

出雲大社の帰り道に、宍道湖のほとりにある玉造温泉へ。ここは山陰地方最古といわれる温泉で、前日に泊まった湯原温泉と同様アルカリ性単純泉である。訪れたのは日帰り温泉施設「ゆーゆ」。内湯、露天風呂、打たせ湯とふんだんにお湯が使われているので、加水は仕方ないところか。それでもしっとりとしたアルカリ泉特有のしっとり感が楽しめる。風呂上りに畳敷きの大広間で休めるのもいい。


東側からみた、国宝出雲大社本殿。

[May 1, 2006]