113 由布院温泉(爆) [Mar 7, 2012]

由布院温泉は別府から山を越えたところにある。先日奥さんと一泊してきたので、その時の話。ちなみに、温泉地の名前はもともと”由布院”で、昔の市町村合併の際に湯平村と由布院町が合併して”湯布院町”となったことから、その町名が駅名やIC名、温泉の通称名として使われるらしい。そのように亀の井バスの待合所に書いてあった。

私としては、別府同様に湯量が豊富な温泉で、別府より奥にあるひなびた温泉という印象を持っていたのだが、奥さんはTVをよく見ているので、「あんたの苦手な人口密度の高い温泉」と最初から知っていたそうだ。だったら行く前に言ってほしかった。

JRの駅からしばらくまっすぐ進むと、大きな通りを渡ったあたりで急に人が多くなる。遠くから見ると、通りを埋めて人間がひしめいているのが分かる。まるで巨人戦の水道橋から東京ドームに向かう人混みのようだ。後からタクシーの運転手さんに聞いたところでは、奥にある金鱗湖の近くにバスの駐車場があって、そこに観光バスが止まって大人数が散策をするらしい。

さて、人混みのところまで行くと、そこから通りの両側に土産物屋や雑貨屋、スイーツ専門店が何百メートルも続いている。個々の店の大きさはさほどでなく、昔ながらの温泉土産物店とは違っておしゃれである。値段は結構高い。普通3~400円で売っているロールケーキに「由布院○○」と名前を付けただけで千五百円も取るのだから驚く。

もっと驚くのは、やたらと他人にぶつかっていく人が多いということであった。何だよーと思ってそういう人をよく見ていると、かなりの確率で日本語を話していない。よく見るとお店の方にもハングルや中国語の説明がある。そう、ここは海外からの観光客が集まる場所なのであった。

雑貨やスイーツにはあまり興味がないので、目についた「九州の銘酒そろってます」という謳い文句の酒屋に入ってみる。外装は気が利いているのだが、中に入ってみるとたいした酒が置いていない。せいぜい3~4000円のどこででも手に入るような銘柄ばかりで、ここでなければ買えないだろうという酒は見当たらなかった。

さらに、立派な陳列用ワインセラーがあったので、さてどんなワインを揃えているのかなと中をのぞいてみると、「サンライズ・カベルネ」(チリ)や「シュヴァルツ・カッツ」(ドイツ)がわざわざ横にして置いてあった。もうこれだけで、ワインのことをろくに分かっていない店だというのがよく分かる。

 


JR湯布院駅前。この日は雨で由布岳は全然見えませんでした。

 

さて、温泉地の本分はもちろん温泉である。JR駅に戻ってタクシーで宿へ。例によって営業妨害と言われるといけないので、仮に”Ⅰ”とする。その後の状況を調べてみると、HPがハングルとか簡体になっていたので、そういう方ご用達のツアー宿ということのようだ。

駅からタクシーで行くのが由布院温泉としてどの程度の位置関係なのかは、よそ者なのでよく分からない。ただ、先ほど歩いた土産物街を過ぎ、さらに大通りを過ぎ、墓地から細い道を入ったあたりで、これはもともとの温泉街ではないなと気がついた。それでも、別荘地のようにも見えるので、気を取り直す。

小規模ながら、建物はきちんとしている。この旅館には本館と離れがあって、我々は本館の宿泊。まず気付いたのがロビーがないこと。フロントも人ひとり何とか入れる程度のスペースで、見るからに狭い。個室は控えの間付きの広いものなのだが、共用スペースがほとんどないということは、もともと旅館として建てられたものではないのだろうか。

さて風呂である。部屋にもバスはあるのだが、こちらは温泉ではないということで別棟の大浴場へ。”大”浴場とはいうものの、脱衣所には6人分のスペースしかなく、ここでも?マークがつく。翌朝の食事時には二十人分以上の用意があったので、明らかにアンダーキャパシティである。

そして浴室に入ると、なんと内風呂部分には浴槽がなく、洗い場しかない。しかもカランの配置が悪く、排水が洗い場じゅうにたまってしまうよくない作りである。たまたま私一人で入っている時間なので問題なかったが、他人が一緒だったらかなり不快だっただろう。

一つしかない浴槽は露天である。露天とはいっても、岩風呂とか工夫している訳ではなく、大きなたらい状のものがど真ん中に置いてあるだけの殺風景なものであった。そして、HPでは「かけ流し」を謳っているこの温泉、なんと湯口から出ている源泉は「5分たったらやかんが一杯になる程度」しかない。

浴槽の広さと比べても、一日ためて浴槽が一杯になるかどうかという量。もちろん浴槽からあふれて流れるお湯もほとんどない。しかもお湯はぬるい。「源泉は90度あるので注意してください」とチェックインの時言われたので非常に期待したのだが、これではかけ流しとはいえない。

源泉かけ流しを強調する余り、熱すぎて普通の人には入れない温泉も困ったものだが、十分な湯量がないため実質的に「ため湯」になってしまった源泉では、清潔感も開放感もない。しかも浴槽は一つしかないのである。アルカリ性の食塩泉で肌触りは悪くないものの、これは何のねばねば感だと思うとあまり楽しくない。

さて、本来であれば温泉宿に来たら、着いて一風呂、寝る前に一風呂、起きてからまた一風呂というのが普通だと思うのだけれど、何とここの温泉は、夜は11時まで、朝は7時半からという時間制限ありなのだった。保安上とか書いてあったが、おそらく本当の理由は、湯量がないので24時間の提供はできないということなのであろう。

温泉成分分析表を見たが、「湧出量:測定せず」と書いてあった。ちなみに温泉名は由布院温泉ではなく、地元の名前とみられるものである。まあ、そのこと自体は他の温泉地でもありがちなことだが、湯量が足りなければ加水・加温するのが誠実な営業というものであろう。

結局この宿は、価格に見合った水準といえるのは部屋と食事だけで、温泉もサービスもひどかったし、館内施設も出した値段だけの満足感は得られなかった。以前、鬼怒川温泉でも相当がっかりしたものだが、こんなことをしていたら日本の温泉旅館はいよいよ先細りになるのではないだろうか。

[Mar 7, 2012]