212 徳島・神山温泉 [Jan 31, 2016]

お遍路の焼山寺ステージで、泊まりは約10km下って神山温泉にした。十二番焼山寺から十三番大日寺までは20km以上あって、どこかで泊らなければならない。よく選ばれるのは焼山寺の宿坊と麓のなべいわ荘だが、そうすると玉ヶ峠を越えなくてはならない。神山温泉でも峠越えはあるが、玉ヶ峠ほどには高低差がないのである。

神山町は徳島市からバスで1時間ほどなので、見た目はもっと山の奥にあるのではないかと思える。廃校(休校)となった小学校のプールは藻類が繁茂して緑色になっているし、集落の中心部を抜けるとすぐに人家はなくなってしまう。

焼山寺を正午前に出て、四国遍路発端の地とされる杖杉庵(じょうしんあん)まで1時間、さらにそこから1時間半歩いて神山町中心部、とどめにあと1時間、合計4時間近く歩いてようやく神山温泉である。ちなみにこのルートは少ないとはいえバス便があるが、歩き遍路であるので歩くことに意味があるのであった。

ちなみに、この日は鴨島を朝の4時半に出ているので、神山温泉に着くまで10時間以上歩いたことになる。神山温泉のすぐ近くまで来たら、道の駅の前で右に入るのが正解の道なのだが、買い物をするため道の駅に寄ったので人家の裏、車の通れない道を歩かなければならなかった。いずれにしてもすぐ近くだろうと安心していたら、そこから5分近くかかった。地図で見るより奥まったところにある。

建物は左に浴室棟、右にホテル棟があり、中でつながっている。下の写真のように、浴室棟にはかなりの数のお客さんが入っているようで、チェックインの時フロントの人に、「浴室棟にも入れますが、ちょっと混んでいるかもしれません」と言われた。ホテル棟にも専用の浴室があって、こちらはがらがらであった。もちろん、源泉は同じである。

泉質は含む重曹食塩泉で、成分表をみると+イオンがナトリウムイオン、-イオンでは炭酸水素イオンとカルシウムイオンが多い。瀬戸内温泉たまの湯のように飛沫がしょっぱいというほどではないし、のめこい湯のようにお湯がぬるぬるしている訳でもない。しっとりと落ち着いた肌触りは悪くない。この日は山道の上り下りを含めて10時間以上歩いてきたので、尚更である。

部屋に置かれていたパンフレットに、この温泉についておもしろい話が載っていた。もともとこのあたりには江戸時代、徳島藩直轄の銅山があり、その銅山で働く坑夫達が利用して一時は盛況であったそうだ。ところが銅山の衰退により明治時代初めに廃業。その約半世紀後の大正年間に地元の住職が中心となって鉱泉として再開したものの、第二次世界大戦で再び閉鎖となる。

さらに約30年後の昭和45年、山ひとつ隔てた鬼籠野(オロノ)出身の資産家が温泉を試掘(江戸時代の銅山の近くらしい)、十分な湧出量が確保できたことからその源泉を神山町に寄贈し、今日の神山温泉となったということである。つまり、2度閉鎖の憂き目にあい、三度目の正直で温泉として定着したということになる。

こうした背景もあるのか、地元の人達の愛着もまた格別のようである。ホテル棟「四季の湯」もなかなか気が利いていて、夕食のコースには松茸の土瓶蒸しが付くし、朝食には地元食材を中心とした具だくさん味噌汁がある。お遍路限定のお得なパックサービスもあり、全館Wifi完備である。

こんな山の中にと思うのだけれど、それは歩いてここまで来たからであって、JR徳島駅からバスで1時間くらいだからびっくりするほどのことはないのであった。


神山温泉全景。手前側が日帰り入浴施設、奥がホテル「四季の郷」。源泉は同じとのことです。


夕ご飯には松茸土瓶蒸しとか出てそれはすごかったのですが、こちらは朝ご飯。中央大きな器が神山名物の具だくさん味噌汁です。

[Jan 31, 2016]