810 恐山 [Mar 31, 2006]

これまで全国のいろいろな所に行って来たが、いままで見た中で一番の奇観をあげよと言われれば、躊躇なく恐山をあげる。

恐山は本州の果て、下北半島にある。今ではあまり騒がれなくなってしまったが、イタコという人たちがトランス(憑依)状態となることにより、すでに亡くなった人と話ができるという「口寄せ」は、以前はそれなりの敬意をもって恐れられたものである。思うに近世以前は、霊能者とかシャーマンとかいわれるそうした才能を持った人たちが、必然的に集まるような場所だったのではないかと思う。

さて、そのように不便きわまりない場所にあるのが恐山なのだが、前にも書いたように毎年北海道までドライブしていた時期があって、もう十数年前になるがある年に、青森からフェリーに乗らずに、恐山に寄ってから大間(今はまぐろで有名)に出て、そこからフェリーで室蘭に出よう、という計画を立て、むつ市から山道を上がっていった。

まず、上りで迷う。坂を上っていけばいいような気がするのだが、上ったり下ったりしてあさってのような方向に行くような気がする。行ったり来たりしてなんとかそれらしい道に入り、その頃から道端にかわいい着物を着させられた石のお地蔵さんが散見されるようになる。ここより山奥の道も走った経験はあるのだが、そうした道より市街地に近いにもかかわらず別天地という感じがした。道路も整然とし過ぎていて、かえって気味が悪い。

恐山全体はカルデラ状になっていて、外輪山を中に入るといよいよ山域になる。そして、カルデラ湖である宇曽利山湖(というのだから、おそらくもともとの地名が宇曽利山なのだろう)が見えてくる。この湖がまるでこの世のものとも思えないような、不気味な青なのである。そして周りは、真っ白な砂浜。まさにシュールな世界である。

拝観料を払って中に入ると、山内を一周する遊歩道があって、血の池地獄やら何やら、不気味なものが続く。ただ、そういう「いかにも的」なものよりも、山の上にもかかわらず海かと見間違えるような湖の青と白い砂浜、そして、遊歩道のそこここに刺してある風車や置かれている三輪車などは、まさに背筋が寒くなるような奇観であった。

こんな霊場に物見遊山でいったバチがあたったのか、大間に下りる道を間違えて変な道に入ってしまった。引き返そうとしてもUターンできそうな場所もなく、またすれ違うのもやっとという細い道だったので大急ぎで下っていった。案の定とんでもない回り道で、大間が近づいて海が見えると、そこには北海道に向けて出発したフェリーが見えた。予約していたフェリーである。結局次の便である午前2時半まで、時間をつぶすことになってしまったのであった。

[Mar 31, 2006]