411 箱根仙石原温泉 [Jan 1, 2007]

箱根と一口に言っても、その範囲は広大である。よく知られているように現在の箱根火山は、旧箱根火山が爆発して陥没し、また爆発し陥没してできた3層式火山であるのだが、その旧箱根火山というのは高さも大きさも富士山並みのものであったらしく、山裾は現在の小田原、熱海、御殿場近辺まで及ぶ広大な火山だったとのことである。そして2回目の大噴火後の陥没によりできたカルデラ湖が芦ノ湖になる。

俗に「箱根十七湯」とも言われるようにたくさんの温泉場があり泉質もさまざまであるが、そのように広大な地域にわたることから、それくらいあって不思議でない。いまや正月の風物詩となった箱根駅伝の中で圧巻である国道1号線を小田原から芦ノ湖まで走る五区の山登りの約20kmの行程だけでも、湯元、塔ノ沢、大平台、宮ノ下、小涌谷・・・と温泉街を通り抜けていくが、これらはすべて箱根十七湯に含まれる。

さて、今回ご紹介するのは、上にあげた1号線沿いからずっと芦ノ湖側に入ったところにある、仙石原温泉である。小涌谷までの温泉が小田原厚木道路から1号線等を使うのに対し、仙石原はむしろ東名御殿場ICから乙女峠を通った方が便利である。金時山をはじめとする箱根外輪山(旧箱根火山の名残り)を背景に、ススキの群生する草原はなんともいえない雰囲気がある。

ここの定宿はKホテル。子供の小さいときは何度も行ったけれども、このところごぶさただったので年末に久しぶりに訪れる。湯元や芦ノ湖あたりと比べるとややひと気がないように感じるが、周囲はほとんどが別荘や保養所で、しかもこのあたりは昭和初期というからもう70年も前にできた由緒ある保養地なのである。そして、ここの温泉は箱根十七湯に含まれているのだが、実は仙石原で温泉として湧出しているものではなく、海抜で約300メートル上にある大涌谷から引いている温泉なのである。

大涌谷の温泉は高温であるため、そのほとんどは水蒸気の状態で噴出する。この高温の水蒸気と、仙石原で湧出する井戸水(300メートル上までポンプで揚水する)を混合させることによってできる造成温泉を中心に、一部お湯として出る温泉を混ぜて、仙石原まで引き湯しているものなのである。地下で起こっている温泉の生成過程を地上で人工的に行っている、と考えると分かりやすい。しかし、あまりこのことを強調すると営業妨害になってしまうのかな(詳しくは箱根温泉供給株式会社のホームページをご参照)。

Kホテルの温泉も、家族風呂がこの引き湯でカルシウム-硫化物泉(硫酸塩泉)、大浴場が近年になってホテル地下から引いた単純泉と二種類である。引き湯の硫酸塩泉はかなり強い酸性で、肌にぴりぴりと刺激がある。そして造成した後には加水していないので、かなり熱い。案内書にも1回30分、1日1回の入浴が適当と書いてあるように、なかなかきつい温泉である。おまけにイオウ泉独特のにおいがかなり残るのだが、天然のピーリングというのか、肌がすべすべになる。

単純泉の方はそれほどの刺激もなくゆっくり入れるのだが、お湯の出口あたりにいるとかすかにイオウ泉のにおいがする。成分分析表をみるとSO4イオンがかなり含まれていたから、おそらく土地柄もあり硫酸塩泉にかなり近いのではないかと思われる。そして、温泉の心地よさとおいしい地酒であっという間に眠れる。一年の疲れを取るにはぴったりの温泉といえるだろう。


一面すすきの仙石原。

[Jan 1, 2007]