290 二十九番国分寺 [Oct 17, 2016]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

大日寺から国分寺まではおよそ9km。大日寺を出たのが10時20分だから、普通なら12時半前後には着きそうだ。納経とお昼で4、50分、次の善楽寺まで7kmを1時間半として、善楽寺に着くのは3時くらいになりそうだ。

この日のスケジュールのポイントは、どこの駅から引き返せるかということである。最も望ましいのは高知駅まで歩いてしまうことで、そうすれば翌日は10kgのリュックを背負ってそのままホテルに荷物を置いてから歩くことができる。薊野まで歩けば、翌日は薊野・高知間、土佐一宮まで歩けば、土佐一宮・高知間、それぞれ10kgの荷物を持っての歩きとなる。

前の日と違って雨の心配はないが、夏のように強い日差しで疲れてしまうことが心配である。まだ10時を回ったばかりだというのに、ペットボトルのお茶を一気飲みしてしまうほどの暑さなのであった。

大日寺からは少し戻って西に折れる道に入る。しばらくは、新興住宅街が続く。へんろ道とは思えないようなたたずまいである。やがて古い住宅街となり、水路が現れる頃には田園地帯となって、へんろ道らしくなった。用水は道路と同じ高さを流れている。もう川が近いということである。

20分ほど歩くと、記念碑の立っている小公園のあたりで太い道に出る。前方はゆるやかに登って行く坂で、登った先が物部川を渡る橋のようである。物部川はずっと「もののべがわ」と読んでいたのだけれど、看板の振り仮名をみると「ものべがわ」が正しいようである。

物部川を越えると、あとは見渡す限りの田園地帯で、家はまばらにしか見えない。自販機は橋を下りたところに1つあったきり、休憩所やベンチもない。もちろんトイレもない。そして、基本的に真っ平で身を隠すところもないので、物陰で用事を済ましてしまうという訳にもいかない。

そういった不便な道なのだけれど、景色は申し分ない。右に山々が迫り、周囲は平坦な田園地帯、横を用水路が流れる。道はまっすぐか多少のスライス。前日に通った安芸の自転車道と比べると、開放感には雲泥の差がある。問題があるとすれば、10月後半とは思えないくらい暑いということである。

手元の温度計をみると、31℃を示している。朝の天気予報で高知県の最高気温は29℃といっていたから、体に近く日向にある温度計ならそれくらいにはなるのだろう。こういう時こそ一息いれながら歩きたいのだが、こういう時に限って休憩所もトイレもないのであった。

車通りのある直線道路と交差した後は、再び田舎道になる。1時間ほど歩いて、農家をいくつか過ぎたあたりにへんろ小屋のある松本大師堂がある。しかし、ここも休む場所だけで自販機もトイレもない。先客もいたので、一息ついてすぐに出発した。

 


物部川に向かっておだやかな田園地帯を行く。道路と同じ高さの疎水があって涼しげなのだが、低気圧が抜けてたいへんに暑い。


これまで「もののべ川」と読んでいたが、正しくは「ものべ川」のようだ。車道とは別に、歩道用の橋がかかっている。


大日寺から国分寺までの9kmは、ほとんど起伏がなく、景色のいい歩きやすい道。ただし、国分寺近くのコンビニまでほぼ2時間トイレなし。

 

松本大師堂を過ぎたあたりが、国分寺への道ではたいへん分かりにくいところである。とにかく、行先表示や遍路シールがほとんどない。山の方向で東西南北は分かるし、土讃線の線路を越えてから北に向かえばいいのだが、ひとつ間違えるとかなり違う場所に出てしまう心配がある。

松本大師堂からは、国道195号線と土讃線の踏切が目標となるのだが、遍路地図に書いてある休憩所は見当たらない。このあたりまで来ると、まだまだ空き地が多いとはいえ住宅も増えてきているようなので、壊されて宅地になってしまったのかもしれない。

やがて国道195号と踏切が見えてくる。ここまでは間違っていない。踏切を渡り、時折出てくる国分寺方面の標識を頼りに、線路から離れて西に向かう。すると、南国市内を南北に縦断する県道にぶつかる。ここを北上すれば、国分寺に向かうはずである。

南北縦断道路に入ってすぐ、太い道路と交差する。国道195号線バイパスのようだ。その交差点に、ファミリーマートとセブンイレブンがある。大日寺以来、2時間ぶりに見る休憩のとれる施設である。トイレもあるはずなので、遍路地図の推奨ルートでは7、8kmぶりにきちんと休める場所ということになる。

もう12時なので、ファミマで休んでお昼という考えが一瞬頭をよぎったが、国分寺まであと2km弱なのでがまんする。一度休んでしまうと、また歩き出すのは結構気合がいるような暑さであることがひとつと、ファミマまで行く50mの余計な歩きが難儀なのだ。このあたり、実際歩いたことのある方にはお分かりいただけると思う。

とはいえのどはかわいたので、道端の自販機で再びペットボトルの一気飲み。バイパスを抜けると、いっぺんに交通量が減った。饅頭屋さんの前を抜け、自販機が盛大に並ぶ大きな果樹園の横を抜けるが、なかなか国分寺への分岐までたどり着かない。

本当に、もう10月半ばだというのに、この炎天下は何だろうと思う。気候さえよければこんなに苦労する道だとは思えないし、快適な散歩道に違いないのだけれど、この暑さには参った。道は再び登り坂となり国分川を越える。坂を下りてようやく、左方向国分寺の標識が現れる。

しかし、曲がってもまだ国分寺は見えてこない。3、4分歩いて、ようやく門前に喫茶店Cotton Timeを見つけ、参拝の前にとりあえず入ってしまおうとドアを開ける。意外と混んでいたが、空いている席を見つけて一息。たいへんに苦労した9kmであった。

注文をした後トイレをお借りして、ついでに顔も洗ってしまう。速乾白衣はびしょ濡れで、行儀は悪いが脱いでTシャツだけになる。後から日焼け止め乳液を塗り直そうと思ってデイパックに入れてあった乳液を出してみると、乳液が熱くお湯になっていたのにはたいへん驚いた。

 


大日寺・国分寺のほぼ中間にある松本大師堂。休める場所はあるが、トイレは見当たらなかった。


松本大師堂の少し先で踏切を渡る。このあたり、遍路地図では休憩所があることになっているが、見当たらない。


へんろ道は国道195号バイパスを越えて、国分寺への最後の直線道路へ。バイパス交差点にファミマとセブンができている。

 

Cotton TimeはWEBで評判の喫茶店で、国分寺にお参りする時はぜひ寄りたいと思っていた。そして実際行ってみると分かるが、お遍路の姿はほとんどない。地元の主婦層が3人4人連れで来て、おしゃべりする場所なのであった。

昼のメニューはランチセット980円とカレーセット800円。カレーセットを注文して出てきたのが、まず手作りカレーと野菜とスパゲティのサラダ、ほうれん草のスムージー。食後にお好みのドリンクとデザート(アイスクリンとさつまいも)である。これで800円はお値打ちだろう。

残念なことに、こちらのカレーにも前日の得得うどんと同様に半熟卵が入っていて、よけて食べるのに苦労した。ほうれん草のスムージーもさつまいもとアイスクリンのデザートも絶品。地元の奥様方の中で場違いだったかもしれないが、ゆっくりさせていただいた。12時半頃にお店に入って1時までいたから、随分とゆっくりさせていただいたことになる。

Cotton Timeのすぐ横が国分寺の山門である。山門から本堂まで参道を少し歩くが、それでも往時の規模から比べるとかなりコンパクトになっているとのこと。木々が植わっていて涼しいのには安心する。

摩尼山国分寺(まにさん・こくぶんじ)、いうまでもなく聖武天皇の勅願により設置された国分寺のひとつである。当時の土佐国府もこの周辺にあり、「国府」「内裏」といった地名が残っている。「土佐日記」を書いた紀貫之もこのあたりに住まいがあったようだ。

阿波国分寺と同様にかつては多くの堂宇を有していたが、戦国時代に一時衰退した。ご本尊は千手観音。長宗我部元親が寄進した本堂に納められている。山号の「摩尼」は摩尼宝珠。千手観音は多くの手を持ち、造形上は42本作られることが多いが、その1つに摩尼宝珠を持っている。

そして、こちら国分寺では、次の三十番一ノ宮が神仏分離で混乱した際、ご本尊である阿弥陀如来を一時お預かりしていたそうである。ということは、場合によっては香川県の六十八番・六十九番と同じように、同じ場所で二つのご朱印ということになったかもしれない。

本堂・大師堂のお参りを終えて、納経所はもう一つ門をくぐった東側にある。納経所前で中年の男性が近づいて来て、「お茶のお接待がありますのでぜひ」と言われる。普通の服だったから、お寺の人ではなく檀家の方かなあと思った。

納経所の横に給茶機があり、水・お茶・コーヒーそれぞれのホット・アイスが選べる。せっかくなので、アイスコーヒーをご馳走になる。ベンチも置かれていてひと休みできるようになっており、たいへんありがたいご接待であった。

[ 行 程 ]大日寺 10:20 → [5.0km]11:35 松本大師堂 11:40  [4.2km]12:30 喫茶Cotton Time・国分寺 13:20 →


国分寺本堂。境内は木々が多く、暑い日にはたいへんありがたい。


庫裏と納経所は、本堂から門をくぐってあちら側にある。お茶・コーヒーのお接待がある。


門前の喫茶店Cotton Time。国分寺の参拝客目的というよりも、この近辺では気の利いたお店として知られているようです。そんな客層でした。

[May 27, 2017]