517 高峰温泉 [May 2, 2014]

高峰温泉は浅間山の中腹、標高2000mに建つ一軒宿である。

新幹線の佐久平駅からバスで約1時間、途中の小諸駅からは40分、小諸の街から北へ山道を登って行く。夏期は宿の前までバスが来るが、冬の期間はアサマ2000スキー場までしか除雪が行われず、そこから宿までは雪上車が迎えに来る。バスは1日2本しかないので、その時刻に合わせて来てくれるので安心である。

雪上車は3台あって、送迎客の数に応じて大きさを変えているらしい。私が行った時は春休みのためお客さんが多く、一番大きな雪上車が来ていた。中だけでなく上にも座るスペースがあって、慣れたお客さんは上を選ぶようである。私も帰りに乗せてもらったが、浅間山の雄大な姿を望むすばらしい景色であった。

スキー場のゲレンデの間を抜け、雪上車で10分ほどで高峰温泉である。夏は車も通れる林道だが、冬は1mを超える積雪である。雪上車以外に来る手段はない。(荷物がなければスノーシューかスキーでの移動は可能)。そしてスキー場を過ぎると売店も自動販売機もここにしかない。文字通りの一軒宿である。

朝のバスは11時に着くので、お昼もこちらでお願いすることになる。サーモンや鯉の定食、そば、おやきなどがあり、私は鮎の塩焼き定食をお願いした。チェックイン時刻よりかなり早く、お昼頃には部屋に入れてくれる。窓からは小諸市内、遠くには八ヶ岳まで望む、これもまたすばらしい景色であった。

こちらの宿に来てちょっとびっくりしたのは、山の中の一軒宿にしては館内設備がとてもきれいだったことである。もちろん、夏場に車が入って来れるということも大きいのだろうが、まず部屋に入って畳が新しいことに驚いた。そしてトイレはTOTOの最新節水型ウォシュレットである。ここは山小屋じゃなくて温泉旅館だと認識を新たにした。

窓際にはヒーターがついており、濡れた衣服などはここで乾かすこともできる。また1階には大きなストーブが終日ついており(天然ガスが出るらしい)、靴やスノーシューはここで乾かしてくれる。このストーブのおかげで、館内は夜でも薄着でいられるほど暖かい。

それと驚いたのは夕食である。場所柄、鯉やサーモン、鹿肉、山菜などが主ではあるものの、先付からお造り、鍋、煮物、焼き物、揚げ物と本格的な和食コースである。マグロとか牛肉を出さないところがなかなかである。この日は初スノーシューでほとんど食欲がないくらい疲れていたのだけれど、いざ食堂に行ってビールと湯葉のおひたしをいただいている間に、何とか生き返ることができた。

宿の特色の一つは標高2000mから見る満天の星空で、この日も夜9時から鑑賞会があったのだけれど、スノーシュー~温泉~夕飯+ビールの3連闘により、8時回ったあたりで早々に寝てしまったのは残念であった。冬の澄んだ星空では、条件がよければ天の川までくっきり見えるということである。これはまた、次回の楽しみにとっておこう。

 


冬場には、バス終点のアサマ2000スキー場まで、雪上車のお迎えがあります。


夕食はこの後、焼き物、蒸し物、揚げ物と続く。鍋は鹿鍋。食前酒はイタドリ酒ということです。

 

さて、温泉の話である。

部屋に備え付けてある「高峰温泉の歴史」をみると、もともと明治時代に先々代が源泉を見つけてボーリングをしたけれど土石流が来て埋まってしまい断念、先代が苦労の末ボーリングに成功して温泉宿を開いたのだが火事で全焼、現在の場所で再開できたのは比較的新しく、30年ほど前ということである。

(私が高校時代に篭ノ登山に登った時には、この場所にはなかったことになる。ちなみに、高峰温泉の歴史の他にも、山と渓谷とか、秘湯の本とかが部屋に置いてあって、朝の雪上車待ちの時間に結構おもしろく読ませていただいた。休憩室にも、本が多く置いてある。)

昭和の終わりに火事で焼ける前は、もう少し下の谷の中にあったということである。当時の写真が館内に残っているが、周囲に高い木々が見えて、いかにも谷間に建っているという風情であった。現在は水ノ塔山の登り口付近、稜線に位置しているので、景色はいまの方がかなりいいだろう。源泉から宿まで、何百mかポンプアップしているとのことだ。

泉質はカルシウム・ナトリウム・硫酸塩泉。源泉は30度ほどなので加温している。浴用とは別に飲用に源泉を引いてあるが、飲むにはちょっと硫黄の匂いがきつい。糖尿病に効果があるということだから、一杯だけいただく。

山小屋と同様に、なるべく石鹸等は使わないように注意書きがある。というのも、ここで使用している「創生水」は油を溶かす力が強く、石鹸を使わなくても十分汚れが取れるそうである。個人的には、最近尾瀬とか三条の湯に行って石鹸禁止は慣れている。山の中だし仕方がないと思う。

お風呂場は1階、2階にあり、さらに屋外を50mほど行くと「雲上の野天風呂」があるらしい。らしいというのは、この日は雪が多すぎて歩いて行くのは危険ということでやっていなかったからである。それでも、1階、2階の温泉で十分堪能できた。当日の夕方、スノーハイクで疲れた後は2階の展望風呂へ。ここからは高峰山と深沢川の深い谷を望むことができる。

お湯の硫黄臭はそれほどきつくない。そして、刺激もそれほど強くない。アルカリ泉ほどではないが、肌にしっとりとなじんでくるお湯であった。山歩きで疲れた足先やふくらはぎをマッサージしながら湯船につかっていると、何ともいえずリラックスすることができた。

ゆっくり眠った後、朝まだ暗いうちに1階・ランプの湯へ。その名のとおり灯りはランプだけで、いかにも風情がある。ここには2つの湯船があり、そのうち1つは源泉をそのまま使ってある。30度くらいあるのでサウナにある水風呂ほど冷たくはないが、それでもちょっと冷たい。せっかくだから入ってみる。硫黄臭が加温したものより強いように感じた。

私が訪問したすぐ後の4月には館内改装のためお休みとなり、この工事で各部屋にトイレ(ウォシュレット付き)が付くということである。山小屋に近い宿から、さらに本格温泉旅館に近づきつつあるようだ。きっと経営状態もいいのだろう。一軒宿のひなびた雰囲気を残しつつ、次の世代に引き継いでいただければと思う。


雪上車の上から宿の入口。帰りにはお見送りがありました。


帰りは快晴。前方に大きく立ちふさがるように浅間山も見えます。もうすぐ4月なのに雪は十分で、アサマ2000スキー場も盛況でした。

[May 2, 2014]