510 新潟で日本料理 [Jul 17, 2007]

しばらく前から、日本旅館を敬遠する傾向にある。というのは、日本旅館イコール1泊2食が定番なのだけれど、その食事の質的低下が著しいからである。

以前は、部屋食でも宴会場でも、最初に座った時に出されている料理の他にできあがってから運ばれてくる料理があり、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく楽しむことができた。ところが最近では、すべての料理が最初からお膳に乗っている。そのため食べている間に温かい料理はなまあたたかく、冷たい料理はなまぬるくなってしまう。これでは日本料理とはいえない。

この不満は、昨年ある温泉旅館に行った時に頂点に達した。日本料理のコースは昔の本膳料理から発展した会席料理が基本であり(同じ読みでも懐石料理=茶懐石とはルーツが違う)、先付け、一汁三菜(刺身・焼き物・煮物)、揚げ物、蒸し物、酢の物、止め椀、水物と大体相場が決まっている。海鮮割烹を売りにしている店では魚を中心に組み替えるなどそれぞれの店で特色があるのだけれど、この大枠から外れることはあまりない。

ところがその旅館では、全館分を一度に調理しているらしく、最初にお膳からお櫃から吸い物から全部持ってくる。そして料理は茶碗蒸しを除いてすべて室温である。茶碗蒸しは電子レンジでチンしているのではないかという想像がとっさに働いた。さらに、揚げ物(=天ぷら)がない。一度に持ってくるとなると、作りたてを食べないとおいしくない天婦羅をメニューに入れられないのだろう。

おそらくそういうことの起こる背景には、ツアー営業のやりすぎがある。さらにその原因はというと、価格の安さだけを重視する消費者の嗜好がある。温泉バスツアー1泊7,980円とかをせっせと営業したら、こうなるに決まっているのである。もちろん、値段をもう1グレード上げて1泊30,000円くらい出せばまともな旅館はあるのかもしれないが、これまで1泊15,000~20,000円でそこそこまともな宿に泊まれたことを思うと、そこまで出すのはくやしい。

前置きが長くなったが、その解決策としてちょっと前からやっているのが、旅行に行く際に温泉は温泉で、食事は食事で、泊まりはホテルでと要素を分解することである。今回新潟に行ったのもこのやり方で、月岡温泉の日帰り入浴と、ホテルは東横イン(朝食がつく)、そして夕食は、戦前に赤坂、祇園と並び称せられたという古町の一角にある日本料理「小三」に行ってみた。

いかにも由緒ありそうな玄関を入り、全個室の座敷に通される。坪庭がしつらえてあり、すっかり日が暮れた頃には蛍を楽しむこともできる。もちろん、料理はひと品ずつ持ってきてくれる。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく出てくる。お酒はもちろん地元新潟産で、久保田の萬寿をいただく。一年の疲れが飛ぶ思いである。

あいなめのお吸い物に、お造りはひらめと甘海老、焼き物はナメタガレイ、天ぷらの後には胡麻豆腐とじゅんさい。みんなおいしい。コースの最後は、おそばと果物なのだが、料理とおそばの間に枝豆が出る。この枝豆がまた新潟の名産で、これが出ると灯りが落とされて蛍タイムとなる。心憎い演出である。普段1時間くらいで一気に飲むだけ飲んでしまう私も、こういうふうにゆっくり料理が出ると自然にゆっくり飲むようになるのは不思議である。

やっぱり料理は、ちゃんとしたところでちゃんとしたものを食べるべきだなあと思った夕べでした。

p.s.帰ってきた次の日にその新潟で強い地震があって、驚いています。まだ余震も続いているようです。被害が大きくならなければいいのですが。


携帯の画像なのでうまく撮れていませんが、先付。左から、鰯の酢〆とねぎのぬた。焼き鱧といかのウニ焼き、サーモンとチーズ。たらこと新生姜、枝豆のゼリー寄せ。

[Jul 17, 2007]