710 神谷バー [Jun 4,2005]

このところずっと放置していた上に、今日約束していた解禁鮎を食べに行く企画も事情によりキャンセルしてしまったので、罪滅ぼしに昨夜は奥さんを浅草神谷バーで接待した。

神谷バーは明治時代から続くという由緒あるバー(といっても非常に大衆的。大衆酒蔵にむしろ近い)で、浅草雷門の交差点近くにある。定番は、生ビールの中ジョッキをチェイサーに飲むデンキブランというこの店特製のリキュールである。

この店の創業当時、「電気」というのはたいへん先進的なイメージであったようで、デンキブランという名前は「電気のように新しくシビレるブランデーベースのカクテル」というような意味でつけられたらしい。製法は秘伝だそうだが、飲むとブランデーというよりも薬草の香りがする。キリッと冷やしたデンキブランは、これも当時ハイカラといわれたであろう洋食系のつまみ(カツとかチーズとかスパゲティとか。もちろん煮込みにも)と非常によく合う。

オーダーの仕方も、また変わっている。昔デパートの食堂によくあった食券をまだ使っていて、半券を客のところに残しておきデリバリーの時に回収するというやり方である。最初は入口の食券売場で買うが、追加オーダーは店の中を巡回しているボーイさん(蝶ネクタイでこの方たちもいなせだ)にそのつど現金を渡してオーダーする。だから、引き上げるときには精算の必要はない。

席はほとんどの場合相席になるが、ここに深刻な話をしに来る人はあまりいないので、問題にならない。むしろ目立つのは、一人で飲みに来ている人、それもお年寄りである。たぶん、定年を過ぎてかなり経つと思われるお年寄りが、帽子をかぶったり上着を着たり、それなり「よそゆきの」格好をして来る。そしてお行儀よく飲んで帰る。仲良く話しているのでグループかと思ったら、みんなひとりで来ているなんてことは珍しくない。自分もあのように、年をとってもきちんとしていたい、と思う。たまに日の高いうちに来ると、外人さんのグループを見ることもある。たぶん、観光名所として紹介されているんだろう。

うちの奥さんも、デンキブランのソーダ割りを飲み、いなせなボーイさんやお年寄りのお客さん、店の雰囲気を味わって、だいぶ機嫌が直ってきたようであった。デンキブランは合同酒精から市販されているので、通販でも入手することができる。飲むときは冷凍室でがんがんに冷やし、さらに冷たいグラスを使うことをお奨めする。デンキブランを置いてあるファミレス風飲み屋もあるのだが、冷やしてないところが多く、それだと旨さが半減するので避けた方がいい。

[Jun 4,2005]