213 本島(ほんじま) [Mar 17, 2010]

なぜか機会というのは続くもので、先日の江田島に次いで瀬戸内海を訪れることになった。いつも瀬戸大橋を通るばかりでは面白くないので、今回は船で四国から本州に渡ってみようというのである。

瀬戸大橋は昔、児島・坂出ルートといっていたくらいで、本州側の児島から四国側の坂出に通じている。このルートは塩飽(しわく)諸島という島々が連なっていて、島の部分は地上に道路や鉄道を引くのと同じだから、建設費の関係から選ばれたものと思われる。

島々が連なっているということは、海路が狭く海流も複雑であることを意味するから、古くから水軍と呼ばれる武装集団が活躍する舞台となった。あるときは海賊となったり、あるときは戦国武将と同盟したりしたのである。こうしたことから、江戸時代も天領(幕府直轄)となり、大名ならぬ人名(にんみょう)により、自治的な支配が認められたのである。

さて、このルートに沿った船便を調べてみると、四国側の丸亀から塩飽諸島の本島(ほんじま)に定期航路があり、ここから本州側の児島に渡ることができるようだ。丸亀にはボートがあるが、ナイターレースであるので見ていたら便がなくなるのが残念である。JRの駅から港までは歩くしかなさそうだ。

細い道を行くので不安だが、まあ海の方に歩けば問題なかろうと思っていたら、7、8分で着いた。鉄筋の立派なビルで、本島だけでなく離島便がいろいろ出ているようだが、あまり利用者がいないのかひと気がない。待合室には自動販売機が置いてあるだけで切符売り場も乗船20分前くらいにならないと開かない。

待合室でしばらく待つ。時間になったので切符を買って乗り込むと、200人以上は乗れそうな立派な船である。ただし、乗客は10人くらいしかいない。大音量でNHKのテレビを放映しているので国会中継が非常にうるさいが、デッキに出るとまだまだ海風は冷たい。仕方なく、船室内に入る。

いよいよ出航。本島まではわずか20分足らずの船旅である。船が大きいので、ほとんど揺れない。丸亀ボートの沖合いを通り、瀬戸大橋を遠目に見ながら瀬戸内海を進む。瀬戸大橋の上から見ると、遠くの島まで見えてすばらしい展望なのだが、海の上からだとそれほど多くの島は見えない。

本島は江戸時代には番所が置かれた塩飽諸島の中心で、丸亀から進むとまず手前の牛島が見えて、牛島を回り込むように進んで本島となる。暖かくて風がなければデッキに出て景色を楽しめるのだけれど、まだ2月。国会のおじさん達のあまり上手くないプレゼンを聞かされるのも辛いものがある。

やがて本島港到着。船から見る限り、あまり建物がない様子である。

 


丸亀から本島に就航している「ほんじま丸」。利用客に比べて船が大きいのは、本島が丸亀市に属するため、非常時の輸送手段を兼ねているためかもしれない。


進行方向を望む。手前に見えるのが牛島、背後に見えるのが本島である。

 

船を下りて待合所に入ってみる。やはり、乗船直前でないと切符売り場は開かない。そして、自動販売機以外に何もない。待合所から出てみたけれど、公衆トイレと公園があるだけで、売店もなければ案内所もないのであった。

同じ船で来た人達はみなさん島民のようで、停めてあった自家用車に乗ってみんな行ってしまった。来る前に見た地図によると、この近くには本島温泉という温泉があるらしいのだが、歩ける距離にそのような建物は見えないし、港の先は山になっていて大きな建物は山の上の方に見える。あそこまで行けば何かあるのかもしれないが、体力的に登り切れる高さではなさそうである。

当初の計画では、安い民宿でもあれば一泊してみるのもいいなと思っていたのだが、案内所も看板もなかったのであった。港を歩いてみても、近くでブルドーザーが工事しているくらいである。考えてみれば、島は島民にとって生活の場なのである。海が見えて景色がよければ観光地と思い込む方があさはかであった。

残念ながら、次の便で児島に向かうことにする。出航15分前に開いた窓口で児島行の切符を買い、乗船場に向かう。今度の船はすごく小さい。おそらく30人乗りくらいであろう。そして、乗ったのは私一人。この日の定期船ムクジマルホープ号は、私の貸切り船になってしまった。

船は小さいのだが、出航すると結構なスピードで飛ばしていく。感覚的には本島までの船より速度は上のようだ。何しろ貸切り状態だから、右左景色のいい方に移動し放題である。そしてこの児島行き定期船の航路は、瀬戸大橋の下を横切っていくという魅力的なコースを取るのである。

橋脚などの構造物が島をおおって見える岩黒島を間近に見て、櫃石島(ひついしじま)橋をくぐって高松側に出る。児島の突端、鷲羽山を大きく巻き、児島競艇場のすぐ沖合いを通る。競艇場内は写真撮影禁止だが、海の上からでは誰も文句を言わない。曇っている上にそろそろ日の入りで暗くなってきてはいるものの、絶景であることは間違いない。

ムクジマルホープ号は、徐々に速度を落として児島観光港に到着。わずか20分であったが、瀬戸内海を大いに堪能することができた。児島観光港から歩いてすぐJR児島駅。何しろ前回は児島競艇場から歩いたぐらいだから、楽ちんに着いて短い海の旅はめでたく終了したのでありました。


本島発児島行、ムクジマルホープ号。この日は私の貸切りとなった。


船は瀬戸大橋の下を横切って児島へ。絶景です。

[Mar 17, 2010]