513 立山黒部アルペンルート [Sep 26, 2012]

この間北陸に出張があった。初日は移動日というやつで、その日の夜までに富山に入ればいい。普通は空路もしくは新幹線と特急で向かうのだが、せっかくだから新幹線で長野まで行って、山を越えて富山に行ってみることにした。いわゆる立山黒部アルペンルートである。交通費は倍以上かかるが、当然自己負担である。

朝の新幹線で長野に着いたのは9時少し前。ここを9時発の特急バスに乗ってアルペンルートの起点である扇沢に向かう。この経路をとれば、あずさで信濃大町に入るより若干早く扇沢に入ることができる。バスに乗ったのは6人。長野からアルペンルート方面はオリンピックの際に道路が整備されたが、それでも2時間弱かかる。

アルペンルートは非常に人気のあるルートで、土日であれば時間待ちが必至といわれる。ところがこの日は平日だったので、観光バスで来ている団体客(個人客とは違って増発されるようだ)が何組かあるのを除けば、時間待ちをするほどの混雑とはなっていなかった。うれしいことである。

特大の車両基地のような扇沢駅で、まず室堂までの乗車券を購入、5700円とかなりお高い。黒部ダムまで後立山連峰(うしろたてやまれんぽう)直下を通るトンネルは、もともとダム建設のために造られたもので、途中、破砕帯と呼ばれる砕けた岩石の層を掘るのには大変な苦労があったとのことである。難工事の要因となった破砕帯から出る地下水は、いまでは扇沢駅の用水として使われている。

このトンネルを通るトロリーバスは15分ほどで黒部ダム駅へ。駅からは二百数十段(ということは標高で100mほど)の階段を登って、ダム展望台へ。展望台から黒部ダムと黒部湖を眼下にする。この時期は観光放水を行っているので、下の写真のように豪快な放水を見ることができる。

次のケーブルカー黒部湖駅までは、ダム上を向こう側に渡るため10分ほど歩く。ダムの向こうもこちらも、景色は素晴らしい。後立山連峰を越えると富山県になり、前方には立山連峰が切り立った岩肌と所々に雪渓を見せている。後方の後立山連峰側にコンクリートが多く見えるのは、こちらが工事の中心だったからだろうか。

立山への中腹には、これからケーブルカー、ロープウェイで登る大観峰の駅が見える。黒部ダムがおよそ海抜1450m、大観峰は2350m、この900mの標高差を、ケーブルカー、ロープウェイ合計10分ほどで登ってしまう。自然破壊とかいろいろ言われるけれど、やっぱり機械文明というものは素晴らしいものなのである。

 


立山黒部アルペンルートの長野側拠点・扇沢。ここからトロリーバスで後立山連峰直下のトンネルをくぐり、黒部ダムに向かいます。


観光放水中の黒部ダム。ここらあたりで海抜1450m。小さく人の見えているダム上の道路を向こう側に歩いて、ケーブルカーでさらに山の上に向かいます。

 

黒部ダムの上を富山寄りに歩いていくと、ケーブルカーの黒部湖駅。気のせいかすごく湿気がある。傾斜はすごい角度で、ぐんぐんと高度を稼いでいく。なお、黒部ダムまでのトンネルはもともとダム建設のために作られたため関西電力の運営だが、黒部湖から先は観光路線なので立山黒部貫光株式会社(観光ではないのがミソ?)が運営している。

ケーブルカーで登った先の黒部平から今度はロープウェイ。大観峰まで支柱なしのロープだけでゴンドラが谷を越える。このロープウェイに乗っている時、工事用資材を運ぶと思われるヘリコプターが山中の鉄塔付近でホバリングしており、吊ってあった荷物を降ろして再び上昇する場面がみられた。一瞬、遭難者かと思ったら資材運搬であった。

ロープウェイの上側、大観峰駅からは、いま登ってきた黒部ダムまでの景色がはるか下に望むことができる。ここは海抜2300m、黒部ダムは1450m。はるか下に見える。また向かい側にそびえている後立山連峰は、黒部ダム真上の赤沢岳が2670m、南に続く針ノ木岳が2820m。ほぼ目の高さである。

以前よりブログに書いているように最近は山登りを始めているところだけれど、あの山々に登るのはまだまだちょっと無理っぽい。それでも景色だけでも楽しめるのは、アルペンルートならではであろう。

下の写真を撮っていたら、「室堂に行かれる方はトロリーバスの発車になりますのでそろそろご準備ください」と構内放送が流れた。親切である。階段を下りてトロリーバスの行列に並ぶ。待っている人のほとんどがリュック持ちの登山靴で、立山から剣岳方面を目指すものと思われた。長野からの観光客は、おそらくここ大観峰までで引き返すのであろう。

室堂へのトロリーバスは全行程がトンネルである。昔は途中に立山への登山道入口となる駅があったそうだが、登山道が崩壊して現在はなくなっている。特に説明もなかったので、このまま閉鎖になるのかもしれない。何ヵ所かでトンネルが枝分れしていたから、その奥が駅だったのかもしれない。

約10分で室堂着。ここは海抜2450m、アルペンルートの最高地点となる。

 


黒部平から大観峰へのロープウェイ。右の建物から、山の中腹へ谷を越えて行きます。支柱は一本もありません。


大観峰駅からこれまで通ってきた後立山連峰を見る。中央やや左が赤沢岳、右の高いのが針ノ木岳。大観峰の標高は約2350m。谷間に見える水面は黒部湖で、約900m下。

 

室堂までのトロリーバスは駅も含めてすべてトンネルの中であり、立山の主峰・雄山の地下を通っている。駅に着くと、なんとなくグラウンドレベルのような気がするのだけれど、地上までは階段を上がっていく。海抜2450mの地下駅というのは、どことなくシュールである。

屋上に登った感覚で、地上に立つ。下の写真の風景が広がる。駅の前に立山の湧き水を引いた立山玉殿の湧水がある。さっそく飲んでみると、とても冷たい。通常、山の上にはほとんど水源はないのだけれど、ここはおいしい水が潤沢にある。わざわざミネラルウォーターを用意しなくてもいいのは素晴らしい。

トロリーバス内でホテルの宣伝をしていたのだが、室堂駅がそのままホテル立山となっている。他にもこの一帯には立山室堂山荘はじめ、登山者・観光客向けの宿泊施設が充実している。ただし、いずれもそれほど安くはないようである。とはいえ、これだけの標高の土地に、ほとんど苦もなく来ることができて、下界とほとんど同様のサービスを受けることができる。

周辺を歩いて気が付くのが、硫黄の強い匂いである。ここから約30分のところにある地獄谷は、火山ガスの影響で現在は立入禁止となっている。すぐ目の前に3000m峰があり、かたや温泉が沸いていて火山ガスも出ているというのも、この地ならではといえるだろう。

ここから先は立山道路をバスで下っていく。このバス、決して安い値段ではないが、路線バスや団体貸切バス以外は入れない道路であるので仕方がない。定員以上は乗せないようなので、必ず座れるのは安心。ただし、この1時間は長い。結構右左にワインディングするため、すごく眠気を誘う道路なのである。

途中に湿原地帯や滝があったようなのだが、ほとんど寝ていたのでしっかり見ることはできなかった。この立山道路で標高を1500mほど下げてケーブル駅の美女平へ、さらにケーブルカーで富山地方鉄道の立山駅、標高475mまで下る。ここから先は富山まで、普通の電車となる。

早く起きたためなのか、3000m近くまで上がったためなのか、この電車の1時間強もかなり長かった。立山駅では観光客と登山客が多かった乗客も、途中駅から通学する高校生がたくさん乗ってきて地方都市によくある風景になる。富山に着くともうあたりは暗かった。さすがに、平日にアルペンルートを突っ切るのはなかなか厳しいのでありました。


アルペンルートの最高地点である室堂。正面は立山。


富山側のケーブルカー美女平駅。ここを下ると立山地方鉄道・立山駅。

[Sep 26, 2012]