913 夕張市の思い出 [Jul 6, 2006]

道央の旧産炭地、夕張市が財政再建団体を申請した。民間企業であれば倒産ということである。この夕張、もう十年以上も前のことだが何回か行ったことがある。

街一番のテーマパークは「石炭の歴史村」である。昔の坑道をそのままアトラクションにした石炭博物館は一見の価値があるが、当時からひと気はほとんどなく、遊園地や遊戯施設が何のためにあるのか意味不明だった。とにかく広くて、駐車場もかなりの台数を収容できるものの、実際には入場門に近い付近に止まっているだけで、あとはがらがらだったことを覚えている。

いまでは財政悪化の一つの要因としてあげられている「ホテルシューパロ」に泊まった。バブル期の計画らしく街並みと不似合いに豪華で、食事は付属のレストランだったと思う。しかし部屋の窓から見えるのは昔の炭鉱時代に建てられたと思われる古びた家々であり、しかもホテルの方が低い土地にあるものだから、なんとなく外を見るのがはばかられるような雰囲気だった。

この夕張市内は映画「幸福の黄色いハンカチ」のロケ地があり、当時のセットがそのまま保存されていた。「幸福の・・」といっても今のひとはあまり知らないかもしれないが、高倉健、武田鉄矢、桃井かおりの出演で当時かなりヒットした作品である。知る人ぞ知るなのだが、この作品はもともと、Dawnというグループの”Tie a Yellow Ribbon round the Old Oak Tree”(70年か71年だったと思う。これも元は映画か小説らしい)という曲のモチーフをそのまま持ってきた映画なのである。

刑務所帰りの男が昔の恋人に、もし俺が戻って来るまで待っていてくれたなら、古い樫の木に黄色いリボンを結んでおいてくれ。もしそれがなかったら、俺はそのまま立ち去るから、という歌なのだが、それをそのまま映画のストーリーにしている。監督は「寅さん」の山田洋次。武田鉄矢も桃井かおりも若いし、だいいち乗っている車が相当古臭いのだが、それを今日まで観光名所にしているというあたりなかなかのものと言えなくもない。

当時はテーマパーク全盛期で、旧産炭地ではここの他にも芦別の「カナディアンワールド」(赤毛のアンをモチーフにしたテーマパーク。すでに倒産)など、脱炭鉱の街づくりが試みられたが、結局それらのほとんどは頓挫してしまった。そもそも北海道は広くて人が少ないし、景気後退で集客ができない上に人件費は高い(本州とそれほど差がない)と来ているから、よく考えればうまく行かないのは当たり前である。

ではなぜそんな計画が立てられ、それがすんなりみんなに認められておカネの工面がついてしまったのだろうか。それはおそらくバブル期に特有の妙な前向き志向のせいだったのではないかと思う。当時は、例えば今後3年間とか5年間の売上の見込みを立てるという場合に、前年比10%増とか20%増で5年間売上が増え続けるなどというとんでもない計画を立てていたのである。

当時私も若かったから、仕事上では比較的穏当な計画を立てるようにしていたのだが、そうした際に諸先輩(いわゆる団塊の世代の人たちである)に、「前向きでない」「予想ではなく、達成しようという意気込みを示すのが計画だ」などと散々批判を浴びたものである。ちょっと落ち着いて考えれば、毎年20%も売上が伸びた日には5年もかからずに倍になる。そんな前提条件で設備投資をしたら大変なことになるに決まっているのだが。

そんな妙な人たちと私とどちらに先見性があったのかは、その後数年もしないで明らかになったのだが、だからといってどちらが社会的に恵まれているかというと、おそらくそういう人たちだったりする。夕張市も同じで、きっと見通しを誤った人たちはさんざんいい目をみてすでに現役を引退して、これからも恵まれた年金で食いっぱぐれはないのだろう。でも、先見性が全くないのにいい暮らしをするより、自分に自信を持って生きていたいと負け惜しみだろうけれども思う。

ちなみに、夕張市の税金食いつぶし施設の一つに「メロン城」というのがあるのだが、これは池田町(帯広郊外)の「ワイン城」と違って、全く集客できなかった施設である。この二つは名前だけ聞くとちょっと区別がつきにくかったりする。


そんなこともあって、夕張市へはふるさと納税で協力していました。夕張メロンもいただけるし。

[Jul 6,2006]