920 上野ファーム [Jul 20, 2014]

北海道に来るのは、これで何回目になるのだろうか。仕事でも20回は来ているし、プライベートでも30回近く来ているはずだ。合わせて50回、18歳で初めて青函連絡船に乗って以来、40年の3/4近くは夏に北海道に来ていることになる。考えてみれば大変な回数である。

若い頃は友達と来たり友達を訪ねてきたりした。学生時代から社会人始めにかけて、当時は競馬の北海道シリーズを現地で観戦するのが楽しみで、札幌か函館に腰をすえることが多かった。北大に進んだ友人がいたので、その下宿にお邪魔したり友達の友達とマージャンしたりしたこともある。結婚したのと大阪に転勤になったのでしばらく足が遠のいた。

次のピークは子供が幼稚園くらいから小学校高学年にかけて、自宅からドライブで北海道を回った時期である。北海道は広いので、年ごとに道北、道央、道東、道南と分けて走った。.奥さんがまだ免許を持ってなくて、一人で運転した。体力があったものである。子供が大きくなって部活とかでスケジュールが合わなくなって、またしばらく足が遠のいた。

第三のピークは現在に至っているが、子供が独立して奥さんと二人、老夫婦のコンパクトな旅行である。若い頃のような体力がないので、もっぱら飛行機移動で、必要に応じ現地でレンタカーを手配する。広範囲を回るよりも、重点地区を定めて行っている。昨年は札幌から留萌、一昨年は釧路から根室、その前は帯広。これだけ行ってもまだまだ行ってないところがある。

それだけ北海道が広いということであるけれど、それだけではない。以前に行った時あったものがなくなったり、なかったものができたりするのである。今回訪れた上野ファームも、農園としては1906年開設で非常に古いが、フラワーガーデンを始めたのは1989年、注目を集めたのは今世紀に入ってからである。

もともと旭川といえば、道外から来る観光客にとっては見どころは少なく、層雲峡への中継点といった趣きであった。市内にホテルも少なくて、前に来た時は民宿のようなところに泊まったものである。当時、定番の観光地であった「川村カ子トアイヌ記念館」とか「旭川兵村記念館」を回ったものの、開拓初期のご苦労は察するけれどもそれほど目新しい展示もなかった。

それがいまや、旭川といえば旭山動物園と上野ファームである。ともに、20世紀には現在の形としてはなかったスポットである。今は昔というか、時代の流れを感じずにはいられない。それとともに、観光客も増えた。ホテルには、中国語・韓国語の表示が満載で、朝食会場も日本語以外の話者の方が多い。ホテル数自体も今世紀に入って大幅に増えている。

近年ガーデニングが注目を集めたのは、NHKで「ターシャの庭」を放送した頃からである。家の奥さんも、庭の芝生をはがしコニファーも伐って、イングリッシュガーデンをめざして苦闘していた。ターシャが90歳過ぎて亡くなると、今度は京都大原からベネシアさんが登場した。そして、この分野における日本人のトップが、上野ファームの上野砂由紀さんなのであった。

新千歳から、道央道をひた走って旭川へ。初めて北海道に車で来た時、道央道は旭川鷹栖から室蘭までだったのに、洞爺湖まで伸び、長万部まで伸び、現在では函館の目の前、大沼公園まで伸びている。あまり大きな声では言えないが、あのあたりは下を通っても高速並みに速いので、どれだけ需要があるのかはちょっと首をひねるところではある。

高速を下りて旭川ラーメン村でお昼にする。平日昼間だというのに、外国人観光客が満員である。そこから田園地帯をしばらく進む。彼方に望むのは大雪山である。

 


裏手にある射的山(しゃてきやま)からみた上野ファーム全景。


ちょうど園内の花々が見ごろを迎えています。

 

上野ファームは市内からちょっと離れた田園地帯の、射的山(しゃてきやま)という小高い丘の麓にある。旭川はもともと屯田兵が開拓した土地で、「兵村記念館」という博物館があるくらいである(開拓当時の建物や道具が展示されている)。射的山という名前も、屯田兵が射撃練習場に使ったところからきている。

この射的山に登ると、北方向は広大な上川平野、南西には大雪山系の山々を望むことができる。麓には白樺とカラマツの大木に守られた、上野ファームの全景が広がる。周囲は水田や牧草地が広がる、何ともいえない広大な景色である。旭川は北海道のほぼ中心であるので、まさにそういう雰囲気である。

もともと観光地として意図されたものではなく、上野さん個人の農場から始まったので、規模はそれほど大きくない。手入れもご家族やご近所の人達で行われているようである。この日も、TVに出てくる上野さんのおかあさんが熱心に草取りをされていた。着いたのが12時前だったので、幸いにそれほど混んでいない。ゆっくり見れるので、奥さんは大感激である。

イングリッシュガーデンの花の多くは宿根草(しゅっこんそう)と呼ばれるもので、冬になると枯れてしまうけれど根はちゃんと生きていて、翌年になるとまた名が咲く多年草である。うまく育つと根が広がって、初めは一株なのにすごく広い範囲に花を咲かせることもある。本家イギリスの緯度は日本よりかなり高い(北にある)ので、北海道以外では育ちにくい花々も含まれている。

こちら上野ファームでは、ロングボーダー、サークルボーダー、ミラーボーダーなどと名付けられた花壇に、色とりどりの宿根草が咲いているのであった。7月というと北海道はいちばんいい季節で、白、赤、紫などいろいろな色の花がみごとでした。(奥さんだと花の種類とかくわしいのですが、私はバラくらいしか分かりません。不案内ですみません)

宿根草の花期はそれほど長くなく、せいぜい数週間といったところだろう。だから、8月になってしまうといま盛りの花はほとんどが終わってしまう。もちろん、8月に咲く花もあるのだけれど、7月の花が最も鮮やかでかわいらしい花が多いように思う。

ガーデン内を見渡せる位置に椅子が空いていたので、奥さんは園内を歩き回り、私は座ってまったりすることにする。花もいいけれど、数十mの高さに育った白樺が圧巻である。白樺のてっぺんの葉が風にそよぐのを見ていると、何ともいいようのない心持ちである。生きているってこういうことなんだろうと思ったりする。

しばらくそこでまったりしていると、観光バスが止まる音が聞こえてきた。 「1時間後にこちらでお待ちします。」「園内にはトイレはありませんので、入口にあるトイレを使ってください。」などと声が聞こえる。それも何台もである。お昼が終わって、ツアー客が大挙して押し寄せてきたのであった。

何十人も入ってきた団体の多くは、われわれ同様に老夫婦である。基本、奥さんが熱心なのはうちと同様で、亭主はカメラを持って付いていくように見える。途端にざわざわし始めたのは残念だったけれど、それでも2時間近くのんびりできたのはよかった。入場料は500円、年間パスで700円だそうだ。これだけ有名になって基本的に家族経営というのはすばらしいと思う。


上野ファーム見どころの一つ、ミラーボーダー。通路の左右で同じ植物が植えられている。後方は白樺林。


上野ファームのエントランス。かわいい建物でいろいろな園芸小物を販売している。後方が射的山。

[Jul 20, 2014]