922 風のガーデン [Jul 30, 2014]

旭川で上野ファームを見た後は、富良野に移動して風のガーデンである。

それにしても、このあたりで倉本聰の存在感は絶大である。20年前にここを訪れた際には当然のように麓郷(ろくごう)に行って、黒板五郎の木の家や石の家を見に行った。あれから20年経って、今度は風のガーデンである。倉本聰は作品と土地が一体化している。おそらく今後数十年、富良野は倉本作品で売っていくに違いない。

ご存じの方も多いと思われるが、風のガーデンは新富良野プリンスホテルの敷地内にある。プリンス系はどこもそうだが、近くに山があればスキーリゾートを作る。スキーリゾートの弱点として、雪がなくなると売り物がない。そこにガーデニングの施設を作るというのは、たいへん理に適っている。雪がなければガーデニング、雪が降ったらスキーで集客するということである。

日程的には、上野ファームでたいへん気持ちのよい昼下りを過ごした後だったので、大層期待して富良野に行ったのだけれど、結論から言うとやや期待外れであった。なぜかというと、 いかにも商売でやっているという雰囲気がありありと見えたからである。

新富良野プリンスホテルの1階から外へ出て、ゴルフ場脇を進むと風のガーデン受付と書かれた小屋があり、そこから送迎バスが出ている。バスはゴルフ場のカート道を進み、5分ほどで風のガーデン入り口に着く。立地的に、もともとゴルフ場遊休地に作ったものなのだろう。そしてすぐ目に着くのが、ゴルフボール型の灰皿。ゴルフ場によくあるやつだ。

施設内では平原綾香の「カンパニュラ」が繰り返し流れている。いわずと知れた、風のガーデンの主題歌である。ショパンのこの曲はいい曲だと思うけれど、こう大っぴらにやられるとかえって興ざめする。ドラマはドラマ、イングリッシュガーデンはイングリッシュガーデンで楽しみたいという人がいるとは思わないのだろうか。

私は基本的にテレビドラマは見ないので、風のガーデンは緒方拳の遺作というくらいの知識しかない。もっとも、新富良野プリンスのロビーではエンドレスでドラマのDVDが流れているので、ファンにはたまらないだろう。ただ、個人的にいうと、残念ながら黒板五郎ほどには感情移入できないところは悲しいところである。

「北の国から」があれだけの人気を得た理由として、確かに北海道の雄大な自然という要素は間違いなくある。倉本聰の先見性も認めるにやぶさかでない。しかし、私はそれだけではないと思う。高度成長期からバブル時代にかけ「カネがすべて」という価値観が広がる中で、そうじゃないというアンチテーゼが多くの人の心の底にあったのがおそらく大きな理由である。

「北の国から」の最も印象的な場面の一つが、黒板五郎がかぼちゃを持ってお詫びに行くところである。(奥さんによると、新富良野プリンスの「北の国から関連商品店」にその場面の写真が貼ってあったそうだ)そこで菅原文太に、「誠意って、何かね?」と言われるのだが、おそらくそこで意図されていたのは、そういうことではないかと思う。

くどくなったけれど、もともと「カネ万能」テーゼの対立軸として作られた(と私は思っている)倉本作品が、西武とタイアップして、商業施設を作ってしまったというのは、皮肉なことである。もちろん、倉本聰も富良野活性化を図りたいだろうが、文化でそれを行うのと、商売で行うのは、天と地ほどの違いがあると思うのだが、私の頭が固いのだろうか。

確かに、旭川上野ファームよりずっと広いし、花の種類も多い。相当に手間もかけていることは分かるのだが、庭を作って見てもらおうという気持ちと、これでカネ儲けしようというのと、やっていることに違いはないように見えて、実は違う。もちろん、花には罪がないし、家の奥さんも何本か宿根草の苗を買ってきた。暑い本州でも根付いてくれるといいのだけれど。


風のガーデンは新富良野プリンスのゴルフ場に併設され、規模は上野ファームよりかなり大きいです。惜しむらくは、商業ベース強すぎ。


足下はウッドチップで、手入れにもかなり力を入れています。

[Jul 30, 2014]