210 媽閣廟 [Mar 24, 2006]

マカオ旧市街から内港(半島の西側)に沿って南下したところに、媽閣廟(マコウミュウ)がある。英語で言うと、A-Ma Templeである。ここがマカオの名の由来となったと伝えられる、海の神様を祀った古い寺院である。

大航海時代、ローマ教皇の裁定により、スペインはヨーロッパから西に向けて、ポルトガルは東に向けて世界進出を図った。その結果スペインは、アメリカ大陸を発見したり、インカ帝国を滅ぼしたりした訳であるが、ポルトガルは喜望峰を回ってインド、そこからインドシナ半島を経て、中国の入り口である広州に入った。その際、中継貿易港としたのがマカオである。だから、日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルの教会がマカオにはあるし、鉄砲が日本に伝わったのもマカオ経由である。

港であるから、そこには必ず航海の安全を祈ったり、無事に上陸できたことを感謝する神様が存在し、信仰を集めることとなる。中国の場合、それが媽祖、A-Maであり、これを祀ったものが媽祖廟あるいは媽閣廟と呼ばれる。だから媽祖廟は香港にもある(中国本土はあまりよく知らないが、共産化されてしまうと本来はこわされたはず)し、最近横浜にもできたそうである。マカオの媽閣廟はその中でもかなり古い部類に入るものと思われる(香港が栄えたのはイギリスがスペイン無敵艦隊を破って世界制覇してから)。

今回の遠征では、初めてこの媽閣廟に行った。半島でもう一つ有名な寺院である観音堂が、比較的静かで落ち着いた雰囲気であるのに対し、媽閣廟はにぎやかである。観光バスが何台も止まり、参拝者は一束十元(140円)の線香を買うと、それに火をつけて廟内をめぐる。廟は階段を上に上がったコースになっており、お堂があったり大岩に字や絵が書いてあったりする。参拝する人たちは線香を何本かずつ、要所要所に置いて行くのであった。

そこで驚いたのは、そのしまりのなさ、である。日本であれば、お寺や神社の境内にゴミを捨てていく参拝者などまず見られないが、こちらでは拝んでいるそばから、その線香の袋やらゴミやらをそこらに捨てていくのである。だから、一生懸命拝んでいる人の足元を見るとゴミだらけである。そして当然のようにそこかしこに物乞いの人がいて、プラスチックのコップをかたかたいわせている。なんとも雑然とした雰囲気であった。

これらの寺院は総称して「道教寺院」と呼ばれるが、老子や荘子の思想と、関羽や媽祖がどうつながるのかよく分からないし、ここを参拝する人達が「道」の理念に基づいて行動しているとも思えない。結局、中国の人達というのは現世利益、不老長寿を祈っているのだなあ、とゴミだらけの雑然とした廟内を見て思ったのでした。

だから、マカオに行って厳かな雰囲気を味わいたいと思ったら、観音堂の方に行くべきだろう。観音堂は半島のかなり北、むしろ関門に近いあたりにある。

[Mar 24, 2006]