510 青池保子「エロイカより愛をこめて」 [Jun 1,2006]

1977年より月刊プリンセスで連載開始。小学館、講談社、集英社に対して後発の秋田書店が少年チャンピオンの売上を一気に伸ばしたのは「ガキデカ」であるが、少女誌においてはなかなかヒット作品が出なかった。そしてようやくプリンセスをメジャーにしたのが青池保子の一連の作品である。

この「エロイカ」は「イブの息子たち」(美青年キャラ続出のHOMOマンガである)に続くプリンセスでの連載で、「イブ」当時作者は「セブンティーン」でも連載を持っていた。それが「七つの海七つの空」である。

そして、「エロイカ」は連載開始当初は「イブ」の路線を引き継いだコメディーだったのだが、いつの間にか「七つの海」の硬派路線となり主人公すら変わってしまったのである。このシリーズの最新作は2004年というからすでに連載開始から30年近くになる。

エロイカとは英国貴族でありながら盗賊も兼ねているドリアン・レッド・グローリア伯爵(ちなみにゲイ)のことで、有能なボーナム君やドケチ経理士ジェイムス君を引き連れて厳重な警備を破り美術品を手に入れていく、というのが連載当初のコンセプトだった。

ところが途中から出てきた「鉄のクラウス」ことNATOの情報将校クラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ少佐がキャラ的に完全にエロイカを上回ってしまい、それ以降は彼が部下A(アー)からZ(ツェット)までを酷使して世界のスパイと渡り合うというストーリーになってしまった。

その間、東西ドイツは統一され、ソ連はCISとなりさらに社会主義体制は崩壊したのだが、仔熊のミーシャ(ロシア)をはじめとするライバル達は健在である。

エロイカは「七つの海」のレッド(英国の海賊でスペイン無敵艦隊を破るのに貢献)の子孫で、鉄のクラウスは同じくティリアン(英国海軍から軍艦ごとスペインに亡命して無敵艦隊に合流)の子孫ということになっている。

ラテンの血を引くティリアンが、どうやって400年くらいでばりばりゲルマン民族(ドイツ)の鉄のクラウスの先祖になれるのかは疑問だが、まあそういうことになっている。実は「七つの海」もレッドが主人公だったのだが、どうみてもティリアンの方がキャラが立っていて、実際続編ではティリアンが主人公となっている。彼女の作品には同じような傾向があるようで面白い。

部下Z(ツェット)は後に集英社にも登場する(LaLaだったかなあ?)など出版社の枠を超えての人気シリーズである。スパイだからその位は簡単なのかもしれないが、部下も含めて英国のエロイカ達とドイツの鉄のクラウス達が円滑に会話できてしまうのはちょっと不思議。


クラウス・ハインツ・フォンデム・エーベルバッハ少佐。いまだに言える。先祖がスペイン無敵艦隊司令官、親父がナチス戦車隊のドイツ貴族。

[Jun 1,2006]