513 亜月裕「伊賀野カバ丸」 [Apr 23, 2008]

昭和54年から別冊マーガレット(通称「別マ」)連載。別マは集英社系の月刊誌というジャンルでは「りぼん」と重なるが、マーガレットと別マは作者の交流がよくあるのに対し、りぼんとはあまりなかった。また、りぼんは付録があるので値段がちょっと高かった。亜月裕もマーガレットで描いたり別マで描いたりしていたと思う。

伊賀の山中で祖父(じっちゃん)の伊賀野才蔵に育てられたカバ丸は、祖父の死(じつは生きている)により東京で学校を経営している名門の大久保家に引き取られる。理事長である大久保蘭は、初恋の人である才蔵の若い頃に生き写しのカバ丸をかわいがるが、孫の麻衣は野生児のカバ丸が苦手である。

ある日、学園の影の支配者(笑)である目白沈寝を助けた(複雑骨折したのを焼きそばの皿で手当てした)ことから、カバ丸は学園間の紛争に巻き込まれる。何しろ忍者だから、相手の本拠地に忍び込んだり機密文書を盗み見たりするのは本職である。沈寝の腹心である野々草かおるとともに、大活躍をするのだが、というギャグまんがである。

この作品の良さはなんといってもノリの軽いギャグである。たとえば死んだはずのじっちゃんは実は生きていて、カバ丸を東京に出そうと死んだふりをするだけだし、カバ丸を厳しく育てたじっちゃんは実は変装していて、大久保蘭の前に現れるときにはロマンスグレーだったりする。

そして勉強は全然できないカバ丸(授業中は寝ている)なのに、じっちゃんに鍛えられた漢文だけは人並み以上にできたりする。金銭感覚もまったくないカバ丸は、沈寝に協力するかと聞かれて「お前、金あるか」と答える。10万か100万かと覚悟した沈寝にカバ丸が要求したのは「焼きそば10人前」である。

じっちゃん(カバ丸を鍛える方の)にそっくりの焼きそば屋のスーばあさんは、大久保蘭のライバル(と自分では言っている)で、カバ丸を見て、「なるほど才蔵の若い頃にそっくりじゃ。蘭ばばあが半狂乱になって引き取っただけのことはある」などと言ったりする。

この作品は当時実写映画化されて、才蔵が千葉真一、沈寝が真田広之、カバ丸をやったのは千葉真一の弟子、黒崎輝(ひかる)である。ちなみに、大久保蘭が朝丘雪路、麻衣が武田久美子、スーばあさんが野際陽子だから、まあ千葉真一ファミリー作品ということであった。

さらに20年の歳月を経て、作者はカバ丸の息子「こカバ丸」を主人公とする続編「伊賀野こカバ丸」を発表している。原作の登場人物がそれぞれ歳を取って再登場しているので、原作を読んだ人にはかなり面白い作品のはず。


乙女チック路線でなかなか芽が出なかった亜月裕が一気にブレイクした作品。じっちゃんこと伊賀野才蔵もラブリーでした。

[Apr 23, 2008]