561 木原としえ「銀河荘なの!」 [Dec 6, 2005]

「ベルサイユのばら」がマーガレットに連載されていた74~75年頃、結構楽しみにしていたのが木原としえの作品である。彼女の作品は非常に類型化しており、どこの国でどの時代かという違いがあるだけで、ストーリーはほとんど一緒である。ちょっと冴えないおチビちゃんの主人公とその親友の才色兼備キャラがいて、かたや登場する男の子は純朴で天真爛漫なのとクールな2枚目が必ずいて、結局おチビちゃんと天真爛漫が幸せになりました、という悪く言えばワンパターンなのである。

後に彼女自身によりリメイクされ、最も有名な作品となった「摩利と新吾」シリーズでいえば、新吾が”天真爛漫”、摩利が”クールな2枚目”である。そして、”クールな2枚目”の代表として彼女の作品にはフィリップという人物がしばしば登場するが、これはやはり彼女が後にマンガ化したフランスの小説「アンジェリク」の登場人物フィリップをイメージしたものである。ともあれ、現代と違って30年前の日本はまだまだ平和だったから、こうしたストーリーは安心して読むことができるし、かつほのぼのとした気持ちになったものである。

というわけで、当時のマーガレットには「どうしたの?デイジー」、「エメラルドの海賊」、「あーらわが殿!」(これが”摩利と新吾”のオリジナル)、「天までのぼれ」などの作品が次々と連載されたのであるが、その中でどの作品かというと、私は「銀河荘なの!」をあげる。

下宿を追い出された貧乏学生ビクトリア(”チビ”キャラ)は、親友ミス・クイーン(”才色兼備”キャラ)と一緒に、家事手伝いをすれば下宿代タダという銀河荘にやってくるが、そこにヘルメス、イカルス、オルフェウス、ジークフリートの”美男子”4兄弟がいる。しかし彼らは、実は他所の星からやってきた吸血鬼なのでした、という舞台設定である。ヘルメスがどちらかというと”クール2枚目”キャラ(どちらかと、というのはこの作品の終盤にまたもやフィリップが登場するからだ)、ジークフリートが”天真爛漫”キャラである。

ジークフリートは実は人間で、しかも一緒に遊んでいたところをビクトリアと間違われて攫われてきた(ビクトリアはフィリップの娘なのだが、ジークフリートの方が美形なので、こちらがフィリップの娘に違いないと思われたというとんでもない理由で)。兄弟は情が移ってしまったジークフリートを故郷の星に連れて行きたがっているのだが、いろいろあってあきらめて彼だけ地球に残して故郷の星へと去っていく。

そしてラストでは、故郷に戻ったヘルメス(きわめて長命な星なのである)と交信した宇宙船の船長がジークフリートそっくりの彼の子孫で、交信画面(テレビ電話?)を見たヘルメスが「フリー!(ジークフリートの愛称)」と思わず呼びかけると、「何でぼくの名前を知っているのですか?」というところで終わる。当時すでに連載されていた「ポーの一族」(萩尾望都)や「地球(テラ)へ」(竹宮恵子)にもろ影響を受けているのだが、そうした作品とは違い木原ワールドともいうべきほのぼのとした世界が描かれている。

若くないと恥かしくて読めないのかもしれないが、今でもなつかしく思い出される作品群でありました。


この作者は当時非常にお気に入りでして、あしながおじさんをリメイクしたデイジーとか、うるわしのフィリップ大活躍のエメラルドの海賊とかもありましたね。

[Dec 6, 2005]