660 竹宮恵子「風と木の詩(うた)」 [May 11, 2005]

この作品は週刊少女コミックの大河連載で、ほとんど全部リアルタイムで(連載時から)読んだ。当時、朝毎読など全国紙にも取り上げられたほど話題になった作品である。

当時の少女マンガは(男もだが)、せいぜい単行本10巻前後で結末まで行かないといけないというような不文律があって(「ガラスの仮面」はまだ始まったばかり)、この作品も単行本20巻行かないで終わったと思う。そのせいか、部分的に展開が荒っぽいところがある。「意余って言葉たらず」(歌に詠もうという心情があり余っていて、言葉がそれに追いつかない)というのは古今和歌集で選者紀貫之が在原業平を評した言葉だが、この作品にもそれがあてはまるといえそうだ。

舞台は19世紀頃のフランス。ともに複雑な生い立ちをもつ主人公、ジルベールとセルジュは全寮制の学園に暮らしている。大体5分の1くらい読むと結末が予想できるが、その後物語は一転して二人の過去へと遡る。少年愛ありホモセクシュアルありSMあり両刀使いあり不倫あり駆け落ちありとにかく何でもありの物語なのだが、非常に絵がきれいなので上品で洗練された感じに受け取ってしまうところが恐ろしい。

作者はこの時期のマンガ家の中では最高のストーリーテラーで、学園少年愛もののこの作品の他、SFものの「地球(テラ)へ」、歴史ものの「ファラオの墓」、スポーツ&障害ものの「ロンド・カプリチオーソ」など数多くの分野ですぐれた作品を残している。特にこの作品は未だにファンが多く、私のようにいい加減なコメントを書いていると怒られる可能性もある。

また、この作品は現代まで続く「やおい」系コミックのはしりとも言われており、確かにこの作品以前の健全な男女交際マンガ(木原としえとか里中満智子とか一条ゆかりとか)とは一線を画しているし、この連載を読んだ世代くらいから晩婚化、というより未婚化が進んだような気がする。その意味でも記念碑的な作品であるが、全巻通して読むには体力と精神力が必要だ。

ちなみに、正直なところ、私がついていけるのはセルジュの物語(貴族の一人息子であるセルジュの父が、高級娼婦である後のセルジュの母と駆け落ちする)くらいである。


この作品を読むために、週刊少女コミック別名少コミまで買う羽目に陥りました。そういえばジルベールはワインに詳しいんですよね、高校生のくせに。

[May 11, 2005]