810 前川つかさ「大東京ビンボー生活マニュアル」 [Dec 12,2006]

かなり前から、貧乏ファンである。一時期「貧乏神髄」(あの作者は最近は貧乏していないようだ)にはまったし、今でも水曜夜は貧乏自慢の番組「銭形金太郎(略して銭金)」が大好きである。この冬は大根が豊作でかなり安いし味も悪くないので、このところ大根おろし+しらすのせが1日1度は食卓に乗る。あと数年で現実のものとなる(はずの)リタイア後には、ぜひ清貧の生活を送ってみたいと今から楽しみにしている。

その意味で、1990年代前半に週刊モーニングに連載されたこの作品は思い出深いものがある。主人公のコースケは大学卒業後バイト生活を送りながら、下北沢か下高井戸あたり(新宿の高層ビル群が見えて渋谷にも近い)の6畳一間のアパートに暮らしている。一日部屋で本を読んだり図書館に行ったり、1週間寝続けてみたり、カネがなくなると「パンの耳生活」をしてみたりと、とてものんびりした生活を送っている。

マッキーに喧嘩を売った松本零二の大山昇太のポストバブル版ともいえるキャラクターなのであるが、コースケの場合はそれほど肩に力が入っていない。「学生さんですか?」と訊かれて「社会人です」と答えているのだが、定職はないし部屋には何もモノがない。カセットコンロのボンベだけ持っていて本体は隣人に借りる。新宿に行く時も隣人に定期を借りる。自分は「テイク&テイク」、隣人は「ギブ&ギブ」、二人合わせて「ギブ&テイク」なんだそうだ。

そんなコースケにも彼女がいてしょっちゅう遊びに来るし、大家のおばさんにも寺の和尚にも気に入られているし、いとこの大食漢マサボーのほか、司法浪人やら大道芸人やら中華料理の店主やら元ヤクザの不動産屋やらいろんなお友達がいて、全く寂しそうでない。ボストバブルの新しい貧乏の形というか、そもそもこれが貧乏といえるのだろうか、というストーリーである。

「高度成長期の貧乏」大山昇太は最後は夢破れて姿を消すが、「ポストバブルの貧乏」コースケは和尚の弟子がいる四国に旅に出るところで終わる。世代の差というか、日本の経済力の違いというか、そのあたりが現れているようで興味深い。なお、作者の前川つかさはこの連載の後、政治マンガ「票田のトラクター」の作画担当として活躍した。


1990年頃コミックモーニング連載。「クッキングパパ」は当時からずっと続いてますね。

[Dec 12,2006]