863 弓月光「ナオミあ・ら・かると」 [Aug 15, 2006]

「デザイナー」のTVドラマ化でわが世の春を迎えた感のあった一条ゆかりが、カルト宗教「摂理」との関係を指摘されて苦しい立場に陥っているが、その一条ゆかりと同様に第1回りぼん新人賞から人気作家に成長したのが弓月光(ゆづき ひかる)である。なんと、いまだに青年コミック誌で活躍中である。


りぼんでデビューしてからしばらくはあまり面白くない作品が続いたが、ギャグ漫画家として大成したのが昭和50年に連載されたこの作品である。最初に読んだときには、面白さのあまり大げさでなく腹がよじれた。今思うに、本来のジャンルとしては現在の青年コミックなのだが、当時そういうジャンルはなかったので、やむなく少女マンガとなってしまったのであろう。

優等生のお嬢さんである「奈美」と、イケイケ系の不良娘「ナオミ」は二重人格。しかも奈美にはナオミは意識できていないが、ナオミには奈美が意識できている。昼間は学校で優等生をしている奈美が、夜になるとナオミに変身してしまうことをひょんなことから知ってしまった主人公がさまざまなトラブルに巻き込まれて、というストーリーなのだが、全編ドタバタのうちに終ってしまう割りに、密度は相当濃い。

どのくらいドタバタかというと、なにしろ奈美(ナオミ)の結婚を阻止するために、主人公はバキュームカーを操って式場に乗り込んでしまうのだ。そしてバキュームカーに吸われた担任の先生の顔が変わってしまう(鼻と口が出っ張ってしまう)というオチが付いている。すでに絶版なのだが、もう一度読んでもたぶん大笑いしてしまうだろう。

その後作者は週刊マーガレットに移り、脳移植で女の子の体に入れられてしまう男(逆に男の子の体に入れられてしまう女の子)の話(ボクの初体験)や、20年前にドラゴン桜ばりの受験マンガを描いてしまった話(エリート狂走曲)などヒット作品を連発した。これらの作品はおそらく現在では入手困難だしマンガ喫茶でも見たことはないが、今でもかなり面白い作品ではないかと思う。


当時は一条ゆかりは大人気の大御所、弓月光はキワモノ扱いでしたが、2010年代の知名度はこちらが上でしょう。棺を覆いて定まるとはいいますが。

[Aug 15, 2006]