020 岩田健太郎「感染症は実在しない」 [Mar 28,2014]

図書館で題名だけ見てトンデモ本かと思った。市立図書館の司書は面白い人達で、ときどきトンデモ本(何も食べなくても生きられる、とか)をさりげなく置いてあるのだ。しかし手にとってぱらぱらめくってみると、著者は大学病院の先生で内容も穏当である。借りて帰ってじっくり読んだ。

題名こそエキセントリックだけれど、主張していることはオーソドックスである。例えばインフルエンザを例にとると、「インフルエンザの症状が出ている」ことは「実態としてのインフルエンザ」にかかったことを意味しない。インフルエンザ以外の場合でも同様の症状が出る場合があるし、インフルエンザウィルスに感染したからといって症状が出るとは限らない。

世間の認識では、ウィルスへの感染イコール、インフルエンザであるが、そうした事例を勘案すると感染と症状は1対1の関係にない。したがって、感染症という病気が実在すると仮定するのではなく、現在出ている症状はどうやって治療するのがベストかと考えるべきであるという。これはもっともな主張で、どちらかというと常識の範疇である。

著者はここからさらに話を進めて、他の病気、がんであろうが糖尿病だろうが同じことだという。また、インフルエンザに話を戻すと、わざわざ費用と手間暇をかけてインフルエンザウィルスの感染有無を検査する必要があるのかどうか、そして感染して症状が出ているからといって、タミフル等を急いで処方する必要があるのかどうか疑問を呈する。

インフルエンザウィルスに感染したからといって100%症状が現れる訳ではないし、そもそもタミフルを飲んだ効果は治るまで5日かかるところが4日で済む程度とのことである。黙って寝ていた方がよっぽどいいということである。これは私自身も、常々疑問に思っていたことであった。

(ちなみに、がんや生活習慣病も同様のロジックが使えると書かれている。病名は、どちらかというと医者の都合で付けているとまで言っている。)

インフルエンザによる重篤な症状を避けるためには、むしろワクチンをきちんと接種すべきだということである。特に感染リスクの大きい医療従事者や、重篤化の可能性が大きい幼児にはワクチンが有効だということである。これもまた、もっともなことである。

そもそも著者が言うとおり、誰にとっても致死率は100%である。つまり、生きていれば必ずいつかは死ぬ。だから、どのように生きていくか。医療の側面から言うと、どうしてもなりたくないのはどの病気か、どういった症状なのかということが重要であって、これは患者にしか決められない。医者の立ち入るべき場所ではないということである。

手術や投薬などの治療行為において、医師は患者より段違いのアドバンテージと発言力を持っていると思われている。しかし他の専門分野と同様に、たとえ医師とはいえ専門家の一人に過ぎす、リスペクトはするけれども自分のことは自分で決めなくてはならないということである。そのことを再認識しただけでも、読む価値のある本といえるのではなかろうか。

近藤誠先生といいこの先生といい、医者に言われるままの治療に警鐘を鳴らす方はありがたい存在です。

[Mar 28,2014]