024 小野不由美「屍鬼」 [Apr 20, 2006]

最近、日本の作家の作品は得てして過激な方向へ行けば注目を集められる的なところがあり、あまり読書欲が沸かないことが多い。その中でこの作品はなかなか読み応えがある。この作品の内容やあらすじを全く知らないという人にはぜひお奨めしたい作品である。

そういう事情で、内容についてはあえて触れない。まあ単行本の帯「尋常でない、何かが起こっている」くらいでとどめておくこととして、単行本の上巻・下巻のうち上巻の2/3くらいまで読んで、これが「その話」だと分かったとしたら大したものである。その意味で、この作品は先を急がず前半部分をじっくり読むべきである。2日くらいは絶対に楽しめる。

下巻に入ってしまうと、大体あらすじが読めてしまう(そもそも冒頭部分に結末があるのだ)ので、むしろディテールを味わうことになるのだが、物語の中の論理としてもつじつまが合っているかどうかはちょっと首をひねるところがあるものの、けして熱くならない語り口と破綻しない文章力はなかなかのものである。

反面、こういう作品の読み方として、たくさんの登場人物の中で誰かに感情移入して読むという方法があると思うのだが、誰にも感情移入しにくいという弱点がある。作者はある種ノンフィクションのような読み方を期待しているのかもしれないが、ノンフィクションだって感情移入して読む人はいるのだ。

作者の小野不由美は、「なんたら館の殺人」シリーズ綾辻行人の奥さん。綾辻行人は西原のマンガで麻雀が下手だと言われていた。ちなみに、この作品をパロディにした「脂鬼」が収録されている京極夏彦「どすこい安(仮)」もかなり面白い。

[Apr 20, 2006]