061 山形県の民話「かさじぞう」 [Dec 27, 2005]

笠地蔵と書くのが本当かもしれないが、もともと子供向け絵本で読んだ話なので、あえてひらがなで表記してみる。

舞台はずっと昔、雪深いどこかの村はずれの大晦日。貧しいおじいさんとおばあさんが二人で暮らしている。年越しのための餅やいろいろな物を揃えられないほど貧しいので、おばあさんが編んだ笠をおじいさんが町まで売りに行き、そのお金でいろいろ買おうとする。笠は5つ用意して、おじいさんは朝から一生懸命売るのだが、全く売れない。日も暮れて、人通りもなくなり、おじいさんはあきらめてとぼとぼと帰り道に向かう。

帰り道も大雪である。ふとみると、6人のお地蔵さんが頭にも体にもすっぽり雪をかぶって立っている。これを見たおじいさん、「お地蔵さんも、寒そうだねえ。売れ残りの笠で悪いが、これでもあると大分違うだろう」と、お地蔵さんの頭の雪を払って、笠をかぶせてあげる。笠は5つしかないから、最後の一人には、「これしか笠がないんで、悪いがこれでがまんしてください」と自分が頭にかぶっていた手ぬぐいをかぶせて、手を合わせた。

手ぶらで家に帰ったおじいさん、「笠は売れましたか?」とのおばあさんの問いに、「一つも売れなかったんで、帰り道のお地蔵さんにかぶせてやったよ」と答えると、おばあさんは「それはいいことをしましたねぇ」と言って、わずかに残っていた粟をおかゆにして、食べて早くに寝てしまいました、という話である。

なぜか、年の暮れ、正月間近になると、この話を思い出す。餅とかおせちの材料とかそういうものを「正月買い物」(しょうがつかいもん)というらしいのだが、以来わが家では、このフレーズをよく使う。最近は元旦からスーパーが開いているのであまりおせちの必要もなくなってしまったが、以前は「しょうがつかいもん、行く?」とか言って、三が日分の食料とか酒をたくさん買い込んだものである。

ちなみに、この物語の結末では、夜中にどかんどかんという地響きで目をさましたおじいさんおばあさんがそっと戸のかげから覗いてみると、6人の石の地蔵さんが「親切なおじいさんの家はここだぞ」と言いながら、餅やら小判やらをたくさん置いていってくれました、ということになる。いわゆる「善行」ということですね。古今東西にわたって、善行はすばらしい、という教訓でした。

 

[Dec 27, 2005]