064 川上卓也「貧乏神髄」 [Mar 30,2005]

インターネット発信の書籍というと「電車男」とか「実録鬼嫁」などがあげられるが、川上卓也「貧乏神髄」もその主張の明確さやWEBと本とのコラボレーションという意味において、評価に値するものである。

著者の主宰する「全日本貧乏協議会」では、魂の自由は時間の自由によって生まれること、時間の自由を得るためには消費を最小限に抑えること即ち「貧乏に降りて行く」必要があることを主張する。WEBにおいては退職から職安での失業保険の受取り方、家賃を安く抑えるための借家の探し方、食費や公共料金の節約の仕方などを著者の実体験として同時代的に述べていくのに対し、本では現在に至るまでの来し方を振り返ることで、主張が整理され、より明確な形で述べられている。

この本も何十回も読み返した。その影響で、七輪を買ってしまったり冬には干し肉を作ったりしている(けっこううまい)。最近は市販のものに戻ってしまったが一時期「たれ」も手作りした(修業が足りない)。昔から「男おいどん」「大東京ビンボー生活マニュアル」が好きだったから(いずれもマンガである。念のため)、そうした方面への志向性があるのかもしれない。カシノで大損する奴が何を言うかと言われそうだが、普段の生活は質素で、本はほとんど図書館だし会社には弁当持ちで行くから、一日財布を開かないこともしょっちゅうである。年金生活になっても、やっていく自信はある(何の話だ)。

さらに著者に好感が持てるのは、いわゆる「貧乏自慢番組」には出ないことだ。なぜなら、彼は結果的に貧乏を余儀なくされているのではなく、自発的に「貧乏に降りて行った」からである。その代わり、彼の主張を中心に番組を構成したNHKには出た。そこでも、彼は「やらせ」をやってしまったと告白する。ある日の夕飯に、ごはん、さんま、酒を用意するシーンがあるのだが、それらを一度に食べるほどの金はない、というのだ。

残念なのは、このNHK出演あたりを境に、WEBの更新速度がぐっと落ちてしまったことだ。「耐乏Press Japan」は今年何回発行されるのであろうか。


WEBから活字になると勢いをなくしてしまう著者は結構いる。この人も、もしかしてその一人かもしれない。もう少し発信してほしかったが。

[Mar 30,2005]