066 お金の神様邱永漢 [Mar 24,2005]

失業中に読んだ本でもう一人印象に残っているのが、邱永漢である。当時はまだ平成に入ったばかりで、バブルははじけていたのだけれど日経平均で2万円以上は維持しており、まあ、しばらくは仕方がないな、といった程度の景気だったと思う。当時、株の神様といわれたのが是川銀蔵で、お金の神様といわれたのが邱永漢であった。

氏はもともと直木賞を受賞している小説家であるが、読んだのはそうした文学関係ではなくて、お金に関する本である。氏の主張していることは、おカネを貯めたらどんどん事業に出資しなさいということで、当時から香港、中国に注目するなど先見性があったが、やや不動産投資に偏ったものだったから、今から考えると旧パラダイムに属するということになるのだろう。ただ、強く印象に残っているのはそうした本筋の議論ではなく、どちらかというとついでの話である。

それは、月収100万円があれば、余裕ある暮らしを送るには十分である、ということである。100万円というのは税金を差し引いた手取りの金額のことで、だからサラリーマンだと税込み200万円の月収が必要となるが、自営業であれば経費の名目で使える部分もあるので名目100万円よりもっと少なくてすむ。だから自営すべきである、といった意見である。

サラリーマン、自営業の比較はともかく、私が注目したのは月100万円という金額である。「立って半畳、寝て一畳」といわれるように、人間生きていくのにそれほどのものは必要ない。贅沢もしようと思えばいくらでもできる訳ではなく、月100万円使えればそれ以上はほとんど同じである、ということを読んで、目から鱗が落ちた。もちろん、そんな収入がある訳ではないのだが、その何分の1かというレベルであって、何十分の1というレベルではない。何分の1というレベルであれば、実は大して差がないのではないか。

多分その頃からなくなったのは、いい意味でも悪い意味でも上昇志向なのだろう。ちなみに、邱さんはいまでも毎日ホームページを更新している(2012年8月31日連載終了)。

 

[Mar 24,2005]