865 吉田戦車「いじめてくん」 [Mar 30, 2006]

ベガスカップでSaitohさんが優勝したので、吉田戦車を紹介したくなった。だったら「伝染るんです」にしろよと言われそうだし(斉藤さんは「伝染るんです」のキャラクター)、確かにかわうそとか出てきておもしろいのだけれど、私がお奨めするのはむしろ「いじめてくん」の方である。

いじめてくんは爆弾である。もともと「戦え!軍人くん」という作品に出ていたのだが、後になって独立した作品になった。見る人の「いじめごころ」を刺激するよう計算されて作られたいじめてくんは、いじめられると文字通り爆弾となって爆発するのである。爆発すれば粉々に砕けてしまうはずなのだが、なぜかいじめてくんだけは元通りに戻ってしまう。

いじめるといっても、精神的ないじめ(キックボクサーの亡霊はこわい顔を見せていじめた)では爆発しない。肉体的ないじめにしか反応しないのだ。「軍人くん」のシリーズでは同じような爆弾がいろいろあって、それぞれ敵国に侵入させることによりダメージを与えようという目的で作られたものである(例えば少女爆弾とかふんどしくんとか、親切にすると爆発する老人爆弾とか)。続くいじめてくんのシリーズでは、いじめてくんだけの活躍話になっている。

例えば、亀をいじめているいじめっ子に「いじめるのはやめなよ」と言って止めに入ったいじめてくんは、いじめっ子のいじめごころを刺激して、「こいつの方がおもしれーや」といじめられてしまう。そこで爆弾となって爆発し、いじめっ子は粉々になってしまうのだが、それを見ていた亀に「俺のいじめっ子返せよ~」と言われてしまうなどという逆説的な話もある。

この作品が発表された頃にはいじめの問題があって、作者自身ちょっと悩んだと書かれているが、このネーミングは秀逸だし、いじめてくんも好きで爆発している訳ではない。「いじめたり、いじめられたりするのはやめようよ」というメッセージが何となく伝わってくるところが、この作品のいいところではないだろうか。

吉田戦車はご存知のように今でも活躍中で、特に「日刊イトイ新聞」のエハイクは無料で公開されているので、ぜひご覧いただきたいと思う。絵は昔から、ほとんど全く成長しておらず、その意味では古い作品も新しい作品も区別がつかない。


平成に入ってからの本なので表紙だけ。「ぼうづのさとり」かなり好きです。

[Mar 30, 2006]