114 佐野眞一「東電OL殺人事件」 [Jun 12,2012]

先日、いわゆる東電OL事件の再審決定が出て、マイナリ受刑者が釈放された。2000年に出版されたこの本で、すでにマイナリ受刑者を犯人とするには常識的に考えて疑問が多いと指摘されていた。それなのになぜ、裁判では有罪判決が出たのだろうか。

例によって再審決定後のNHK特番で、当時逆転有罪判決を出した東京高裁の裁判官が、「すべての証拠は被告を示していた。・・・だから恐ろしいんです。」とコメントしていたが、おそらくここでNHKの記者は最も重要なコメントを編集して抜いている。ここで裁判官が言いたかったのは、次のようなことであるはずだ。

「裁判官はすべての証拠を評価して判決を下す訳ではない。裁判に提出された証拠を評価して判断するのである。もしここで、検察官が作為をもって被告に不利な証拠のみを提出し、被告弁護人がそれに対して有効に反論できなければ、裁判官は裁判に提出されていない証拠を判断の根拠とはできない。・・・だから恐ろしいんです。」

マイナリ受刑者が、不法滞在以外にも表ざたにできないことをしていたこと、また取調べ段階で嘘の供述をしたり証拠隠しをしたりしたことは、おそらくあるんだろうと思う。それによって、警察の心証が著しく悪かったのもやむを得ない。それでも、警察や検察は正義を行うために存在するとわれわれは思っている。

捜査に協力しなかったことや、表ざたにできないことについては、それぞれの量刑の範囲で罰すればすむことである。それはおそらく、マイナリ氏を強制送還すればすむ話だったはずだ。警察や検察の意趣返しのために結果的に真犯人が捕まっていないことの方が、はるかに公共の福祉に反しているのである。

話は戻って、十数年前に発表されたこの本ではDNA鑑定には触れられていないものの、マイナリ氏のアリバイや被害者の定期券が全く方向違いの場所に捨てられていたことなど、警察が本来答えを出さなくてはならないことについて指摘されている。

確かに、幕張からダッシュで帰れば犯行時刻に渋谷のアパートにいることは可能かもしれないが、その時刻に被害者がアパートにいることをマイナリ氏がどうやって知ったのか、また、何のためにあの日そんな複雑なことをしなければならなかったのか(そうまでして殺さなければならない理由はない)など、素人が考えてもこの捜査には疑問符が多すぎるのである。

ちなみに、この被害者は私と同年代である。また、”OL”ではなくて、当時はしりの女子総合職であった。

 

[Jun 12,2012]