121 ジョナサン・スウィフト「ガリヴァー旅行記」 [Feb 7,2007]

この小説のことを全く知らないという人はまずいないにもかかわらず、全部読んだという人もあまり多くはない作品である。この小説が出典となった言葉はいろいろあって、マーケットシェアの極めて大きい企業のことを指す「ガリバー」は、もちろんこの小説の第一部小人国のガリヴァーから採られている。第二部でガリヴァーは巨人国に行くので、その意味では中小零細企業を示す言葉でもおかしくはないのだが。

第三部でガリヴァーが行く島のひとつが飛ぶ島ラピュタで、アニメ「天空の城ラピュタ」はもちろんここから発想されたものである。そして第四部でガリヴァーは知的な馬の国フウイヌムに漂着するが、ここで馬を悩ます野蛮な人類の呼び名がヤフー、インターネットの巨大検索サイト「Yahoo!」の語源である。(注)

(注)Yet Another Hierarchical Officious Oracleの略だともいわれているが、Yahooに語呂合わせしたっぽい。

英国の船乗りガリヴァーは1699年に南太平洋に向かう航海の途中で暴風雨に遭い難破、九死に一生を得るがたどり着いた先は小人国リリパットだった。やっとの思いでそこから脱出して英国に生還し、1702年に喜望峰から太平洋に進むがここで再び暴風雨に遭って難破、今度は巨人国ブロブディンナグに漂着する。やっとの思いでそこから脱出して英国に生還し、1706年に東アジアに向けて出帆するが今度は海賊に捕まって、・・・・といい加減にしてくれよというほどのワンパターンの展開である。

イメージ的には子供向けの冒険小説のように思えるのだが、実はこの作品は18世紀初頭の英国社会に対する風刺小説であり、そのいわんとするところは大人の読者でないとまず分からないと思われる。第一部では王権や政党政治に対して鋭い指摘がなされており、第二部では貴族社会や貴族趣味、第三部では文明や科学、第四部では知識や教養が主たるテーマとなっている。それら世間的に価値があると思われているものは実は下らないもの、少なくとも相対的なものにすぎないというのが作者の視点のようだ。

そしてこの時期日本は鎖国の状態にあるのだが、第三部でガリヴァーは、ラピュタからバルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリップといった島々を経て、日本(長崎)からオランダ経由で英国に帰ったことになっている。ひっきりなしに沈思黙考して我を忘れてしまうので「たたき役」という召使いを連れている島(ラピュタ)と並列だというのが当時の英国人の日本に対するイメージかと思うとちょっとおもしろい。

ちなみにガリヴァーは「踏絵」をやらされそうになるがなんとか勘弁してもらったと書いてあるが、「踏絵」をさせられるのはもちろん日本人だけであり、これは嘘であろう(それを言ったら全部嘘なのだが)。

全文読むと最後の方はちょっと作者「いっちゃってる」かな?というところもあるのだが、児童文学にとどまる作品では決してないので、ご興味のある方はぜひ読み返していただきたい。因みに、大抵の図書館で子供の本のところに置いてある。

 

[Feb 7,2007]