162 武田邦彦「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」 [Oct 2,2007]

著者は内閣府原子力安全委員会や文部科学省科学審議会の専門委員をしている大学教授だが、こんな本を書いているとそのうちお呼びがかからなくなるのではないかと思われるくらい「官」にとって不都合な本。著者の名前から「田」を取るとかつての名ジョッキーであり武豊の親父にあたる調教師の名前になるのは不思議である。

地球温暖化防止とかリサイクルなんてのは、誰かが言い始めたから仕方なくやっているもので、実際はほとんど社会の役には立っていないということは感覚的に分かるのだけれど、それを専門的な立場から説明した本である。地球温暖化で海水面が何メートルも上がるだとか、ゴミの分別はリサイクルに役立っているとかはみんな嘘っぱちだということがよく分かる。

そして、単にみんなが信じているのが実は嘘だったというだけならば罪は軽いのだが、実際には嘘だと知りつつ自らの名声や権益や商売のために世の多くの人々の善意を「食い物」にしているというのだから、その罪は重い。そのために環境白書が意図的な誤訳をしているというあたりを読んで、やっぱり世の中は間違っているなあ、少なくとも北朝鮮(とかの他所の国)をひどいという資格は日本にはないなあというのが正直な感想である。

地球温暖化についてはいろいろな立場からさらに検討が必要だが(日本ががんばっても地球全体で1%も改善しないからといって、やらない方がましとまではいえない)、リサイクルが大嘘だというのは本当のことである。著者が本書で述べているように、「リサイクルが可能なものは政府が手出ししなくても市場として成り立つし(例.鉄・銅・アルミなどの金属、古紙)、そうでないものは結局資源のムダ使い」なのである。

経済産業省には「リサイクル課」という部署があって、この課があるということは「推進する組織と資金(補助金=税金)があり、ダメでしたというのは面子に関わる」ということだから、日本国としてリサイクルは結局ムダでしたとは口が裂けても言えない。でも、現実にペットボトルを回収してできたペットボトルは存在しないし、仮に存在するとしても最初にペットボトルを作るよりもさらに資源を使うということは間違いないのである。

このことを知っていれば、自分たちが生きていく上において、全く必要でないことについて無駄に心を痛めることをしなくてすむ。仮にご近所にゴミの分別を守らない人がいたとしても気にすることなど本当はないし、マクドナルドで紙ゴミとプラスチックゴミの入れる場所を間違えたって大勢に影響はない(そもそも、客にそこまでやらせるのがおかしい)。本当に考えなければならないことはもっと別にあるはずなのである。

 

[Oct 2,2007]