313 村上春樹「海辺のカフカ」 [Mar 9,2005]

今更ながら、「海辺のカフカ」を読んだ。特に読みたかった訳ではないが、たまたま図書館で上下巻そろっていたので、考えていた本がなかったこともあって借りてみたのである。

村上春樹の作品に一時期はまっていて、「羊をめぐる冒険」は百回以上読み返しているし、「世界の終わりと」やその頃の短編集も好きだ。一方、「ノルウェイの森」は一度読んだだけだし、「ダンスダンスダンス」はぎりぎり許容範囲、「国境の」は許容範囲外、「ねじまき鳥」に至っては黒犬に食わせたいような作品である。だから90年代以降の作品はほとんど読んでいない。

「カフカ」も上巻の真ん中あたりまでは期待した。好きな頃の作品にテイストが近かったし、ナカタさんなんてすごいキャラだったから。ただ途中から(はっきり言うと猫の首を切るあたりから)だんだん許容範囲を外れていって、最後は欲求不満が残った。

例によって、テーマ(らしきもの)はあるのだが、その展開も不十分であるし解答も示されない。「分からないことは考えるだけムダ」とまで言われてしまう。解答がないならないでいいのだが、物語のストーリーとしてみても、非現実的な世界なりの結論(「羊」にはそれがあると思う)が示されないまま、主要登場人物がほとんど死んで終わってしまう。

公立のトレーニングジムや図書館が出てきたり、料理や文学や音楽についての薀蓄が披露されたりするところは、個人的に同じようなことをしているので共感できるのだが、いかんせん方向性が私の求めるところと違ってきているみたいで、残念である。まあ、読者は気に入れば読む、気に入らなければ読まないというだけのことだが。

それにしても、ナカタさんは結局救われなかったなあ。

 

[Mar 9,2005]