310 三十一番五台山 [Oct 18,2016]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

安楽寺からリッチモンドホテルまでは10分ほど。高知市内は何度も来たことがあるので、安楽寺からさらに南に下ると見覚えのある一角に出た。ホテル到着は12時半。、ここまでの8.6kmは10kgのリュックを背負っての歩きだったが、ホテルに荷物を預けて身軽になり、ついでにトイレで顔を洗う。10分ほどで再び出発、五台山に向かった。

遍路地図では五台山に至る道として善楽寺からのルートしか載っていないし、道案内シールも同様なのだが、江戸時代に真念「道指南」が通ったルートは高知城下を経由する。山田橋というところに番所があり、往来手形改めをしければならなかったからである。

今回私のとったルートは旧三十番安楽寺を経由したので、真念の時代と同じルートをとったことになる。「道指南」にも、「町はずれよりつゝみ(堤防)」と書かれているから、海沿いの道を通った方が昔の雰囲気に近いだろう。

問題は、道案内がないということである。善楽寺からだと、まっすぐ南下して路面電車を渡り、牧野植物園の中を通って五台山に登るのだが、安楽寺を経由して五台山となると、山の反対側に回って登る感じになるのでかなり遠回りになる。Google mapで徒歩ルートを検索すると高知市街から国分川を渡る道を指示されたので、ここを行ってみることにした。

国分川を渡る橋が細く書いてあったので歩道があるかどうか心配だったけれど、実際には幹線道路で橋にも歩道はちゃんとあり、五台山への登りは車両一方通行だが一般道路なので歩行者が歩いても問題はない。

このあたりは高知市内の中心部になるため、交通量も多いし信号待ちが頻繁にある。菜園場町(さえんばちょう)のあたりで市電通りを外れて、堤防側に歩いて行く。やがて、行く手に緑色の山が見えてくる。五台山である。見た目そんなに高いという印象はないが、標高差は105mあるらしい。

1時35分、青柳橋を越えて五台山の車両一方通行登り口に着く。信号待ちがあったため、ここまで1時間以上かかってしまった。車道はかなり曲がりくねって登る。傾斜はそれほどのこともない。時折後ろから来る車に抜かれながら15分ほど登ると、駐車場のある広場に出た。ここから高知市内の眺めが開けている。

さて、ここからの道がよく分からない。五台山の頂上はさらに上にあるようで、坂道を登って「展望台・竹林寺↑」と書いてある。ただ、どう考えても竹林寺は山を登って下りる道にあるようだ。車道は頂上を巻いて続いていて、こちらにも「竹林寺山門→」とある。ちょっと考えたが、展望台に寄る理由はあまりないので、引き続き車道を歩くことにした。

この車道がまた遠回りで、なかなか竹林寺に着かない。さらに、ひとしきり進むとまた道は左右に分かれていて、竹林寺と竹林寺山門とに分かれている。ここも山門を選んで右へ。しばらく歩いてようやく竹林寺山門のところに出た。到着は2時5分。登り口から30分かかった。標高差100mにしては、かなり時間がかかる山である。

 


青柳橋を渡っていよいよ五台山へ。このあたり、浦戸湾が入り込んでいる場所で、真念が「右は入り海行きてたるみの渡し」と書いたあたりである。


ひとしきり登って、駐車場の広場から高知市街を望む。


竹林寺へは、さらに山上の道路を進む。

 

五台山竹林寺(ごだいさん・ちくりんじ)。高知市街に位置するこの霊場は、寺号で呼ぶよりも山号の五台山の方が札所にふさわしい。というのは、もともと唐にあった五台山を模して造られた霊場だからで、聖武天皇が五台山に詣でる夢をみて行基に開創させたものという。

真念「道指南」でも、竹林寺の名前はなく単に五台山である。別名がある場合には「東寺又は最御崎寺」のように両方の名前を載せるのが真念のやり方だから、おそらく江戸時代には単に「五台山」と呼ばれていたものと推測される。

現代人からすると五台山という名前には特に印象はないが、唐では三大霊場のひとつとして大変な信仰を集めたといわれる。したがって、同時代の人物である聖武天皇や行基、空海にとってもちろん常識であったろうし、空海より少し後の時代に、最澄の弟子・円仁が「入唐求法巡礼記」でわざわざ訪れているくらいなので、江戸時代の学僧であった真念にとっても特別の存在であったに違いない。

唐の霊場には、それぞれ守り本尊がいらっしゃって、五台山の守り本尊は文殊菩薩である。だから、日本の五台山である三十一番竹林寺のご本尊も普賢菩薩である。ご詠歌にも「なむもんじゅ 三世の佛の母と聞く」と詠われている(文殊菩薩は男だが)。

ただ、中国の竹林寺は円仁が滞在したお寺であるが、入唐求法巡礼行記にも「この寺は五台山に属していない(此寺不属五台)」と書かれているように、五台山の本山である大華厳寺とは別の系統である。なぜ、寺号をつける際に大華厳寺とせずに竹林寺とつけたのか、いろいろ考えると楽しい。

この竹林寺。山門からひとしきり石段を登って庫裏・納経所のあるレベルに着き、さらにもう一回石段を登ってようやく本堂・大師堂のあるレベルに到達する。山の上にあるにしては、かなり広いお寺である。そして、境内はきれいに手入れされていて、参道の左右はみごとな苔が整えられている。参道の他にも庭園があるようだが、拝観料を払わないと入れない。

さて、ここで困ったのが目につくところにトイレがないことである。本堂の近くにも納経所の近くにもない。それほど差し迫ってもいなかったので山門下の駐車場に下りたが、ここにも見当たらない。売店の脇に休憩所があったが、ここでも見当たらない。

そうこうしているうちに、ソフトクリームを売っているお店を見つけたのでゆずソフトを購入。この日はお昼を食べていなかったので、お昼代わりである。すると売り子のお姉さんが「歩き遍路の方ですか?」と聞くのでそうだと答えると、「お接待です」とクッキーをくれた。どちらかの先達の人が差し入れてくれたものだそうだ。

ソフトクリームを手にトイレという訳にもいかないので、そのまま下山口に向かう。案内があまりなくてよく分からなかったので、ここも車道を使うことにする。こちらも結構曲がりくねった道で、下田川まで下りてくるのに30分かかった。ただし、眺めはとてもよかった。

[ 行 程 ] 安楽寺 12:20→ [1.4km]12:35 リッチモンドホテル 12:50 → [5.7km]14:05 五台山 14:30 →

 


竹林寺山門。「五台山」の金色の額がなんともいえない。


竹林寺本堂。本堂と大師堂は一番高い場所にある。


境内を納経所へ向かう。苔がとてもきれいに整えられていました。

[Jun 24,2017]