077 パッキャオ劣化の上敗戦 [Jul 2,2017]

WBO世界ウェルター級タイトルマッチ(2017/7/2、豪ブリスベーン)
Oマニー・パッキャオ(59勝38KO6敗2引分け)1.16倍
ジェフ・ホーン(16勝11KO1敗)7.0倍

ウェルター級の覇権はキース・サーマンなのかそれともエロール・スペンスなのかがファンの関心であって、昔の名前で田舎で試合するパッキャオには「まだやるんですか」というのがまともな反応だろう。まあ、統轄団体が認めるだけMMAのマクレガーと戦うメイウェザーよりましといえなくもない。

思うに、超軽量級(スタートはフライ級だ)から上げてきて、ミゲール・コットやマルガリトと戦った頃がパッキャオのピークであって、ウェルター級に落ち着いてからはいまいち迫力のないマッチメイクが続いている。ボクシングマガジンを立ち読みするとこの一戦も米国での関心は今一つのようだが、それも無理はない。

ジェフ・ホーンはWBO1位だから挑戦資格としては十分なのだが、なにせ世界的に無名である。ウェルター級は最近人材が薄くなってきていて、サーマン、スペンス、スウィフト、ポーターといったチャンピオンクラスを除くと、あまりインパクトのある選手はいない。そして彼らチャンピオンクラスと戦う気は、パッキャオにはなさそうである。

それでも、オーストラリアでの盛り上がりはかなりのもので、東京ドーム級の会場が一杯になるだろうと言われているそうだ。日本の場合、仮にコットvs亀海を武道館でやっても満員にするのは難しいだろうから、やはりパッキャオ人気というのはすごいということになるだろう。

さて、そういう訳で挑戦者に対する情報が極端に乏しい中で予想しなければならないのだが、それでもパッキャオと考えるのは、フレディ・ローチが付いているからである。フレディ・ローチとパッキャオの相性はたいへんによく、階級を上げた当初、それまでの左ストレート主体の攻撃から、右フックに重点を移して大成功したことはいまだに印象に残っている。

そのフレディ・ローチが、アミール・カーンでなくホーンを選んだという点で、現在のパッキャオでも楽勝という読みがあるのだろうと思う。その読みに間違いがなければ、3年前のアルジェリ戦のように何度かダウンを奪ってパッキャオ判定勝ちというのがもっともありうるパターンだろうと思う。

一方、ホーンを強調できる点をあげるならば、昨年ランドール・ベイリー、アリ・フネカと元世界上位クラスを連続してKOしていることである。ベイリーにせよフネカにせよ、一線級から退いて久しく、ロートルを倒しても強調材料にはならないというのが大方の見方だとは思うが、パッキャオだって38歳、彼らとたいして違わないのである。

WBO世界ウェルター級タイトルマッチ(7/2、豪ブリスベーン)
ジェフ・ホーン O 判定(3-0)X マニー・パッキャオ

何日か前に予想していた結果とは違ったものの、パッキャオが劣化していたことに特に驚きはなかった。ちなみに私の採点は116-112ホーン。最初の4ラウンドはESPNと同じ39-37ホーンであった。

もともと、軽量級から上がってきたパッキャオは体格的に上の相手と戦うことがほとんどであり、そのディスアドバンテージをスピードとタイミングで圧倒してここまでの地位を築いてきた。ホーンのような体格で押す戦い方はリッキー・ハットンだってマルガリトだってしたかったけれども、それをさせないだけのスキルがパッキャオにはあったのである。

しかし、今日の試合ではスピードもなく体のキレもなく、かつてこうした相手に有効であった右フックもほとんど出せなかった。9ラウンドにあわやKOというラウンドを作ったのが最後のきらめきであって、最後は再び体で圧倒されて試合を終わった。マルケス4の時はまた復活するだろうと思ったものだが、今回はこれ以上衰えた姿をみせてほしくないと思っている。

新チャンピオン・ホーンは、実力的に位置づけるとジェシー・バルガスとブランドン・リオスの間くらいだろうと思う。だから米国本土で戦えば、リオスには勝てそうだがバルガスには負けるだろう。ショーン・ポーターとかスウィフト・ガルシアには圧倒されるだろうし、ましてサーマンやエロール・スペンスとは格が違う。

そんな相手に勝てなかったパッキャオの敗因は、ジョー小泉の指摘したように「今日のパッキャオは動きがよくない」に集約される。試合前の予想映像でブラッドリーが「パッキャオは本気でやるのかね」みたいなことを言っていたが、本気とか8割の出来とかいう以前に、パッキャオの劣化は予想以上にひどかった。

これは、上院議員の仕事との両立が大変だということ以上に、軽量級スタートの選手が30代後半まで戦うことに無理があるのである。WOWOWのVTRで流していたモラレス戦もハットン戦も約10年前だ。そんなピークを過ぎた選手が、いつまでも世界の一線級で戦えるほどプロボクシングの世界は甘くないはずである。

4団体もあるから38歳のパッキャオもチャンピオンでいられたが、ウェルター級の最強はサーマンかスペンス、彼らに次ぐのがポーターとスウィフトで、もうすぐ下のクラスからクロフォードとかマイキーが上がって来る。もはやパッキャオの時代ではない。かつてのチャベス(・シニア)のように引退記念試合を何十もやるならともかく。

今回の予想で見逃していた要素があるとすれば、フレディ・ローチもかつての彼ではないということだったと思っている。すでに十分な名声や報酬を得ているので、あえて上得意を敵に回すリスクを冒す必要はない。なあなあで相手して適当に調整して、オーストラリアに大名旅行できれば十分だったのではないか。

その意味では、コットに挑戦する亀海のupset可能性が20%ほど上がったような気がする。