320 三十二番禅師峰寺 [Oct 18, 2016]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

五台山から禅師峰寺jまで歩くのに、遍路地図には5.7km1時間30分と書いてあるが、私の足では8.1km2時間かかった。五台山からの下りで車道を通ったのはタイムロスだったとしても、そもそも五台山を下りた下田川から1時間半かかっているのだから、どうやっても1時間半で着くはずがない。

おそらくその大きな理由は、遍路地図に点線で書いてある山麓の道が、高速道路工事中で通れないということである。この高速道路のおかげで、高知市内から空港まではたいへん早く着くことができるようになったのだが、どこがへんろ道なのか全く分からなくなってしまったのには困った。

五台山からの下り車道を下りると、いきなり工事中。しかも信号待ちである。 信号をまっていたら余計に時間がかかるので、川を向こう岸に渡る。すると、トンネルの左右は大規模な工事中で、どこで道がつながっているのかどうか分からない。そこで、川と工事個所との中間くらいに位置する細い道を歩き始めた。

信号がないし、「武市半平太旧宅→」の道標があるから向こう側につながっていることは間違いないのだが、禅師峰寺への道案内や遍路シールがない。ということは、この道は遍路地図の点線の道ではないらしいのである。

そして、20分歩いても30分歩いても、曲がり角が見えてこない。ようやく左右に交差する太い道に出たのは3時35分、五台山の下から40分も歩いた後であった。ここで右に行っていいのか少し迷ったが、遍路地図では山の方に入る道を進むことになっているので、少し登りになっている右に曲がる。しばらくして「禅師峰寺→」の標識があってやっと安心する。

五台山と禅師峰寺の間も、休憩所やトイレがほとんどない道である。五台山でトイレがみつからなかったものだから、ちょっと厳しかった。自動販売機は山ほどある。特にこのあたりで目立ったのは100円ドリンク。見たことのない銘柄のメロンサイダーを売っていた。

登り坂を左右にスイッチバックしながら歩いて行くと、峠になっているあたりで道が二つに分かれる。その分岐の左側の道が、すぐ石土トンネルにつながっている。トンネルを出ると住宅地。かなり大規模である。このあたりになると、ようやく禅師峰寺への道案内が登場する。

やがて大きな池が見えてくる。石土池である。時刻は午後4時。池のほとりに東屋が見えるが、トイレはないようなので先に進む。池を囲む遊歩道も長い。回り込んだ向こう側の山が禅師峰寺だろうか。また登りかとくじけそうになる。それにしても、距離が長い。五台山・禅師峰寺間が1時間半なんてことはないと思いながら歩いていた。

後からGPSのデータを調べてみたところ、下田川を渡ってから石土トンネルまでの距離が3.9km、石土トンネルを出てから禅師峰寺までが2.1kmで、これだけで6.0kmになる。普通に平坦な道を歩いても1時間半かかるのに、実際には下って登って下ってまた登る苦しい道のりである。1時間半で着くはずがない。空はだんだん暗くなってきた。

 


五台山山上から南方向を望む。山沿いは高速道路の工事中で、空港に行くのは便利になったが、遍路地図の道はよく分からなくなった。


東の方向へひたすら歩いて行く。次のトンネルはなかなか現れない。


ようやく石土トンネルを越えて石土池に出る。あの山の上が禅師峰寺かと思ったらため息が出た。

 

もしかしたら、納経時間の午後5時に間に合わないのではないかとさえ思った。石土池を反対側まで回って、さらに古い住宅地に入る。禅師峰寺への最後の登りはまだ見えない。坂をいくつか登って、ようやく禅師峰寺への入り口に着く。

最後の坂を登り切ったのは4時半。なんとか間に合ったという印象であった。取るものも取りあえずお手洗いをお借りし、次に自販機でいろはすを買って一気飲みをする。時間ぎりぎりなので先にご朱印をいただき、その後に本堂・大師堂にお参りする。最後はとどめのように、またもやきつい石段の登りだった。

お手洗いと自販機のある場所が駐車場になっていて、もう午後5時近いのにマイクロバスや自家用車が10台近く止まっている。駐車場の下に、海岸線を走る道路と海が見える。方向からすると東になるので、2日前に通った野市のあたりであろうか。もう日が暮れかけて、暗くなってきた。

八葉山禅師峰寺(はちようざん・ぜんじぶじ)。山号の八葉とは八葉蓮華のことである。真言宗で大変に重視される胎蔵界曼荼羅の中央に配置されているのが、八つの花びらのある蓮の花つまり八葉蓮華である。

「四国遍礼霊場記」の挿絵は、いまの様子と言っても通じるほどよく似ている。坂を登ったところに庫裏(納経所)があり、本堂・大師堂はさらに山の上にありその間にけわしい岩肌が見えるところ、眼下に海や浜、民家を見下ろすところなど、江戸時代と変わらないのではないかと思われるくらいである。

ご本尊は十一面観音。「霊場記」によると、空海が寺を開いたとき、空から梵字の「キャ」が落ちてきた。「キャ」は十一面観音を象徴する文字なので、これを本尊としたという。秘仏である十一面観音像は弘法大師の御作と伝えられる。

思い起こせば、阿波から室戸にかけて、大師伝説が伝えられる札所ばかりであった。ところが、神峯寺は神功皇后、大日寺は欽明天皇、国分寺・五台山は聖武天皇、一ノ宮は神代の神様と、空海以前に創建されたと伝えられる寺社が続き、それにしたがって大師伝説も少なくなっていた。

こちら禅師峰寺の大師伝説は、神峯寺の山麓・唐浜における食わず貝以来であり、五大重氏のいうように、空海の修業した道は室戸・神峯から海岸沿いに禅師峰寺ということだったのかもしれない。

すっかり日が暮れて山を下りる。下り坂の途中で午後5時になった。泊まりがホテルなので時間の制約はないとはいえ、これから渡船のある種崎まで歩くとなると遅くなりそうだなあと心細くなる。そして、実際は考えていたよりさらに遅くなるのだった。

[ 行 程 ] 五台山 14:30 →[4.6km]15:30 新端山橋 15:30 →[3.5km]16:30 禅師峰寺 16:55 →


禅師峰寺へは、石土池をぐるっと回りこんだ向こう側から登る。標高差80mとは思えないくらいきつい。


境内に入ってからもさらに登る。「四国遍礼霊場記」の挿絵によく似た岩である。


夕やみ迫る禅師峰寺本堂。暗くてちょっと手ブレしてしまいました。

[Jul 4, 2017]