062 本仁田山(撤退) [Sep 9, 2017]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

例年通り虫と蜂の多い夏の期間は山歩きはお休みで、9月の声を聞いていよいよ再開の機運が高まってきた。2017年の夏は暑い日が比較的少なくて、8月終盤から30℃を超える日があまりなくなった。加えて朝晩が涼しいので、山に行くにはなかなか良好なコンディションである。唯一気になるのは、ウィークデイが雨模様で土日が好天という天気予報である。

せっかくリタイアしたので人の少ない平日に行ければいいのだが、かといって雨が降る中を歩くのは気が進まない。そして、土日であればJRの休日パスがあるので、都心を往復する値段で奥多摩まで行って帰って来られる。人が多くても安いならがまんしようということで、9月9日の土曜日に行く計画を立てた。

当初の計画は、おくたま1号で奥多摩まで行って、安寺沢集落から本仁田山に登り、コブタカ山、大根山ノ神を通って鳩ノ巣に下りてくる予定であった。ところが、休日パスを使うものだから成田線経由で都心に向かうことになり、そこまではよかったのだが山手線が遅れている。それも、駅に表示があれば神田から回る手もあったのに、表示もないのに遅れているのである。

それだけでなく、後の電車との間隔調整とか言って余計に停車するものだから、結局おくたま1号には間に合わなかった。休日パスを使わなければ普通に北総線で十分に間に合った(朝一番ならおくたま1号より早く着く)のに、節約したばかりにたいそう余計に時間がかかってしまった。結局、奥多摩に入るのが9時過ぎと、予定より30分以上遅れることになった。

さて、そうなるとわざわざ奥多摩から歩くこともない。当初予定とは逆コースにして、鳩ノ巣から本仁田山に登り奥多摩に下りることにすれば、30分の遅れを取り戻せないこともない。大根山ノ神までは5年前に川苔山に登ったルートだし、帰りのおくたま号に乗るには、奥多摩に下りた方が便利である。

と考えて、2つ前の鳩ノ巣で電車を下りた。身支度を整えて9時10分出発。家を出てからおよそ4時間だから、日帰り山行としては限界に近い。もう奥多摩日帰りは無理かなあと思いながら、棚沢集落の急坂を登る。いきなり、息が切れる。後ろにひっくり返りそうな急傾斜である上に、なにしろ山は4ヵ月ぶりなのである。

集落のいちばん上の家あたりで左に登山道が分かれる。ここは5年前に通った記憶がある。かつて峰集落があった時に唯一の生活道路だった道で、峰の小学生もここを通ったはずである。そのためか谷側にはフェンスが張られてあるが、相当に古いものなので錆びているしところどころ破れている。それでも、集落内の急坂よりも登りやすい。

そろそろ上に峠の地形が見える頃になって、前方を行く集団に追いついた。私自身のペースは相当にゆっくりなのだが、それ以上にゆっくりなのだろう。そして、後ろからも何人かのグループが追いついてきた。これはいつものことなので驚かない。さすが週末の奥多摩、人が多いのであった。

こういう時に先行する集団を抜いたりすると、結局バテることになる。それはここ数年の経験で身に染みている。景色を見たり写真を撮ったりして前方集団の最後尾とは一定の距離を保つ。そういう体勢で10分ほど歩くと、大根山ノ神に到着した。麓からは50分、前方集団でペースが落ちた割には、5年前よりも少しだけ早く着くことができた。

 


乗り継ぎ不調で家から4時間かかってようやく鳩ノ巣へ。当初予定の逆コースで本仁田山をめざした。


さすが奥多摩。歩き始めると前後に大人数のグループが出現。こういう場合抜いたりするとオーバーペースとなるので、じっと後ろに付く。もうすぐ大根山ノ神。


大根山ノ神まで50分、5年前より少しだけ早く着いた。ここから峰の廃集落に行きたかったが、目指す方向が草ぼうぼうだったので自重した。

さて、大根山ノ神で小休止の後、最終目的地本仁田山に向けてまずコブタカ山をめざす。実は、時間に余裕があれば峰の廃集落に行こうと思っていたのだが、そもそも30分以上遅れて登り始めた上、峰集落に向かう小道は左右から雑草が丈を伸ばしているので、すぐにあきらめてコブタカ山に向かう。

さて、今回のルートである大根山ノ神からコブタカ山のルート、WEB上の記事をみると1時間ちょっとのルートで何のへんてつもない登りのような印象がある。計画段階でも、奥多摩から登る予定だったから安寺沢からの急登ばかりに頭が行っていて、ここの傾斜はそれほどでもないように思い込んでいた。ところが、登り始めてみると実にたいへんなルートだった。

ひと登りしてしばらくはほとんど平らなトラバース道で安心するけれども、川苔山方面との分岐あたりからどんどん傾斜がきつくなる。はじめは4ヵ月ぶりが影響しているのかと思っていたが、下る時に相当の急傾斜であることが分かった。どうりで、息が上がってたびたび立ち止まらなければならなかった訳である。

川苔山へ向かうルートでは、なだらかな尾根道がしばらく続いたような記憶があるのだが、コブタカ山方面へはずっと登りが続く。1/25000図ではそんなにきつい坂のように思えないのだが、たいへんにきつい。40~50分登ると、左から尾根が合わさってきた。もうコブタカ山か、早いなと思っていたら、尾根はいったん下ってまた登っている。

今回は久しぶりの山なので、さっそくGPSと電子国土データを照合して現在位置を確認する。ところが、緯度経度を確認してみたところ、コブタカ山どころかその半分も来ていない。合わさってきたのは、ただの派生尾根のようだった。その時点の標高は924m、時刻は11時8分。登り始めた鳩ノ巣駅が300mで9時10分だから、そんなにペースが遅い訳ではない。しかし、まだ中間目標の半分も来ていない。

本仁田山の標高は1224m、あと1時間で登れればいいけれど、その時点ですでに相当疲れていた。そして、この日は天気が急速に回復して暑いこともあって、水の消費量がたいへんに多い。この段階ですでに500mlのペットボトルを1本空けてしまい、予備のスポーツドリンク1.5リットルに手をつけている。頂上まで水がもつかどうかも心配だ。

その時は気付かなかったが、下りの時このあたりの木に「杉の尾根 殿上山」の札が付いているのに気が付いた。昨年暮れに、醍醐丸から市道山に向かう尾根で独標734mのピークにあったのと同じフォームの木札である。奥多摩の登山愛好家の人がやっているのだろうか。東京都の行き先標示も親切でいいけれど、こういうパーソナルな(オフィシャルでない)目印もありがたいものである。

気を取り直して出発。殿上山920mピークは尾根上のコブのような小ピークで、わずかに下って再び急傾斜の登りになった。すぐ上がピークのように見えるのだけれど、そこまで登るとさらに先に傾斜が続いているのが奥多摩である。息が続かず、ひと登りするごとに膝に手を突いて息を整える。

11時35分、大根山ノ神から1時間半登ったところでようやくなだらかな尾根にたどり着いた。GPSを確認すると、1011mの独標付近のようだ。コブタカ山まであと標高差200m、当初の目標であった本仁田山へはさらに下って登り返さなければならない。この時点の疲れ具合と水の残り具合から考えてこの先に進むのは困難と判断し、ここで撤退することにした。

わずかに平らになっていて緑の斜面が見渡せるいい景色だったので、ここでお昼にする。ヤマザキのランチパックに自然解凍のパイナップル、残ったスポーツドリンクである。まあ、この山行は最初から秋の予行演習の予定であったから、頂上まで登ることよりも無事に下りることの方が大切である。

まして朝の山手線遅れのおかげで乗り継ぎがうまくいかなかったのだから、途中で撤退するのもやむなしである。12時少し前に下り始める。登りの時はほとんど人に会わなかったのだが、ここからの下りで多くのグループとすれ違った。このコースは比較的遅くに歩き始めても大丈夫なコースのようだ。


大根山ノ神からひと登りした後、ようやく緩やかなトラバース道となる。でも、こういう道はこの日はここだけ。


ほどなく、急坂が登場。登る時も苦しいし、下る時もきつかった。


「杉の尾根殿上山」の標示の後も、凶悪な急坂が続く。休み明けには厳しすぎるルートでした。これで安寺沢から登っていたらどうなっていたか。

そういう訳で、1011独標付近から下山することにした。登る時はあまり気付かなかったが、ここの下りは凶悪なくらいの急傾斜であった。わずか4~5年前にはこういうところでも走るように駆け下りることが(少しくらいは)可能だったのだが、60代に入って最優先課題は膝を痛めないこと、転倒しないことである。ステッキを使って三点確保しつつ慎重に下りる。

1011m独標から殿上山まで下りた標高差100m足らずで、こんなところを登ってきたのかと自分で自分に驚いた。登りもそうだったのだが、下りもペースが全然上がらない。休まない分登りよりも早いのだけれど、それでも大根山ノ神までまるまる1時間かかった。

さて、今回の山行を振り返ると、鳩ノ巣駅300mから1011m独標付近まで、標高差で700m登っている。実はこれは、昨シーズン1度も登っていない標高差なのであった。

もちろん累積標高差では戸倉三山でこのくらいは登っているけれども、大岳山は下りこそまるまる900m下ったが登りは御嶽ケーブルを使っているし、その前の釈迦ヶ岳にせよ天城山にせよ、登山口の標高自体が高いので、それほどの標高差を登った訳ではない。さかのぼると2015年秋、塔ノ岳以来の標高差なのであった。60代に入ってはじめてのことであり、疲れたのは当り前である。

大根山ノ神まで下りてきたら、とてもじゃないけどもう山道は歩きたくなくなった。東京都の地図看板では鳩ノ巣まで30分で下りることになっているけれど、私だったら40~50分は楽にかかってしまうだろう。幸い、すぐ横から車の通る林道が鳩ノ巣まで通っている。たいそう遠回りになる上、歩くと何分かかるか、そもそもどのくらいの距離があるのかも書いていない。

それでも、普通に歩いていれば足下を気にしなくても先に進める。そして、経験上登山道を歩くのと時間的にそう大きくは違わない。という訳で、方向的には鳩ノ巣とはあさっての方向、むしろいま下りてきた殿上山・1011m独標に逆戻りするような方向に走っている林道を歩き始めたのでありました。

ところが、この林道は予想以上の超大回りだった。谷を流れる川岸あたりで方向転換するまで20分、そこからさらに大きく回り込んで標高を下げる。これは鳩ノ巣まで1時間以上かかるかもしないと覚悟した。とはいえ、あとからGPSで確認すると林道の歩きは時速4~5km、登山道の下りは時速1km台なのでスピードが全然違う。

それにしても、この林道はなぜ大根山ノ神まで伸ばしたのだろう。方向転換するあたりからワサビ田や荷物用モノレールの軌道が現れたのでもともとはそうした用途で作られたのだろうが、大根山ノ神まではただ林間を通るだけの道である。それも、がけ崩れ防止のための石垣もあって本格的である。もちろん電柱は立っていない。

人が住んでいれば当然車道は必要になるが、平成初めの整備と書かれていたから、峰に人が住んでいたのはそれより20年以上前の話だ。確かに上の方は造成林で、1011独標のあたりまで整備標が立てられていたが、伐った材木を林道まで下ろすのだって大変である。奥多摩周辺は、いまもところどころで林道を工事しているが、コストに見合った需要があるのだろうか。

谷まで下りてくると、農家の納屋のような小ぶりの建物が目に付くようになる。電柱が現れるのは、水道局の取水場から下である。その取水場の近くで、林道脇から盛大に水が出ていた。ひしゃくが置いてあるので、飲める水であろう。

標高が下がるにしたがって急に暑くなったので、この水場はたいへんありがたかった。顔を洗って、手で冷たい水をすくって飲む。それまでは手持ちの水も残り少なくて、暑くて、いつまで歩くと麓に着くのか分からず落ち込んでいたが、生き返る気持ちがした。気を取り直して歩き始める。結局、鳩ノ巣まで1時間10分かかったのでありました。


この日は、1011m独標付近で撤退。この登りでは珍しく、傾斜がゆるやかな地点でした。


大根山ノ神からは林道を通って下る。ゆっくり歩けるのは何よりでした。鳩ノ巣駅まで1時間10分。


林道途中、水道局取水場のすぐ下あたりに水場が。冷たい水で顔を洗い、喉を潤して生き返りました。

この日の経過
JR鳩ノ巣駅 9:10
10:00 大根山ノ神 10:10
11:05 杉の尾根殿上山 11:10
11:35 1011独標付近 11:55
12:55 大根山ノ神 12:55
14:15 はとのす荘
(GPS測定距離 8.9km)

[Oct 2, 2017]