080 GGG vs カネロ [Sep 16, 2017]

WBA/WBC/IBF世界ミドル級タイトルマッチ(2017/9/16、ラスベガス・Tモバイルアリーナ)
Oゲンナディ・ゴロフキン(37戦全勝33KO) 1.57倍
  カネロ・アルバレス(49勝34KO1敗1引分け) 2.37倍

GGGの試合にしては、意外なほどオッズが接近している。私がハンディキャッパーなら1対3くらい付けるかもしれない。おそらくカネロ陣営も、チャンスありとみているから挑戦したのだろう。私の意見は、GGG乗りである。ゴロフキンにあってカネロ・アルバレスにないもの、それが勇気であり、試合になればそこが違ってくると思うからである。

GGGの試合には隙がある。無造作に接近するからまともに打たれるケースがよくあるし、後半になると追い足が鈍る。ジェイコブス戦も明らかに失ったラウンドがあったし、その前のケル・ブルック戦もスピードにあおられる場面がみられた。

以前はそれがGGGの欠点だと思っていたが、最近見解が変わった。おそらくそれが、GGGの勇気なのである。世界の一線級相手では、相手にもスキルがあるしテクニックもある。そうした相手にパワーパンチを決めるには、自分もリスクを冒さなければならない。相手のパンチの届く距離に踏み込まなければ自分の強打も当たらないし、逆に相手の強打も受けることになる。

自分だけがパンチを当てて、相手の攻撃によるリスクがないなどという試合は、本人は面白いかもしれないが客はあまり面白くない。例えばメイウェザーである。ただしメイウェザーは大部分の試合がマッチメークした時点でそうなると分かっている試合だけれども、何試合かに1試合はリスクを冒す試合をするので、長く無敵を誇ることができた。

GGGが本当の世界一線級と連続して戦うようになったのは2014年頃からである。誰も石田や渕上を世界一線級とは思わないし、カシム・オーマもその時点で下り坂だった。しかしダニエル・ゲール以降の試合はほとんど全員が本物の世界一線級である。その相手に連続KOしてきたのだから、多少の被弾はやむを得ないし、いつかはKOできない日も来る。

その連続KO防衛が途切れたダニエル・ジェイコブス戦をどうみるか。私の意見は、ジェイコブスとは体格差があったし(IBFの当日計量を拒否したことからすると、10ポンド以上は違っていたのだろう)、ディフェンスも巧みだった。ジェイコブス自身、勝つことよりも、連続KOを阻止しようとしたように見えた。

そうしたことからすると、また相手が最大のライバルと世界が認めるカネロとなれば、GGGのモチベーションは間違いなく高い。連続KOが途切れたこともプラスに働くはずで、カネロが打ち合いに応じればKOが期待できるし、逃げ腰になれば12Rプレッシャーをかけ続けることになるだろう。

かたやアルバレス。私が「勇気がない」というのは、あのメイウェザー戦でカウンターを決められて全く踏み込めなくなってしまったことを指している。その後の対戦相手をよくみると、コットやアミール・カーンなど体格的に劣る相手か、ララのように一発を恐れることのない相手とばかり戦っている。チャベスJr戦でミドル級で戦う目処が立ったというが、前に出るだけで手を出さない相手に勝ったからどうだというのだろう。

アルバレスの場合、チャベスJrほどではないがボクシング一家の若きヒーローとして十代の頃から人気があり、さほどリスクのあるマッチメークをしなくても稼ぐことができた。オースティン・トラウト、メイウェザー、エリスランディ・ララくらいがリスクある相手で、そのリスクも勝ち負けのリスクであって倒されるリスクをあまり考える必要がなかった。

ところが、今回はキャリア初めてといっていい倒されるリスクのある相手との戦いである。それでも踏み込んでいく勇気がカネロにあるかどうか。しかも、体格のある相手と戦ったのはチャベスJrだけなのである。GGGとは格が違う。

もちろん、カネロの強打も十分ミドル級で通用するとは思っているが、これまでミドル級の一線級と戦って相当のパンチを受けてきたGGGにいきなり通用するかどうか、私はその点は否定的である。そして、GGGの一発でカネロがいきなり倒れることもないだろうが、GGGの強打を受けてカネロが「マッチョ」でいられるかどうかにも、私は否定的なのである。

統一ミドル級タイトルマッチ(9/16、米ラスベガス)
ゲンナディ・ゴロフキン △ 判定(1-1) △ サウル・アルバレス

私の採点は115-113ゴロフキンだが、引分けどころかカネロ勝ちもあるかと思った。だから118-110の点差には驚いたものの、三者三様ドローの結果には驚かなかった。こういう結果になった第一の要因は、おそらくGGGの衰えである。たびたびCo-Mainを張ってきたロマゴンと同様、GGGもいつまでも全盛期ではありえないのである。

1Rから3Rは私はカネロに付けた。ゴロフキンが例によって無造作に前進するのに対してシャープな左右で対抗し、ゴロフキンの前進は許したもののクリーンヒットは許さなかった。ところが4R以降はロープを背にすることが多くなり、手数でもクリーンヒットでもゴロフキンが上回った。4Rから8Rをカネロに付けたジャッジは何を見ていたのだろう。

ところが9R、カネロがこのままでは押し切られるとみて逆襲に転じた。終盤にきて切れのある連打を受けて、さすがのGGGもたじろぐ。ただしカネロのスタミナも続かず、1R通して攻勢をかけることができない。私は9~10カネロ、11~12ゴロフキンとみたが、全部カネロとみることもできないではなかった。

カネロのよかった点は、「マッチョ」を捨てて勝負にこだわったところだと考えている。中盤でロープを背にディフェンシブな戦い方をしたのは、結果的にみればGGGを疲れさせるという効果があった。1、2度危ないタイミングで強打を受けたが、足に来ることもなく終盤に体力を温存することができた。

かつてのメイウェザー戦から成長したのは、相手のカウンターがこわくて手が出ないという最悪の展開とならず、ロープを背に打たれても必ず打ち終わりを狙っていたことで、そのためGGGもディフェンスに気を使わざるを得なかった。カネロとしても、メイウェザーのように出鼻をカウンターで返されるのはたまらないが、圧力をかけてくるGGGにはある程度対抗する自信があったということである。

そうしたカネロの出来のよさを勘案したとしても、2、3年前のGGGなら倒していたと思うのは、決してひいき目とはいえないだろう。実際、ここでインサイドから打てば倒せるというところで、頭の上を空振りというケースが何回もあった。予想通り「12Rプレスをかけ続ける」ことはできたものの、KOチャンスはほとんどなかったといっていい。

半面、ディフェンスはいつもの試合よりもきちんとできていて、カネロのカウンターもほとんどガード、ウィービング、ダッキングでよけてクリーンヒットはさせなかった。ただ、アミール・カーンなら倒れるであろう右ストレートがあったし、アッパーのクリーンヒットもあった。ただ、まだ体がスーパーウェルターのせいか、GGGをあわてさせるには至らなかった。

試合後のインタビューでカネロへのブーイングが多いように感じられたのは、引分けはないだろうという判定への不服が半分と、「マッチョ」でなかったカネロへの不満が半分あったのだろうと想像している。ただ、ボクシングは相手次第であり、誰が相手でも前に出て打ち合うのが最善とは限らない。今日のように下がったり足を使って戦わなければならないケースもある。

カネロの場合は誰と戦ってもビッグビジネスとなるので、インタビューで言っていたようにすんなり再戦となるとは限らないが、もし再戦となった場合、ロマゴンと同様GGGが倒されるというケースも十分考えられる今日の試合だった。予想としては完敗。

[Sep 17, 2017]