064 リベンジ!!本仁田山 [Nov 26, 2017]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

10月は長いことお遍路歩きに出ていて、その間右足親指の爪を痛めてしまったので、剥がれるまでの間は山歩きを控えていた。ようやく爪の状態が落ち着いたら11月の下旬。今年は長雨の後、急に寒くなって12月下旬とか1月上旬の気温と言っている。

9月に途中棄権して頂上まで行けなかった本仁田山へのリベンジをどうしようか気になっていた。できれば今シーズン中に片づけておきたいが、あまり寒いと奥多摩は雪になる可能性がある。11月最終週の週末に気候が落ち着きそうだったので、再挑戦することとした。

とはいっても、前回リタイアに至った大きな理由は電車の乗り継ぎがうまくいかなかったことである。前回は休日パスを使い切るため成田線で出発して失敗したが、青梅線はこの時期になると架線凍結やら何やらで遅れが付きものである。ちゃんと鳩ノ巣に着かなければ同じことになるので、今回は遅れた場合用にプランBを準備して出発した。

そうやって準備怠りないと、電車は順調に動くものである。懸案の西国分寺乗り換え(1分以内)もうまく行き、8時5分過ぎに鳩ノ巣に到着した。この時点で1時間のアドバンデージがある。身支度をして8時15分に歩き始める。ちょうどこの時間にホリデー快速が通るので、踏切待ちの後で棚沢集落の急坂を登る。

すると、前回歩いた時より明らかに息がはずまない。お遍路歩きではほとんどが舗装道路だったけれど、標高790mの鴇田(ひわだ)峠をはじめいくつかの峠越えもしている。意外なところで山歩きの体力強化にもつながっているようでうれしい。

大根山ノ神への登りも、複数回現れる峠だましの地形も余裕をもって通過し、小休止なしで大根山ノ神まで到着した。所要時間は50分で、9月よりも10分短縮することができた。歩いている間は汗が噴き出してくるが、止まると寒くなるような気候である。10分休んで9時15分リスタート。

ここからコブタカ山の登りは、見た目よりも傾斜が急なのは前回下ってみて分かった。だから、小休止を入れながら慎重に進む。杉の尾根殿上山の前に1度、1011m独標付近で2度目の小休止。それでも、1011m到着時点で1時間15分のアドバンテージがある。全然あせる必要はない。

前回リタイアした1011m地点から始まるなだらかな坂を登って行くと、突然前方が開けて雄大な景色が広がった。左には本仁田山が、右にはこれから登るコブタカ山が姿を見せている。コブタカ山へはかなりの急登で、登る前から疲れるくらいである。

左の本仁田山は、奥多摩方向から見るよりも丸っこい姿をしていて、いったん下ったあたりが平らになっている。あれが大休場(おおやすんば)と思われた。なるほど休むにはよさそうな場所に見えた。


前回9月に到達した1011m独標付近からゆるやかな坂を登って行くと、


ほどなく本日一番の絶景が広がる。本仁田山と平坦な大休場。


林をはさんで右にコブタカ山。見るからに急登で登る前からくじけそうだ。

 

コブタカ山の標高はGPSによると1121m、1011独標から標高差100m登る。わずか100mとはいえ、目の前に立ちはだかる頂上までの急斜面を見るとちょっと大変である。さすがに何度も小休止して息を整えなければならなかった。

頂上は2、3人立つと一杯になってしまうくらい狭いのに、そこで延々と写真を撮っているじいさんがいる。しばらく下から見ていたら、なにやら自撮りのようなこともやっていて、いつまでも引き上げる気配がない。北方向の、川苔山にかけての稜線やその背後は県境尾根だろうか。たいへん景色がいいのは分かるが、こういうところで独り占めされるのは困る。

とはいえ、こういう輩に何を言ってもはじまらないので頂上はあきらめる。コースタイムによると本仁田山までは20分なので、このまま一気に登ってしまおうと思ったのである。

ところが、本仁田山に向かう尾根道を進み、頂上の高さやそこまでの距離を目測すると、私の足ではとてもじゃないが20分では無理である。30分かそれ以上かかるかもしれない。そもそも、コプタカ山からさらに標高差120mあるからそれだけで24分(私の体力は300m1時間である)、プラス距離で合計30分以上というのが経験からはじいた私の所要時間なのである。

そして、この稜線もまたやさしくない。コプタカ山からしばらく大好きな平らな尾根道なのだが、やがて急な登り坂となる。それをクリアすると今度は中腹をトラバースする左右に傾いた道となり、その向こうにまた急傾斜がある。なかなか頂上が見えてこない。

そのうえ、 コブタカ山を過ぎる頃から、なんだか寒い。実は数日前から鼻カゼをひいていたのでそのせいかもしれないし、標高が上がるにつれて盛大に噴き出していた汗が冷えたのかもしれない。とにかく、汗びっしょりで濡れていたはずのタオルが、気がつくとからからに乾いているのだった。

畳んでしまってあったユニクロのウルトラダウンを出して、再び着る。このダウンは行き帰りの電車くらいでしか着ないだろうと思っていたし、これまでの山歩きでもよほどのことがないと山の中では着なかったのに(塔ノ岳で雪がちらついた時とか)、とてもじゃないけどがまんできないくらい寒かったのである。

急傾斜を登り詰めたらそこが頂上かと思ったら、非情にも「本仁田山100m」の案内表示がある。どうやらここは、沢沿いに登る旧登山道との合流点のようだ。ここからはほぼ平坦で安心した。そして急に人が多くなった。どうやら私のように鳩ノ巣から登るよりも、安寺沢林道経由で登る人の方が多いようだ(あんな急傾斜かつ展望のない道を)。

コブタカ山から40分、1011独標から1時間かかって本仁田山頂上に到着。多くの奥多摩の山には東京都の山名標が立っているのだけれど、この山にはそれがない。代わって立つのは「××氏(消されていて読めない)をしのぶ倉戸山の集い」の立てた「本仁田山頂1224.5m」の立札であった。

山頂には十四、五人の人達がお昼を広げている。もともとの山頂はそれほど広くはないと思うのだが、東側の植林が伐採されていてスペースが広がっているのと、ちょうど切り株が椅子のように平らに残されているので、みんなそこに座ったりEPIガスでお湯を沸かしたりしている。

そして、伐採されたせいで見通しがよくなって、都心方向まで眺めが広がっている。この日は麓の気温が比較的高かったため遠くの方は霞んで見えなかったけれど、空気が澄んでいれば、スカイツリーは無理でも新宿あたりまで見えるのかもしれない。

そういういい景色の頂上だったのだけれど、コブタカ山のあたりから続いている寒気がどうにもおさまらない。私もEPIガスは用意してあってお湯を沸かすことはできたのだけれど、そうする気が起きないほど具合が悪い。おまけに下腹が冷えて来て、何か食べて腹具合でもおかしくなったら一大事である。

しばらく切り株に腰かけて回復するのを待つけれども、息は落ち着いたものの寒気がおさまらない。これは早く安全圏に脱出した方がよさそうだと思い、10分ほど休んで腰を上げた。コースタイムによれば1時間で安寺沢林道で、そこまで下りれば大丈夫だろう。

途中に大休場(おおやすんば)という休憩適地もあるようだから、具合がよくなったらそこで休めばいいと思って歩き始めたのだが、この下りがまた凶悪と表現する他ないような急傾斜なのだった。


ようやくコブタカ山の急登をクリアしたが、本仁田山への稜線もやさしくない。


本仁山山頂と三角点。山頂標のこちら側では十数人がお昼を食べているが、私は寒気がして長くはいられませんでした。


頂上東側は植林が伐採されて、眺めが開けている。きっと、空気が澄んでいれば都心方向まで望むことができるでしょう。

 

本仁田山から奥多摩方向への下りはいくつかのコースがあるのだが、谷に沿って下る旧登山道はあまり使われないので荒れているという情報である。そして、比較的傾斜が緩やかに見える白丸方向に下る尾根の入口には、「このルートは橋が落ちているので通れません」と書いてある。したがって、ほとんど一択で安寺沢林道に下るルートを選ばざるを得ない。

ところが、このルートは凶悪と言っていいくらいの急傾斜が麓まで続く。最初から最後までスイッチバックの急坂で、しかも足下は滑りやすい。まだお昼頃だったので大勢の登りの人達とすれ違ったが、すれ違う場所も限られるほど道幅は狭いし、登るのも下りるのも急ぐと危ない急坂である。

私がかつて経験した急傾斜といえば、丹沢・梅の木尾根から下りてくるバリエーションルートがあったが、あそこは1時間で麓に着くことができた。天祖山の取り付きも急傾斜で知られるが、ここは近年整備されて歩きやすくなっている。今回の安寺沢への大休場尾根は、一般ルートではなくバリエーションルートといった方がいいかもしれない。

歩き始めてしばらくして、これはコースタイムの1時間なんてとても無理だと気が付いた。とにかく、ケガをしないように時間を掛けて下るしかない。後ろから追いついてくる人達には、どんどん先に行ってもらった。頂上でゆっくりせずに下りてきてよかったと思った。

お遍路で痛めた右足親指が痛むのに加え、左足も痛んできた。足下が滑って不安定なのでどうしても足に力が入るのと、時折地面に飛び出している石にぶつけて痛むのである。ところが、上であれだけひどかった寒気が標高を下げるとともにおさまってきて、30分ほどすると再び汗が出てきた。汗をかくのはうれしくないが、この場合は体調が戻ってきて安心する。

1時間ほどで傾斜が比較的緩やかになり方向転換する。このあたりが大休場(おおやすんば)という休憩適地で、登りの1011m独標あたりから見ても平らなことが分かる場所なのであるが、なぜかトラロープが貼られていて、「通行禁止 登山道ではありません」と真新しい立て札が立てられている。

トラロープを張るほど立入制限しているということは、きっと危険な箇所があるんだろうと思って入らなかったが、結局のところ休憩できるような場所は麓までここしかなかった。あとは、最初から最後まで崖を下っているようなもので、リュックを下す場所さえない。

トラロープの場所から5分ほど下ると人工物のようなものが見え、さらに下るとそれが民家の屋根のようだったのでたいへん心強い。ところが、苦労してスイッチバックを繰り返し、民家らしきものが目の高さになっても道はそちらには続いていない。さらに数十m下になっても、道は山の中をスイッチバックしながら下っていくのである。

「また、ポツンと一軒家か」と思ったのだが、よく見ると何軒も集まって建っている。登山道からは真下にも見えたし真上にも見えたので、あえて登山者には敷地内を通らせたくなくて道を作らないのだろうか。なんだか意地の悪い話である。

やっとの思いで最後の民家横まで下りてくる頃には川の流れる音が聞こえてきたので、結局谷の一番下まで登山道だったということである。本仁田山頂上から、まるまる2時間かかった。登山口には、「本仁田山頂上まで1時間半」と立て札があった。この立て札を本気にして午後2時過ぎてから登り始めたら、下るときには暗くなっているだろう。

そもそも案内表示や看板、コースタイムの類は、初めてそのコースを歩く人のために作るものであって、何度も歩いて目も慣れている人が歩く時間ではない。賭けてもいいがこのコースを初見で1時間で下りてくる人が半分より多い訳がないし(私の2時間はかかり過ぎだとしても)、1時間半で登るのは相当の体力がある人だろう。さもなければケガのリスクと隣り合わせである。

最後の民家の横に奥多摩町の立てた看板があり、「登山者へ いらなくなったものを民家の敷地内に捨てるのはやめましょう」なんてことが書いてあるので、おそらく住民感情として、登山者など来ない方がいいし、住民の生活道路は通らないでほしいと思っているのかもしれない。

仮にそうだとしても、危険な急勾配の登山道を放置しておいて、大ケガするような人が続出したらその時考えましょうというのはどうなのだろうか。少なくともエスケープルートを作ってくれたら、例え遠回りでも大変助かるのにと思った。

安寺沢林道に出てからは舗装道路で、右足と左足を交互に出していれば目的地に近づくありがたい道である。奥多摩工業の工場群の脇を通り、奥多摩駅周辺まで40分。残念なことに水の出ている場所もなかったが、これまでと違って景色を楽しみながら歩くことができたのはありがたかった。

最後は三河屋旅館の立ち寄り湯に入る。ここのお風呂の窓から黄色や赤の紅葉が色鮮やかで、湯船からゆっくり楽しませていただいたのでした。でも、山の中では下るのに一生懸命で、景色を楽しむゆとりもなかった。安寺沢からの大休場尾根は、中高年には全くおすすめできない山道である。

この日の経過
鳩ノ巣駅 8:15
9:05 大根山ノ神 9:15
10:20 1011m独標付近 10:25
10:55 コブタカ山 11:00
11:35 本仁田山 11:50
14:00 安寺沢林道 14:10
14:45 三河屋旅館
(GPS測定距離 8.5km)

[Dec 18, 2017]


写真ではなかなか伝わりにくいのですが、安寺沢への大休場尾根は凶悪な急傾斜です。


この尾根で唯一の休憩適地、大休場(おおやすんば)にはトラロープが貼られ、通行禁止の立札が。


ずいぶん前から民家の屋根が見えるのに、そこを通り過ぎて延々と急傾斜を下りようやく安寺沢林道へ。ここまでまるまる2時間かかった。さらに奥多摩駅まで40分。