081 2017年末ボクシング 井上・田口・木村翔 [Jan 1, 2018]

今年の年末ボクシング中継については、10月以降あわただしい動きがあった。ジム会長である父親との確執が伝えられた伝説・井岡が休養~王座返上となり、代わってTBSがメインに持ってきたのが12チャンネル所属だった田口。まあ、ワタナベジム自体、亀田の片棒担ぎとの噂も伝えられTBSとの相性は悪くないはずだが、田口がTBS色に染まるのは残念である。

まあ、内藤だってもともとTV局がついていなくて、12チャンネルの時代もあったと記憶しているが、いまではNHKのスポーツ番組にさえ出ているくらいだから、キー局と親しくなることは悪いことではないんだろう。私はスポーツ選手がCMやバラエティ番組に出るのは好きではないが、海の向こうではマニングだってブレイディだってCMに出ているくらいだから。

WBA/IBF 世界ライトフライ級タイトルマッチ(12/31 大田区総合体育館)
O田口 良一(ワタナベ、26勝12KO2敗2引分け)
ミラン・メリンド(フィリピン、37勝13KO2敗)

もともとTBSは田中恒生と田口の統一戦を中継したかったはずだが、田中がまずい試合をした上に眼下底骨折で長期休養に入ってしまった。代わりに白羽の矢が立ったのは八重樫を1RKOしたメリンド。はっきり言って田中よりよっぽど強敵で、TBSも亀田や井岡にこういうマッチメイクをしていればよかったのに。

ただし、田口にとってみれば井上とフルラウンドやっており、それ以上の強敵というのはいないので、メリンドも恐れるに足らないのかもしれない。ただし、田口は見た目ほど積極的で派手なボクシングをする訳ではないので、個人的にはTBSのメインイベントという点に不安を持っている。

というのは、おそらくTBSというのはテレ東とは比較にならないくらい雑音の多い局のはずで、本来なら対戦相手に集中しなければならないのに、事前の集録やら番宣やらあいさつ回りやらしていたら、とても練習だけしていればいいとは思えない。村田のような経歴・性格ならともかく、普通のボクサーはそういうことは苦手なはずなのだ。

(話は替わるが、井上の人気がそれほど高くないと聞くが、村田のようにできないということがあると思う。でも、どちらが長期的にみていいのかは分からない。特に、いまの井上はパッキャオになる可能性があるのだから、CMやバラエティに割く時間はない。もちろん、大橋会長もそれは分かっているだろう)

田口の強みというのは、実はスタミナと打たれ強さだと思っている。それはメリンドも同じで、八重樫戦の印象が強烈なのでKOパンチャーのように思ってしまうが、あれは八重樫がぼんやりしているので一気に決めただけで、過去の戦績からみるともっとスローモーな、長期戦を渋く戦うボクサーである。

となると、田口が以前大苦戦したカニサレスのように、一見ファイターなのに実は待ちのボクシングという作戦をとられる可能性もある。そうなると、田口はそれほど武器が多いとはいえないので、ずるずる相手のペースにはまってしまう危険もある。もし相手が田中であれば、田中が出てこないことは考えられないので、そういう心配をすることはなかった。

ただ、伝えられるようにメリンドに減量苦があるのだとすれば(メリンドの初世界戦はフライ級でのエストラーダ挑戦である)、そうそう気長に戦っていられなくて、短期決戦を挑んでくるかもしれない。減量苦の相手との対戦といえば思い出すのは宮崎戦で、ああいう戦い方ができれば田口完勝ということになるだろう。

だから問題となるのはメリンドのコンディション。もともと年末に戦うはずだった田口は5ヵ月の間隔があるが、メリンドは9月にフルラウンド、それもブドラー相手に大激闘してから3ヵ月しか空いていない。試合自体も急きょ決まった印象であり、準備が万全とはいえないのではないだろうか。そして、もうすぐ30歳のフィリピン選手というのは、決して上昇期とはいえない。

予想としては田口判定だが、TBSの呪いがかからないことを願うのみである。

[Dec 28,2017]

WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ(12/30、横浜文化体育館)
O井上 尚弥(大橋、14戦全勝12KO)
ヨアン・ボワイヨ(フランス、41勝26KO4敗)

30日は井上の防衛戦。かつては日本の世界チャンピオンも、顔見世的にノンタイトルを挟んでいたので例がないとはいえないが、2月のスーパーフライ2に出るつもりだとしたらどうなのだろうか(他団体チャンピオンが対戦拒否で相手が見つからず、回避の見込み)。近年の日本選手ではあまりないスケジュールだし、バッティングに相手の強弱は関係ないので、心配ではある。

相手のボワイヨは2013年以来28連勝というレコードは大したものだが、それこそ1ヵ月以内の間隔で戦ったり、アルゼンチンやモロッコ、セビリア(旧ユーゴスラビア)で試合したり、大事に使われている選手とは思われない。 ヨーロッパどころかフランスの国内タイトルも取っておらず、悪いけれども、米国で戦ったニエベスより大分落ちるだろう。(誰がみつけて来たんだろう?ジョー小泉か?)

だから、井上の懸念材料があるとすればコンディションだけ。スーパーフライに上げてからはそうでもなくなったが、以前は拳の不安や体調不良でよくない試合があった。そういうことさえなければ、ケガをしないように戦ってほしいというだけである。

WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ(12/30、横浜文化体育館)
井上尚弥 O   KO3R X  ヨアン・ボワイヨ

足を使って逃げる相手のボディを狙うというのは定石なのだが、それをここまで見事にできるというのはすばらしい。日本の選手は、こういう逃げ腰の選手でも顔面を狙い、空転したままラウンドを重ねることが多かった。ここまで徹底してボディを攻めれば、例え3Rで倒せなかったとしても後半失速するのは目に見えていた。井上の完勝。

ナルバエス戦もボディ、河野公平もボディ、米国上陸のニエベス戦もボディ、今回もボディで、スーパーフライに上げてからボディ打ちに磨きがかかったようだ。ボディを打つためには相手の射程深く入る必要があるため打たれるリスクと隣合わせで、今回も全く被弾がない訳ではなかったが、それでもあまり効いた様子もなかったのは、ディフェンスも巧いからである。

引退後の解説者に向かって着々と布石を打っている村田が「セオリー通りなんですが、それをここまできっちりできるのはすごい」と言っていたが、まさにその通り。来年からは、より体格のある相手と戦うことになるが、バンタムまでは大丈夫だろう。ただ、いまのバンタムでも好敵手がいそうもないのは残念。この際また1階級飛ばしてリゴンドーとやるとか。

村田といえば、もう一人のメダリスト清水の録画を拳四朗KO後の時間調整で見ることができた。「巨人兵」とも揶揄される独特のスタイルで、誰とやっても嫌がられることは間違いないものの、中に入られて左フックを合わされたら一発で終わってしまうようにも見える。サンタクルスやアブネル・マレス、ゲイリー・ラッセルとやったら普通に負けるような気もするのだが。

WBA/IBF世界ライトフライ級王座統一戦(12/31、大田区総合体育館)
田口良一 O 判定(3-0)X ミラン・メリンド

ほとんど予想記事に書いたとおりに展開した。メリンドがああやって前に出て来ると田口はやりやすい。1R終盤のアッパーには面食らったが、2R以降ていねいにジャブを突いてペースを握った。私のスコアも117-111田口。終盤はメリンドがまともにもらう場面が多く、バッティングのカットも重なって一方的になってしまった。

心配したTBS全国放送の影響だが、モンスター井上とのスパーリングVTR(よくあんな映像が残っていたものである)はあるし、意外とまともにボクシング中継をしていたので今回は合格点。TBSも井岡・亀田で懲りたかな。(ちなみに、井岡会見は見ていません)

統一王者となった田口だが、すでに7度防衛の31歳と決して若くはない。打たれ強さに自信があるのは分かるが、できるだけ被弾しないようにすることが望ましい。昨日のようなジャブを突く戦い方は大変いい。拳四朗と3団体統一戦はあるのかな。

WBO世界フライ級タイトルマッチ(同)
木村翔 O TKO9R X 五十嵐俊幸

ほとんどの人にとって木村チャンピオンは初見だと思われるが、なるほどこうやってゾウシミンに勝ったのかと改めて感心した。1Rに五十嵐が右手で相手の頭を押さえたり、スリッピングアウェイをしたのを見て木村を応援していたのだが、あの大振りの空振りでは失速するだろうと思っていたところが失速しないでつかまえたのは大したものである。

五十嵐の出来自体は悪くなく、木村の打ち終わりに適確に左を入れていたので4Rまでの採点は互角。しかし頭をつけて打ち合ったのは相手の思う壺で、あれで形勢が一気に傾いた。きついかもしれないが足を使って相手を空振りさせ、スタミナを奪いつつカウンターを入れられれば、木村の見栄えは決してよくないのだから、判定はどちらに転ぶか分からなかった。

ただ、木村の勢い、ゾウシミンを敵地でKOした余勢をかって大晦日の全国放送という晴れ舞台に望んだ勢いに飲み込まれてしまった。はるか昔の、ロイヤル小林と歌川の試合を思い出した。ただ、あのボクシングだとメキシコあたりのボディ打ちできる相手には厳しいかもしれない。引退した井岡とやったら面白かった。

[Jan 1, 2018]