059 ビットコインと仮想通貨の将来 [Jan 26, 2018]

新聞をやめてしまったし交通機関もほとんど使わないので、世間で何が話題になっているかよく分からないし知ろうとも思わない。ただ、ネットを見ているだけでも「ビットコイン」という単語を頻繁に目にするし、奥さんがTVをつけていると出川のCMが目に入る。何やら世の中ではビットコインという仮想通貨に注目が集まっているようである。

これについて私の意見はどうかというと、仮想通貨がいずれ世の中に出回ることは十分ありえることだが、それが「ビットコイン」であるかどうかは分からない。仮にビットコインに投資して身ぐるみはがれても再起可能な若い人はともかくとして、リスクミニマムを心がけるべき年金生活者が近づくものではないということである。以下、思うところを述べてみたい。

そもそも現在流通しているすべての「通貨」は、大なり小なり「仮想通貨」の性格を持つのは経済学の見地からみて明らかであることは間違いない。ドルでも円でも、それらに金(Gold)の裏付けがあったのははるか昔のことであり、現在はただの紙である。ただの紙に、米国政府なり日本政府なりが強制通用力を付与して、自国内の経済活動に便宜を図っているだけのことである。

だから、仮にタイムマシンがあったとしてドルなり円を500年前に持って行けたとしても、それを使って市場でモノを買うことはできない(500年前にアメリカはないし)。同様に500年後に持って行けるとしても、それらが古銭以上の価値を持つ保証はない。発行数が多すぎて、イミテーション金貨と同じようになるかもしれない。

つまり、通貨というものは、時と場所、使用する人が限定される範囲内で「仮想的に」「価値あるものとして」使用されるに過ぎないのである。だから、経済破綻した国でそれまで通用していた通貨が暴落し、文字通り「紙切れ同然に」なってしまうことが歴史上いろいろな場所で起こってきた。いまや当り前に投資されている人民元だって、しばらく前にはそういうリスクがきわめて大きいとされていたのである。

だから、インターネットにおける交換価値を重視していて、自分の国に信用がおけないと思っている人が、自国通貨でなくネット上の仮想通貨を使用する(例えばソフトウェア使用料を仮想通貨で受け取る)ことは経済合理性からみて当然のことだし、そうした仮想通貨が将来拡大することは十分考えられる。だから仮想通貨すべてが眉唾ものとは思わない。ただ、それが「ビットコイン」かどうか保証はないのである。

ずっと昔、スポーツドリンクという市場が確立していなかった頃、わが国にもスポーツドリンクなるものが導入される時期があった。今でも米国で主流である「ゲータレート」も輸入されたし、他にもいろいろなものがあった。しかし、結局いまでも生き残っているのは「ポカリスエット」と「アクエリアス」くらいで、他のドリンクは全国規模では販売されていない。

当時から、マラソン走者が競技中に水分を補給するのを多くの人が目にしていたから、スポーツドリンクなるものが世の中に存在し、いずれ多くのスポーツで利用されるだろうことは予想されていた。だから雨後の筍という状態でみんな参入したのである。つまり、仮想通貨はスポーツドリンクかもしれないが、ビットコインはポカリスエットなのかということである。

もう一つ指摘したいのは、いまビットコインのCMで異口同音に言われているのは、「ビットコインは値上がりしますよ。儲かりますよ」ということばかりなのである。通貨を所持するのはもっと保守的な目的によるもので、仮に目減りしたとしても確実に将来の食い扶持になるようにというのが本来あるべき姿なのである。

その起源は、その年の収穫物の一部を食糧庫に残しておいた縄文時代にさかのぼる。だから、古代において通貨として使用されたのは、米であり織物であり、そのまま残しておいても将来衣食住の何かに使えるものだったのである。牧畜が生産手段だった地域では、家畜が通貨として使われたのも同様の趣旨である。

その後、金(Gold)が通貨として使われる時代が長く続いた。金は装飾品や建材として使うことが可能ではあるが生活必需品とまではいえず、「現物通貨」と「仮想通貨」の中間的なものといえるが、その後政府の発行する紙幣となった時点で完全に仮想化した。日本でも、藩札とか軍票とか、時期と範囲が限定される通貨があった。ビットコインはそれらの現代版ともいえる。
 
確かに、多くの現代人にとってインターネットは生活必需品であり、ネット上の交換価値が重要になるのかもしれないが、人間ネットがなくても生きていけるし、他の楽しみはいくらでも見つけることができる。国家なり領土といったものだって仮想的だけれど、ネット上のつながりはさらに仮想的である。

それらがどうやって裏付けを持ち使用範囲を拡大していけるかが重要なのであって、何ヵ月レベルで値上がりするのしないのといったレベルの話ではないと思うのである。出川が宣伝している時点で、デパートのお買物券に投資した方がまだましと思ってしまうのは、私の頭が古いせいばかりではないように思う。