082 激闘!! ワイルダーvsオルティス [Mar 4, 2018]

WBC世界ヘビー級タイトルマッチ(2018/3/3、米NYバークレイズセンター)
Oデオンティ・ワイルダー(39戦全勝38KO)  1.6倍
ルイス・オルティス(28戦全勝24KO)  3.5倍

クリチコの天下で長らくビッグマッチのなかったヘビー級だが、ようやく盛り上がりの気配がみえつつある。クリチコを倒したジョシュアはジョゼフ・パーカーと戦ってタイトル統一に向かう一方、ワイルダーもビッグマッチを望んでいる。衆目の一致するところ、最終決戦はジョシュアvsワイルダーとなるだろうが、その前にお互い何人かのライバルを倒しておく必要がある。

ただ、両者に次ぐ存在とみられていたオルティスとポペトキンが、いずれもドーピング陽性で予定した試合を消化できない事態が続いているのは残念である。いずれも、旧ソ連とキューバというドーピング検査に協力的とはいえない地域から出てきていることもあって、その点ではあまり信用がおけない。無事に試合までこぎつけられるかどうか(いまだに)一抹の懸念がある。

とはいえ、この試合の両者はいずれも全勝かつKO率も高く、ヘビー級らしい一発必倒のひりひりした打ち合いが見られそうである。現状の勢いからみてオッズ通りワイルダー優勢とみるのが妥当だが、必ずしも安定した試合をする選手ではないので、空回りの危険がないとはいえない。

ただ一人倒せなかったスティバーンを見事にKOして、ワイルダーはかつての倒し屋のイメージが戻ってきた。世界戦線に登場して以来、以前の両腕を振り回すようなスタイルが影をひそめてきたが、前回の試合をみると再び解禁したようだ。世界ランカーの動きに慣れてきたということもあるだろう。

これまでの対戦相手をみると、必ずしも一線級と戦ってきたという訳ではないことに注意したいが、ジョシュアだって、最後はKOしたもののクリチコ相手に危ない場面もあったから、そうそう自分の展開で攻めてばかりいられないかもしれない。ただ、スティバーン第一戦でフルラウンド戦っていることは大きな収穫で、急ブレーキということはなさそうだ。

かたやオルティス。もともとWBA暫定チャンピオンであったが、当時の正王者はウラディミール・クリチコで、クリチコが一線級を次々とKOしていたから、戦ってきたのはその下のレベルである。クリチコと戦うこともなく、トニー・トンプソンやブライアン・ジェニングス相手では、そんなに大きな顔はしていられない。

(WOWOWで、ドーピング陽性になったのは高血圧の薬と言っていたが、そうなるとおそらくは利尿剤系で、WADA基準では医師の処方であっても使用できない薬品である。高血圧に使うのかステロイド系を「抜く」のに使うのか、分かったものではないからだ。)

ただ、ウェイト的にはオルティスの方が20ポンド重く、サウスポーなので距離が遠い。アマ経験も豊富で、ワイルダーの大振りパンチにもある程度対応するだろうし、カウンターを取る技術もある。一発決まれば試合が終わってしまうので、ワイルダーとしても迂闊に近づくことはできそうにない。

展開としては、スティバーン第1戦のような戦いになるのではないか。ワイルダーは目指すビッグマッチに向けて全勝レコードを続けたいはずだし、リスクを最小限に戦うと思われる。オルティスもペースを握れば前に出てくるけれども、ワイルダー相手にプレッシャーをかける度胸があるかどうか。

ワイルダーの振り回さないパンチがどの程度オルティスに届くかがこの試合の焦点で、パワー50%のパンチでも効かせることができればワイルダーのペースになるだろう。私としては、定期的にスケジュールをこなせないオルティスの仕上がりにやや疑問を持っているので、ワイルダーの判定勝利を予想する。終盤KOがあるかもしれない。

 

WBC世界ヘビー級タイトルマッチ(3/3、米バークレイズセンター)
デオンティ・ワイルダー O TKO10R X ルイス・オルティス

ジョーさんが「今年のベストファイト候補だ」と興奮したのに激しく同意で、ヘビー級の醍醐味を堪能させてもらった。

予想記事に書いたとおり、ここで負けたくないワイルダーは細かいパンチで静かなスタートとなった。4Rまでの採点は私は38-38互角。オルティスも距離を詰めてワンツーを放ち、クリーンヒットはしないもののこれまでの対戦相手とは違うところをみせた。

試合が動いたのは中盤。5R、ワイルダーの右ストレートがオルティスのガードをかいくぐってヒット、オルティスがダウン。このダメージで動きが鈍くなったオルティスに7R、ワイルダーが攻勢をかけるが、カウンターを食って逆に効いてしまう。このラウンド残り1分のワイルダーのしのぎ方が絶妙だった。

ロープ際で何度もクリーンヒットを受けて飛ばされるが、ロープがあるのでダウンにはならない。オルティスが打ち疲れるとすかさずクリンチ。そうやって決定打を許さず、クリンチを繰り返してこのラウンドをしのいだ。ヘビー級だから細かなテクニックよりクリンチで逃れるのが安全確実であり、そうやって対応していればストップされることもない。

ここで仕留めきれなかったオルティスがスタミナ切れを起こしたのはTV画面からみても明らかで、余裕はないものの普通にコーナーに戻ったワイルダーとは残りHPに差があったということだろう。8Rくらいまではまだ足がふらついていたワイルダーだが、9Rには足腰が戻ってきて、とうとう10R、最後はアッパーで仕留めた。

ワイルダーがどうしても負けたくないと思っていたのは、序盤はいくつかラウンドを取られることを承知で、オルティスのクリーンヒットをもらわない試合展開をしていたことに現れていた。ワイルダーは序盤KOが多い割に長丁場を苦にせず、試合後半になっても動きが落ちないのは大変いい。身長が200cm以上あるのに、ウェイトが100kgを割るように、本来アスリートなのだろう。

ワイルダーは無敗レコードを伸ばしかつKOできっちり勝って、次のビッグマッチにつなげることができた。かねてから指摘されるディフェンスを甘さを突かれて中盤危ない場面もあったが、この点を修正するよりこのままワイルドにいった方がいいかもしれない。50%くらいの力で放つ右ストレートにもなかなか威力があった。いい試合だった。

[Mar 4, 2018]