069 梅ノ木尾根から広沢寺温泉 [Mar 25, 2018]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。赤線が今回、紫線が昨年間違えたルート(汗。

あっという間に暖かくなり、気がつくと3月も下旬になっている。昨年、鐘ヶ嶽から梅ノ木尾根に抜けるつもりで、間違えて弁天御髪尾根で危ない目にあったのは、もう1年前のことになる。早い機会に正しいルートを歩こうと思っていたら、1年経ってしまった。

前回同様に鐘ヶ嶽から登るか、それとも日向薬師から登るか悩ましいところだったが、今回は経験のある日向薬師から入って鐘ヶ嶽方面に抜けるルートをとることにした。前回、広沢寺温泉を素通りして七沢温泉に向かってしまったので、せっかくだから広沢寺温泉でひと風呂いただこうとも考えたのである。

ところが、マイナールートのはずなのに、広沢寺温泉が20人超の老人ハイカーの来襲により激混み、帰りのバスは50分間立ちっぱなしという事態に陥った。これはまた後で書くとして、逆の日向薬師側はどうだったのかというと、この日は何やらイベントがあって朝から大騒ぎ、逆回りにしたところで帰りのバスは混んだに違いない。

という訳で、2018年3月25日・日曜日、久々の丹沢である。朝一番の電車に乗って新宿から小田急に乗る。小田急は複々線化でスピードアップされたということだが、新宿駅はきれいになったものの特に到着時間が早くなるということもない。

海老名を過ぎるあたりで山が見えてきた。頂上近くは雪が残っているものの谷筋が主で、尾根には雪があるとしてもわずかなようだ。前衛の山々は上まで土色をしているから、この日歩く高さであれば大丈夫そうだ。WEB情報では春分の日の雪でヤビツ峠へのバスが止まっているというから、ちょっと心配していたのである。

日向薬師のバス停に着いた頃には8時半近かった。わが千葉ニュータウンから3時間半である。バス停横の駐車場を占領して、受付か何かのテーブルが置かれ、多くのスタッフや地元の人(産直でもやるのだろうか)がうろうろしている。幟りが立てられているので、知らなかったがこの日はイベントだったらしい。

日向薬師へ歩く途中にも軽トラやワゴン車がどんどん横を抜いていく。お堂近くの駐車場もすべて貸切りとなっていて、迷彩服の上に鎧兜を着た武者姿のスタッフや、山伏姿でほら貝を吹く人もいて、ずいぶんにぎやかである。

ちょっと嫌だなと思ったのだが、前回道間違いしたこともあり、山行の安全をお願いに本堂にお参りする。2年前に来た時には本堂は工事中で足場に囲われていたが、今回は改装なって真新しくきれいである。さっそく本堂に入る。ご本尊・薬師如来を十二神将が囲むというあまり見ないご本尊である。すぐ脇にごびんずる様がいらっしゃったので、頭とヒザをさすらせていただく。

説明書きによると、こちらの茅葺屋根は全国でも最大規模ということで、いまや茅の手配だけでも大変だろう。かといって寺社であるから、ビフォーアフターのようにガルバリウム鋼板という訳にもいかない。すでに茅葺や檜皮葺がそうだし、瓦葺すら似たような状況になりつつある。天皇陛下の代替わりでは多くの伝統素材が必要とされるが、結構たいへんな手間だと思う。

お参りしてから裏参道を戻り、梅園横を上がる登山道に入る。あちこちに「巡視道・立入禁止」の立札があるマイナールートであり、私の他に誰も歩いていない。日向山をトラバースして緩やかな坂道が続き、9時ちょうどに「クマ注意分岐」に到着。 ここは登山道が十字路になっていて、正面を下りると弁天の森キャンプ場跡、右に登ると日向山、左に登ると梅ノ木尾根となる。

このクマ注意分岐、そういう立て看板があるので私はそう呼んでいたが、少し進んで行先標示をみると「天神平」が正しいようである。前回は日向山を往復したので登り返しのここはきつかったが、今回はフレッシュな状態なので、それほど苦しむこともなく尾根にあがることができた。

よく見ると、すぐ脇に建てられている動物除けの金網が傾いたり低くなってしまって、鹿でも猪でも乗り越えて来られそうな状態であった。そういえば弁天御髪尾根の動物除け柵も、悲惨な状況であったことを思い出す。定期的にメンテナンスするのも大変なのだろう。


改装なった日向薬師本堂。茅葺屋根は全国でも最大規模のものということです。


日向薬師裏から登山道に入る。この日はイベントで、鎧兜だの山伏のほら貝だの、結構にぎやかで尾根の方まで聞こえました。


梅ノ木尾根に上がる。例の「クマ注意分岐」は、正式には天神平というらしいです。

梅ノ木尾根は断続的に急坂の続く尾根で、狭いけれども平らなヤセ尾根は大沢分岐に合流する前の10分ほどである。あとは平らな尾根があっても5分と続かない。

天神平の標高が336m、それから3つほど急坂を越すとベンチが置いてあるピークとなる。この日はゆっくりなペースでいいからバテないように歩くことをテーマに登ってきたので、それほど息は切れていない。ただ、2つ目か3つ目のピークでちょっと首をひねった。直進する稜線は例の「巡視道立入禁止」立札があり、左に90度曲がって登山道が続いている。

時刻はちょうど午前10時、天神平から1時間である。せっかくベンチがあるので、ひと息ついてGPSで位置確認する。2年前の記憶によれば、浄発願寺奥ノ院の分岐は立札と東屋があるはずだが、ここにはベンチしかない。GPSのデータを見ると、ほぼ分岐点の数字を示している。ただ、直進する稜線は北向きでその方向には谷しかなく、どうも違うようだ。

そうやって考えている間に、90度違う道からにぎやかな声が聞こえてきた。グループのようである。こちらに行くにしてもすれ違ってからの方がよさそうだと待っていると、なんと年寄りばかり、20人を超える大集団なのであった。

こういうマイナールートに、こんな大勢で来る人達の神経が知れない。大人数でしゃべり倒したいのなら、ファミレスでやってほしい。うるさいのはがまんするとしても、この先しばらくトイレはないし、みんなまとまって休める場所だってない。百歩譲って山に来るとしても大人数に適したコースを選ぶべきだし、このルートで許せるのは5~6人のグループまでである。

(そういえば、奥多摩のタワ尾根に、岩崎某が登山教室の十数人を連れて登っていたという話を読んだ。偉そうなことを言っていてこういうことをしているのが分かり、それから岩崎某の書いた本は二度と読まないことにした。)

その時は、大山から下りてきたとばかり思っていたので、こんなマイナールート、しかも立入禁止と書いてあるのを大人数で無視するのはどうなのかと腹立たしかったのだが(一人だってよくはないけれども、大人数というのは加速度的に悪い)、よく考えると、大山に登って下りてこの時間というのは難しいのではないか。

あるいは、日向薬師バス停から林道を遡って浄発願寺奥ノ院から登ってきたのかもしれない(それだと、立入禁止の巡視道には入らない) 。だとしたら、特に目標となるピークもないこのコースをなぜ選んだのか、全く分からない。このグループには、帰りにひどい目に遭わされることになる。

それは後の話で、このときグループの中の誰かが、「ここが537ピークかしら」と言っていたのを聞いて、浄発願寺分岐はまだ先だと分かった。案の定、7~8分先にちゃんと立札のある分岐があった。ただし東屋というのは記憶違いで、大きなベンチが2組置いてあるだけであった。

さきほど分岐で迷ったのは、おそらく537独標の次のピークで、ここだと北向きに尾根が分岐している。分岐した先は大沢にまっすぐ下りるので、見た目どおり谷に向かっている。電子国土で見ると浄発願寺分岐と200mほどしか離れていないので、GPSデータだけで判断するのは難しいかもしれない。でも、地形図と方角で判断できなかったのはまだまだ未熟である。

浄発願寺分岐から30分、標高差100mほど登って二ノ沢の頭に到着。「二ノ沢の頭」というくらいで、南側の谷が二ノ沢である。この先は狭いけれどもほぼ平らな尾根が続くので、気は使うけれど体力的には楽である。このあたり、つい最近大規模な伐採があったらしく登山道に伐り出された木が横たわって歩きにくい。立入禁止の巡視道なので、文句は言えない。

いよいよ梅ノ木名物のヤセ尾根となる。両側が切れ落ちているので足を踏み外すことは許されないが、ゆっくりできないのでかえって距離が出る。地図上で見ると、二ノ沢まで30分かけて登ってきた距離を10分くらいで走り抜けるような感じである。ヤセ尾根を越えると、大沢分岐まで最後のひと登り。分岐が近づくと稜線を右から左に速足で抜けて行く登山者が見えた。

11時15分、大沢分岐着。二ノ沢の頭で小休止してからあまり時間が経っていなかったし、そもそも休む場所がなかったので、写真を撮ってすぐ通り過ぎる。この地点の標高が702m、この日の最高到達地点であった。丹沢では何ということもない高さだが、房総にはこんな高い山はないのである。

ここから弁天御髪尾根分岐までが、これまで歩いたことのないルートである。下りなので登りよりは楽だろうと思っていたのだが、そんなことはなかった。大沢分岐を過ぎてすぐ、いきなりの急斜面が現れる。帰ってから吉備人出版の登山詳細図(バリエーションルートの専門地図)で調べると、「急傾斜悪い」と書かれているルートである。本当に悪い。

悪い上に手掛りとなるロープが細く、適切な間隔で固定されていないので、登る時はともかく下りではかなり危ない急斜面である。もちろん後ろ向きの3点確保、安全第一で下りてきたが、ちょっと神経が磨り減るルートであった。1年前に正規のルートをとっていたら、最後にこの登りがあった訳で、それはそれで大変なことであった。


登り始めて2時間余り、二ノ沢の頭を過ぎるといよいよ梅ノ木尾根のメインイベント、ヤセ尾根が始まる。


ヤセ尾根を越え、左右から稜線が迫ってくると大沢分岐が近い。たいていの登山者は、右から左へと大山を目指す。


大沢分岐を北に曲がると、吉備人・登山詳細図で「急傾斜悪い」とコメントされるハードな道に。登りはともかく下りで使うのは神経を使う。

 

大沢分岐後の凶悪な急傾斜を何とかクリアして、ようやく緩斜面になった。そろそろお昼が近いので、どこか休めるところはないかなと思っていたら、突然、木の間から屋根が見えた。なんと、こんなマイナールートの途中に、東屋があったのである。

近づいてみると、すぐそばに「←大山」「鐘ヶ嶽→」の行先標示もあり、東屋は古くなっているものの、まわりは草が短く刈られていて放置されていた訳ではないようだ。ただ、異様なのはテーブルの上に乗った一升瓶であった。このあたり、何ヵ所かで伐採されたばかりの木が転がっていたので、あるいは林業関係者が休憩場所として使っているのかもしれない。

せっかく日当りもいいことだし、ここでお昼休憩を取らせていただく。この日はEPIガスとインスタントラーメンを用意して、みそラーメンを作った。風が強いのとガスの残りが少なかったせいかお湯の沸きが甘く、5分以上煮なくてはならなかったが、久しぶりの山での調理(というほどのものでもないが)であった。

この日は平野部では20℃を超える暖かい日で、麓の方では暑いくらいだったのだが、標高を上げるとともに風が時折強く吹いて、体感温度はやや低かった。この東屋もGPSでは標高662mあったので、日差しはあるのだけれど風を遮るものがなくちょっと寒かった。

ともあれ、30分休んで12時10分に出発。ここから弁天御髪尾根の分岐まで、15分か20分、多く見積もっても30分あれば楽に着くだろうと思ったが、例によってそんなに甘くはなかった。標高としては東屋も弁天御髪分岐もたいして変わらないのだが、途中に小さなピークが4つも5つもあり、その登り下りが楽ではないのである。結局35分かかった。

その途中には、すりばち広場というぽっかり日が差す窪地のような場所があったり、木の間から遠く相模湾まで望める展望広場があったりして、弁天御髪尾根もそうだが、かなり手間をかけて登山道を整備した形跡が残っている。おそらく麓にある七沢弁天の森キャンプ場を作った時ではないかと思う。

このキャンプ場は厚木市の施設で、例によってバブル期に建設され、バンガロー、キャンプサイト等が整備されていた。しかし、これも例によって事業仕分けで「不要」とされ、台風被害もあって現在も休止されたままである。税金でやっているから周辺整備にもおカネがかかっていて、鐘ヶ嶽から大山に至るルートや梅ノ木尾根・弁天御髪尾根には案内表示がたくさんある。

しかし月日が経ち、多くのものは再び土に還りつつある。弁天御髪分岐は、1年前に来た時には「見晴広場」の立札が立ち、大山方面・弁天広場方面の案内表示もあったはずなのだが(だから間違えたのだ)、今回来てみると、ただ尾根の分岐に標識柱が立っているだけであった。そのあたりに転がっている木片を裏返して見ると、「見晴広場」のペンキが薄く残っているのが見える。おそらく長年の風雨で崩壊してしまったのだろう。

もっとも、この日大沢分岐から下りてきた時間は休憩時間を除くと約1時間で、登りであれば1時間20分ほどみなくてはならない。その時は山ノ神から分岐まで約40分かかっているから、合計すると2時間、目的地であったクアハウスまでさらに2時間とみると到着は午後3時頃になり、弁天御髪尾根経由七沢荘の午後2時よりさらに時間がかるところであった。

少し寂しく思いながら弁天御髪分岐を後にする。ここからは前回登ってきた急傾斜なので見覚えのある道だが、わずかの間に標高差300mほど下るので傾斜は半端ではない。崩壊した鹿柵沿いに急傾斜を下って行く。

一息ついたあたりで、前方になだらかな尾根道がある。そちらの方が楽そうだったが、鐘ヶ嶽方面は急傾斜の坂を指示している。やむなく指示に従って急坂を選んだのだが、帰って調べてみると尾根道の方も電子国土に載っていて、そちらを通った方が広沢寺方面にショートカットできたので、後からくやしい思いをした。

くやしいといえば、山ノ神分岐で広沢寺に向かう道が2つに分かれている。そのうち「らくらくコース」と書いてある道を選んだのだけれど、これがまた大変な遠回りで、道も斜めっていて「らくらく」ではなかった。次回来ることがあれば、ぜひ近道ルートをとることにしたい。

山ノ神隧道の出口に広沢寺温泉1.8km、40分と書いてあるのだけれど、実際GPSで測ると2.4kmあった。1.8kmの下りで40分はかからないだろうと思ったのだが、実際は時間の方が正しく距離が間違っていた訳である。広沢寺温泉ではまたひどい目に遭ったのだけれど、長くなったのでそれはまた改めて。

この日の経過
日向薬師バス停 8:20
9:00 クマ注意分岐 9:05
10:00 537の次のピーク 10:10
10:40 二ノ沢の頭 10:50
11:15 大沢分岐 11:15
11:35 謎の東屋(昼食休憩) 12:10
12:45 弁天御髪尾根分岐 12:45
13:25 山ノ神分岐 13:30
14:25 広沢寺温泉
[GPS測定距離 9.2km]

[Apr 16, 2018]


急傾斜を下ったところにある謎の東屋。一般登山道ではないのに、なぜこんなに立派な東屋が建っているのだろう。置きっぱなしの一升瓶も謎。


弁天御髪尾根との分岐は、1年経ってやけにあっさりしてしまいました。以前もこの状態であれば、間違えずに大山方面に進んだと思われる。


最後、山ノ神に向かう尾根も、かなりハードな急傾斜。目の前に見える鐘ヶ嶽の高さが、どんどん低くなっていく。