060 改めてアメフトの日大騒動について [Jun 15, 2018]

日本ではマイナースポーツもいいところのアメリカンフットボールが、連日ニュースで報道された。おそらく、国内においてアメフトがこれほど取り上げられたことは史上初めてで、日本人NFL選手が活躍しない限り今後もないだろう。

正直なところ、私としては国内の試合に全く興味がないのだが、有馬さんや生沢さんといったおなじみの面々が登場したこともあり、NFL情報を記事にしているサイトの端くれとして、遅まきながら感想を述べてみたい。

まず、日大という組織は、理事長(実質的なトップである)の顔を見て分かるとおり体育会系が牛耳っている。体育会系というよりも、むしろ相撲部屋といった方がいいかもしれない。相撲部屋といえば「無理へんに拳骨」と古くから言われるように、親方・先輩の指示が絶対であり、それに疑問を差し挟むことは許されない。それを試みる者には、鉄拳制裁が待っている。

そんな組織がなぜ生き残りここまで勢力を伸ばしてきたかと考えると、日本の社会そのものがそれを求めていたのだと言わざるを得ない。実力主義だの実績重視だのいくらきれい事を言ったところで、実際は「上の言うことに逆らわない」人間が出世するのが日本の組織であり、そうした組織で重視されるのは日大型人材なのである。

だから、小田嶋先生が常日頃主張するように、日本の組織は「下へ行くほどどんどんバカ」になる。上の指示に従うだけなら頭はいらない。むしろ思考停止して考えることは誰かに任せた方が楽である(特にそういう人間にとっては)。大事なのは組織を末永く存続させることではなく、自分達がより多くの分け前を取ることだからである。

そういう組織を私はつい先ごろまで身近に見てきた。「日大型人材」というよりほとんど日大なのだが、そういう人間が中核を占めている組織だった。彼らが中核だから彼らが考えているのではない。彼らはまた他の誰か(役所とかOBとか)の指示を忠実に守っているというだけのことで、自分の頭は使わない。自分の頭で考える人間はスポイルされる組織なのであった。

だから、今回の件に関しても、件の前監督だか常務理事人事部長をクビにしたところで、彼が外からコントロールできる人間が次に座るだけのことで、日大が生まれ変わることはない。仮に生まれ変わるチャンスがあるとすれば、今回の事件を契機に就職が厳しくなり学生が減り、系列の高校・中学の受験生が激減するケースだけである(長期的にはそうなる)。

むしろ今回のケースで私が思ったのは、そういう連中から身を守るために、関学はどうすべきだったのかということである。

何度も繰り返し放映していたVTRを見ても明らかなように、スローイング後のQBは明らかに周囲への警戒を怠っているし、プレイアクションであったとしてもオフェンスラインはどこで何をしていたのかということである。私に言わせれば、オフェンスラインの最大の仕事はQBを守ることであり、全員がボールの行方を最後まで見ている必要はない。

今回は幸いにひどいケガにはならなかったようだが、アメリカ並みに体格のあるディフェンスラインが、全速力で走ってきてヒザ下にハードヒットすれば、シーズンアウトになっておかしくない。そして、反則指示があってもなくても、ボールを見ずにQBに当たりに来るディフェンスがいることは、アメフトでは当り前である。

そうした点を考慮すれば、パスを投げる前投げた後に周囲を確認するのはQBにとって自分を守るために必要なことであるのに、その注意が欠けていたことを指摘する意見はゼロである。もちろん、日大を厳罰に処すためにTV的にそれを言ってはいけなかったのかもしれないが、本当のことを言えば、自分の身は自分で守るしかないのである。

そして、確かスタンフォードの河田さんが言っていたと思うが、アメリカであれば、あのケースは100%乱闘である。しかし、あのプレイを見て乱闘も小競り合いも起こさなかったチームのお行儀のよさを誉めるべきかどうかということである。

乱闘を勧める訳でも美化する訳でもないが、彼らはチームメイトがひどい反則を受けて(ケガの軽重はその場では分からない)、加害者を無傷で返していいと思ったのだろうか。仮に最悪のケースで両チーム1年間出場停止になったとしても、チームがたかだか日本国内で勝ったの負けたのというよりも、もっと大切なものがあるのではないだろうか。

よくラグビーで言われる”All for one.One for all.”。日本ではえてして”One for all”という滅私奉公的側面だけが重視されるが、チームというのはいざと言う時個人を守ってくれるものなのである。悪質な反則を受けてすぐに動いてくれないチームに属する意味は、どこにあるのだろう。

今回の場合は、マスコミが動いてくれたこと、加害選手が非を認めて記者会見したことといった要因があり、事後的にかなり効果的な報復ができたけれど、日大の情報管理・選手管理が万全であれば、関学の泣き寝入りになっておかしくなかったケースである。

いくら画像があるといっても、あのプレイが悪質な反則だと一目で分かる人はそれほど多くはない。むしろ、説明されなければアメフトはああいうスポーツだと思うのではないか。ヒザ下へのタックルが厳しくとがめられるようになったのはNFLだって最近である。目つぶしや金的をやった訳ではない。その意味でも、関学にとって今回は理想的な成り行きであった(あるいは、日大ないし前監督に敵が多かったということだ)。

わが国の風土からして、日大のような組織が人生いろいろな機会をとらえて反則したり不正なそそのかしをしたり、危害を加えたりしてくる。その際重要なのは、自分の身は自分で守るということであり、協会だの警察だのマスコミだの、いざという時動いてくれるかどうか分からない他人よりも、チームメイトのために自分がまず動くことだと思っている。

たかだか日本のアメフトで、仮にプレイできなくなって数百億円のマイナスになるなんてことは、残念ながらありえない。相撲部屋に良識を期待するよりも、そういうことをしてくる奴らだと思ってそれなりに対応した方がいい。おそらく彼らは、中長期的にその報いを受けることになる。例えば、学生の半分が某国からの留学生になるみたいな。

[Jun 15, 2018]