086 パッキャオ9年振りKO勝利 [Jul 4, 2018]

WBA世界ウェルター級タイトルマッチ(2018/7/15、クアラルンプール)
Oルーカス・マティセ(39勝36KO4敗)2.7倍
  マニー・パッキャオ(59勝38KO7敗2引分け)1.6倍

ただでさえ格下とみられるWBA正規王者のタイトルマッチで、出て来るのが昔の名前で出ていますの二人である。5~6年前ならビッグマッチだったかもしれないが、いま現在この二人がクロフォードと戦ったらホーンと同じことになるだろう。いつまでもこのレベルの試合に大金を払っていてはいけない。

先日WOWOWで、フランプトンとドネアの試合を見た。正直言って、見るに堪えなかった。ドネアの全盛期は精一杯長くみてもニコラス・ウォータースに負けた時(2014年)までであり、それ以降は世界一線級の力はない。フェザー級でパワーの違いに苦しむならともかく、フランプトンのスピードに圧倒されていた。これ以上晩節を汚すべきではないだろう。

そのドネアが、最後に世界タイトルを失ったのがWBOのスーパーバンタム級で、相手はジェシー・マグダレノであった。この選手もたいしたことはないと思っていたら、案の定、アイザック・ドグボエにKOされてタイトルを失った。

こうしてみると、パッキャオとドネア、重なるところが多い。複数階級を鮮やかに制覇していたのも同じなら、スピードもパワーも落ちているのに引退せず戦い続けるところも同じ。それでも世界タイトルマッチをやれるだけポンサクレックよりもましと考えられなくもないが、戦う相手がどんどんレベルダウンしているのは、見ていて悲しい。

パッキャオが最後にタイトルを失ったジェフ・ホーンは、クロフォードに全く歯がたたなかった。ホーンとマグダレノ、捲土重来がないとは言い切れないが、私はその可能性はきわめて低いと思っている。その伝でいけば、フランプトンに歯がたたなかったドネアと同様、パッキャオはマティセとは差があっておかしくないのだが、そう言い切れない要素もあることはある。

というのは、マティセはフランプトンとは違って、こちらもまたとっくにピークを過ぎた選手のように思えるからである。王座決定戦のティーラチャイ・テワ・キラム戦もやっとこさ勝ったという印象であり、ウンベルト・ソトやレイモント・ピーターソンを一蹴した頃の迫力は感じられなかった。

それこれ考え合わせると、このくらいのオッズになることはやむを得ないのかもしれないが、私には39歳パッキャオのFavoriteを買うことはできない。もちろん、パッキャオの動きにマティセがついていけないケースも十分考えられるのだが、Underdogならマティセを推したい。

マティセがこれまで喫した4敗の相手はすべてテクニシャンで、素早く動かれて空転したままラウンドを重ねるケースである。スウィフト・ガルシアは前半打ち合いに来て、そこまでは引けを取らなかったが後半動かれてペースを取り返された。パッキャオは基本的に攻撃型の選手であり、もちろんディフェンスは巧みだが動き回るタイプではない。

一方のパッキャオ。ハードパンチャーとの対戦はクラスを上げてからはそれほど多くはなく、リッキー・ハットンあたりが最後だったと思う。その後に戦ったコットは本調子になかったし、マルガリトに至っては動きの速さに雲泥の差があった。一発食ったら終わりという相手との対戦は、しばらくしていない。

そして、フレディ・ローチから離れて、果たしてパッキャオの調整が以前のように行くのかどうか。ライト級より重いクラスでパッキャオが戦えたのは、ローチの力が大きかったとみているので、その点はかなりマイナスに評価される。

加えて私が心配しているのは、パッキャオ陣営がマティセになら勝てると踏んでいるところである。地元に近いマレーシアで凱旋試合をしたいのなら、もう少し安全な相手だっている。どうしても世界タイトル戦をしたいのなら、スーパーライトにだって落とせなくはないだろう。ウェルターで世界戦にこだわるから、マティセ以外に戦える相手はいないということになる。

それではマティセはそんなに弱いかというと、確かにクロフォードやエロール・スペンスには敵わないかもしれないが、現実にスウィフトとほぼ互角な試合をしていることを忘れてはならない。スウィフトはキース・サーマンと差がない。となると、そんなに弱くはないとみなくてはならない。もちろん、出来不出来のが大きく、テクニシャンに相性が悪いということはあるが。

ということで、私の予想はマティセKO勝ち。パッキャオは、こんな試合をするなら引退すべきだったのではというような、ドネアと同じような感想になるのではないかという懸念がたいへんに大きい試合である。

WBA世界ウェルター級タイトルマッチ(7/15、クアラルンプール)
マニー・パッキャオ O TKO7R X ルーカス・マティセ

軽量級デビューで、39歳で、国会議員の片手間にボクサーをやっていて、それでも勝ってしまうのだからパッキャオはすごいというべきか、倒されるマティセが弱すぎると言うべきか迷うところだが、ともかくもパッキャオは2009年のコット戦以来久々のKO勝利である。

1Rにパッキャオの大振りの左フックを頭にもらってマティセの足がふらつくのを見て、ほとんど勝負の行方は見えたように思う。パッキャオがKOするときの特徴は先手必勝で、ほとんど2Rまでに主導権を握ってしまう。そこから巻き返せたのはマルケス兄くらいで、ほとんどのボクサーはそのまま押し切られている。

今回のマティセは、飛び込んでくる左ストレートは意識してガードで防いでいたけれども、ジャブの差し合いで遅れをとった上に、これまで見せたことのない秘密兵器、左アッパーへの対応ができなかった。VTRでいくら調べてもあんなパンチを放ったことはないので、無理はないのかもしれないが、あれを打つには距離をつぶさねばならず、それだけ入り込まれていたということである。

そもそも、テワ・キラム戦がやっとこさの勝ちで、マティセが全盛期の出来にないことは見当がついていた。それでも、パッキャオの劣化がそれ以上に進んでいると思ってマティセ乗りの予想にしたのだが、パッキャオの方は3~4年若返ったような動きで、3度ダウンを奪ってKO勝ちしたのは見事という他ない。

さて、これでWBAレギュラータイトルを手にしたパッキャオだが、今後が難しい。まさかエロール・スペンスとかテレンス・クロフォードとやる訳がないし、スウィフト・ガルシアならいい勝負だろうが、今更盛り上がる対決とは思えない。この際だから、カネに困っているらしいメイウェザーとの再戦が両者にとって最もメリットがありそうだ。

それにしても言いたいのは、予想記事の最初に書いた「このレベルの試合に大金を払ってはいけない」ということである。その考えは、試合を見た後でも全く変わらない。

[Jul 15, 2018]