061 平成最大の水害 [Jul 13, 2018]

このたびの水害では私が最近歩いた四国遍路道の市町村が大きな被害を受けた。宿毛市から大月町、愛南町、宇和島市、大洲市と、本当に歩いた順に被害が大きくなっていて、まさに他人事ではなく胸を痛める。被災された皆様には、心よりお見舞いを申し上げたい。

今回の水害、最初に特別警報が出た時には九州北部の被害が心配だという情報であった。ところが、時間を追うごとに四国だ、京都だという話になり、最後に広島・岡山で河川が氾濫して中国地方の被害が甚大になった。予報の難しさはあるとはいえ、もう少し何とかならなかったのかと思う。

ここ数十年、阪神淡路大震災があり、東日本大震災があったので感覚が少しマヒしているが、今回の水害は平成最大だそうである。死者・行方不明者数百人という人的被害もさることながら、土砂崩れや浸水による物的被害も大きい。古くからある家屋が被害にあったのならともかく、最近新築した家屋が泥まみれになったり濁流にのまれているのを見るのは、身につまされる。

これについて、思い出したことがあるので忘れないうちに書いておきたい。

二十年以上前、東北をドライブしていた時のことである。幹線道路の横の法面、道路から5mくらい上の所に線が引いてあって、「三陸沖地震の時、ここまで津波がきました」と書いてあった。それを見た時、あんな高さまで津波が来ることは何百年に一度くらいだろうし、堤防もちゃんと作られているからそこまで心配しなくていいだろうと思ったのである。

ところが、それから十数年で本当にその高さの津波が来たのである。自動車で通った時に大丈夫で、震災の時に津波が来たのはただの偶然であり、本当はもっと注意しなくてはならなかった。大丈夫なんていうのはまさに浅知恵であり、自然の脅威の前には何の役にも立たない。

現代の技術水準がどうこうなんてことは大して意味はない。堤防にせよ何にせよ構造上耐えられる範囲が想定されており、それを超える災害には対処できない。昔から気をつけろと言われていることは気を付けなければならないし、なまじの対策をとったところで間違いなく大丈夫なんてことはないのである。

ひるがえって、今回の水害では私の住む関東近辺はそれほど大きな被害はなかったが、これはただの偶然で、たまたま前線が近畿から九州にかかっていたからああなっただけであって、一歩間違えば関東だって同じことになることは忘れない方がいい。

私が最初に就職した頃だからもう四十年前のことになるが、利根川があふれてあのあたりの河川敷ゴルフ場すべてが水没したことがあった。同じ頃に多摩川もあふれて、読売ランドのあたりが被害にあった。立派な堤防があるからといって、オールマイティではない。

今回被害にあった四国地方だって、水害から1週間経っていないのに河川の水量はあっという間に減って、現在ではピーク時の100分の1以下になっている。そもそもあのあたりは渇水の方が差し迫った問題で、記録的な短時間降水に対応できるようにはなっていないのである。

同様に、首都圏の河川だって、堤防の高さは机上の計算から割り出されたもので、すべての災害に対応できる高さという訳ではない。富士山や浅間山が噴火して川をせき止める事態まで想定してはいないし、流域面積が広い分上流で大雨が降れば加速度的に下流に影響が出る。

私の住む千葉ニュータウンは北総台地という高台にあって、成田・三里塚と並んで空港の候補地になった土地である。風が強いのが難点だが、対水害という点では比較的危険度が小さい。ところが、国の事業としてのニュータウン事業が行き詰って民間に多くが任された結果、かつて浸水したあたりにも住宅地が開発されるようになってしまった。

確かに、足の便は大して変わらない上に、安く買収できた土地だから安く販売されている。四十数年前には生まれていなかったり、このあたりに住んでいなければ知らないのかもしれないが、現在でも市のハザードマップを見ればかなり危ないと知ることができる。でも、みんなそこを買うのである。

四十年前だけではない。江戸時代に浅間山が噴火した時にはこのあたりで川があふれて、すぐ近くの旧・本埜村では土蔵が浸水し、それ以降土蔵は2階建てで作ることになったくらいである。過去の経験や昔からの言い伝えを軽視すべきではない。

4年前に土石流に襲われ、今回また上流の土石流が砂防ダムを越えて住宅地に流れ込んだ広島でも、おそらくそういう言い伝えはあっただろうと思う。だから、つい最近まで宅地造成されなかったのだ。不動産業者は売ってしまえばあとは行政の不手際みたいな顔をしていられるが、買った人はそういう訳にはいかない。

どのようなことであっても、自分の頭で考え、他人のしていること言ったことに左右されずに判断しなければならない。他人と同じようにしたからといって、自分の身を守ることがいつもできるとは限らない。

[Jul 13, 2018]