088 木村vs田中、全国ライブ中継のない熱戦 [Sep 24, 2018]

WBO世界フライ級タイトルマッチ(2018/9/24、武田テパオーシャンアリーナ)
O木村 翔(17勝10KO1敗2引分け)
田中恒成(11戦全勝7KO)

対照的な両者である。デビュー戦KO負けから後楽園ホールの前座を続け、アウェイのUnderdogで金メダリストのゾウ・シミンをKOして檜舞台に上がってきた木村と、キャリア11戦にして2階級制覇、今回3階級目を狙う田中。このところボクシング人気の低迷を背景に日本人対決が増えているが、その中でも最も注目したいタイトルマッチである。

木村の最近のタイトルマッチは、五十嵐戦を除いてキー局で配信されない。もったいないことである。ゾウ・シミン戦はなぜかWOWOWで中継がなかったし、サルダール戦も同様である。TV局には痴呆症の終身会長を追っかける暇はあっても、試合を見る目があるディレクターがいないようだ。

今回は、チャンピオン木村よりも、名古屋で絶大な人気を誇る田中恒成の3階級制覇が注目されての全国放送である。世界戦を3連続KO勝ちするようなチャンピオンがなかなか出ないことを考えると、おそらくアウェイでブーイングを受けるだろう木村を応援する気持ちになってしまうのは仕方がない。

もう一つ木村を応援したい理由は、田中陣営が木村の前回防衛戦より前に9/24のスケジュールを発表したという王者気取りの頭の高さである。王座決定戦ならまだしも、挑戦者の分際で日時を指定するとは身の程知らずである。木村には正義の鉄槌を下してもらいたい。

とはいえ、木村のボクシングには危なっかしさが共存することも確かである。これまでの世界戦3戦とも、連打を受けてたじろぐ場面があった。いずれもパワーのない相手だったからやり過ごしたものの、田中の決定力を侮ってはいけない。

もし、田中がナチュラルウェイトであれば木村も苦しいと思うが、田中はミニマムから上げてきたという弱みがある。ミニマム級史上最強であったローマン・ゴンサレスはスーパーフライで完全に頭打ちになったが、フライ級の時から相手の体力を持て余す場面がみられた。伝説・井岡も、フライ級ではアムナットに余裕で負けた。

かつてレオ・ガメスがミニマムからスーパーフライまで連覇したが、当時はたいへん層の薄かったクラスであり、しかも大した相手と戦っていない。現在のフライ、スーパーフライあたりは以前と比べてレベルが高く、ミニマム上がりが簡単に勝てるクラスではない。

前半は間違いなく田中が小気味よく連打を決めるだろうが、そこで仕留めきれないと、木村のエンドレスのアタックが田中の体力を削いでいく展開となる。木村の判定か後半KOと予想するが、ホームタウン・デシジョンだけは勘弁してほしい。

 

WBO世界フライ級タイトルマッチ(9/24、名古屋)
田中恒成 O 判定(2-0) X 木村翔

日本人同士の対決、しかも田中恒成の3階級制覇がかかっている試合にもかかわらず、TVのライブ中継がなかった。TV局の電波が自分達のカネ儲けだけのためにあるのだとしたら、民放などなくなっても構わない。TV人は何を考えて仕事をしているのかと思う。

それはそれとして、私の採点は116-112田中につけた。だから、7Rがダウンであってもなくても(私はダウンに見えたし木村のラウンドとしたが)、12Rをどちらにつけても(私には田中のラウンドに見えたが)、結果は変わらない。僅差で田中の勝ちである。

映像をみて意外だったのは、木村と田中で体格が変わらないように見えたことである。ミニマム上がりの田中が、ゾウ・シミンを体力で圧倒した木村に匹敵する体格とパワーがあるというのは意外であった。

そして、勝敗を分けたのは、木村と田中の引出しの多さの違いだったと思う。もちろん、2R左フックのカウンターで木村が少なからぬダメージを受け、特に前半では押し込まれてしまうという要因はあったにせよ、仮にあのパンチがなかったとしても、12R効果的に足を使えていたのは田中の方であった。

木村の中盤からの追い上げはすばらしく、2Rのダメージを考えると驚異的といえるのは確かだが、前半受けたダメージのせいなのか、逆に押し込まれる場面が多かった。予想外に体格差がなかったことと併せて考えると、田中はまだ成長期で体が大きくなっているということであろう。

今回が熱戦であったことは確かで、年間最高試合という声があがるのも当然だが、それではもう一回戦っても熱戦になるかというと、そうはならないと思う。おそらく田中がワンサイドで勝つだろう。

というのは、フライ級に上げたばかりの田中がますますクラスに慣れていくことに加え、木村のラフファイトにも対応できることが分かったからである。返す返すも、先にクリーンヒットを奪ったのが木村でなかったことは残念である。しかし、それももちろん実力である。

それでは田中に弱点がないのかというと、それもまた違うような気がする。ダメージブローこそ避けたものの木村の大振りパンチを何度か受けていたことは腫れた顔をみれば明らかだし、決定力でも井上兄には遠く及ばない。ボクシングセンスという点でも、ケンシロウ君の方に分があるように見えるのはひいき目だろうか。

このあたりのクラスには現在、日本人有力選手が数多い。田中には中部地区限定で外国人選手とばかりやらずに、階級最強を目指す志の高い試合をしてほしい。そして、可能であれば今日のような「どつき合い」ではなく、ミゲール・カントのような卓越したディフェンステクニックを見せてもらいたい。田中には、それができる素質があると思っている。

[Sep 28, 2018]