928 20年振りの知床五湖 [Sep 17, 2018]

知床五湖に来るのは20年ぶりくらいになる。その時まだ知床五湖フィールドハウスはなかったし、高架木道もなかった。40年以上前に来た時は5湖すべて回ることができたのだが、20年前には1湖までしか歩くことができなかった。現在は、レクチャーが必要だが地上遊歩道で5湖回ることができるし、1湖までは高架木道でいつでも安心して歩くことができる。

初めて行った時、「知床五湖は1湖、2湖と呼ばれていて個別の名前はありません」「最近まで開拓入植者が住んでいましたが、クマも多く出るので、現在は定住者はいません」といった説明があったことを覚えている。以来半世紀近くが経過し、施設も歩道も立派に整備された。

よく知られるように、「知床」とはアイヌ語で「地の果て」を意味する「シリエトク」からきている。もともと、アイヌ民族が「シリエトク」と呼んだ地域は3つあったが、いま日本の領土であるのは知床半島だけで、あとの2つはロシア領土の樺太(サハリン)にある。

「地の果て」と呼ばれるだけのことはあって、知床半島の先端にある知床岬までの車道はなく、あるのは登山道と航路だけである。登山道を通るとしても、夏はヒグマの住処であり、冬は厚い雪に覆われて相当の上級者でなければ岬までは到達できない。

車道が通っているのは、ウトロ側がカムイワッカの滝まで、羅臼側は相泊まで。そこから先は漁業関係者が昆布干しをしたり漁船が停泊する施設はあるものの、歩いて進むことは困難である。

知床五湖はウトロの先、到達できる最も奥の部分に近い。ウトロを過ぎると、全くひと気はないがきれいに整備された道が続く。「ホテル地の涯」のある岩尾別温泉への道、さらにカムイワッカの滝への道を分けると、広い有料駐車場のある知床五湖に到着する。駐車料金は500円、環境保護に有意義に使っていただきたい。

レクチャーのいらない1湖への高架木道を歩く。距離は往復で2km弱、1時間あれば行って帰って来られる。以前と比べて、たいへん眺望が開けている。昔は背の高さに伸びている笹の中を進むため、背後にそびえる知床連山が見えにくかったし、湖面も水際まで着いてようやく見えるくらいだった。

それが、高さ2~3mの高い位置にあるものだから、かつての笹薮の上を通過することになる。こうした高架道は下から見ると眺めを分断して無粋であるが、上から見る分にはたいへん景色がいい。

地図をみれば五湖の背後は知床連山であり、遠く海別(うなべつ)岳から羅臼岳、硫黄山、知床岳へと続く1000m峰であることは分かっているのだが、これだけ鮮やかに望めるというのは予想以上であった。

そして、目線が高いので、開拓民の家があったという海岸方面の眺めも開けており、原野の向こうに海面も見ることができる。荒涼とした風景の中で防砂林が整備されているのは、かつて人家があった名残りだろうか。

日頃参考とさせていただいている村影弥太郎氏のホームページによると、現在ユースホステルやさけます孵化施設のあった周辺を中心に岩尾別集落があり、山形、福島、宮城からの開拓入植者や樺太からの引き揚げ者による多くの人家があったという。

最終的に、通いの畑作などがなくなったのは昭和50年代というから、私が最初に知床五湖に来た頃のことである。当時の記憶はおぼろげだが、少なくともいまのように大きな駐車場はなかったし、耕作地や牧草地もすでになかったように思う。

この日は、知床峠を越えて羅臼に入ったあたりで暗雲が漂い、標津まで走る間にゲリラ豪雨に遭ってしまったのだけれど、五湖を歩いている時には曇りで風もなく、気持ちいいハイキングを楽しむことができた。

[Oct 2, 2018]


知床五湖には、クマ除けと自然保護のため高架木道が作られた。1湖までしか見られないが、眺めは昔よりよくなった。


歩道橋終点からみた1湖。レクチャー受講で歩くことのできる昔の登山道とここで合流する。