076 伊豆ヶ岳 [Oct 2, 2018]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

霧降高原を雨で撤退した後、山に行くには不適当な日が続いた。9月初めは引き続き気温が高く、中旬の北海道旅行から帰ってくると毎日雨で週末には台風が来た。

京浜工業地帯でタンカーが岸壁に激突した台風が北海道沖に去った後、ようやく晴れ間が覗いた。とはいえ、のんびりしていると次の台風がまた沖縄あたりをうろうろしているので、即断即決で火曜日に山歩きに行くことにした。

台風が来た日曜日は強風でほとんど寝られなかったので、月曜日に出発する体力はなかった。火曜日に日帰りするとなると、朝早く出て夕方になる前に帰ってこなければ通勤ラッシュに巻き込まれる。晴れ間は長く続きそうにない、ということで、車を使うことにした。

行き先は秩父・伊豆ヶ岳(正確には奥武蔵である)。丹沢や奥多摩より道路が空いていそうだし、これまで行ったことがなかった。奥多摩に長く行っていると、東京都水道局の管轄から外れると途端に登山道が未整備になるのを感じる。だから埼玉に行くのはあまり気が進まなかったのである。

とはいえ、伊豆ヶ岳は日帰りの山歩きではたいへん有名な山である。標高861mと手頃な高さであり、翌週に迫っているお遍路歩きの予行演習にもちょうどいい。という訳で、当日は3時半に起きて、4時半には家を出発した。

常磐道、外環道、東北道、圏央道と乗り継いで、狭山日高ICから国道299号線に入る。秩父方面へはこの道しかないというルートで、高麗川に沿って、西武電車と並行して進む。7時05分、家から2時間半で正丸駅到着。

駅前には十数台止められる駐車場があり、1日500円である。平日朝7時ということで2番目に止めることができたが、帰りに見ると3分の2は埋まっていたので、シーズン中の休日は厳しいかもしれない。ともあれ、支度を整えて7時20分スタート。

売店の横の階段を下り、線路下のトンネルを抜けて、しばらく道なりに舗装道路を歩く。道はずっと登り坂で、息がはずむ。気のせいか朝一の電車で来るより楽なように感じるのは、移動時間が少なく済んだからであろうか。途中、閉まっている売店と自販機が1台だけあったが、その他は点々と民家が続き、30分歩くと分岐点に達する。

この分岐は、伊豆ヶ岳直行ルートと正丸峠ルートの分岐で、往路は正丸峠ルート、復路は伊豆ヶ岳から直に下りてくる計画である。分岐を過ぎると最後の民家となり、ここからは沢沿いの登山道となる。

2日前の台風の影響で、さすがに水量が多かった。沢には大量の水が流れてきているし、登山道にも水があふれている。脇の小さな沢から流れ込んだ水が登山道に流れるので、道だか沢だか分からない。

一度は、水に沿って登って行ったら登れなくなって、「関東ふれあいの道」がこれではおかしいと思って引き返したら、登山道は別にあった。いましがた登っていたのは、本当の沢なのであった。

登山道に入って20分ほど進むと、旧正丸峠との分岐で、ここから正丸峠まで10分と書いてある。こういう案内板でよくあることながら、10分ではとても着かない。ここまで歩いた時間からいってあと20分はかかるだろうと思っていたら、そのとおりだった。

ようやく木々の間から林道のガードレールが見えてくると峠は近いが、沢筋から登る斜面がたいへん急なので休み休みでないと登れない。沢から20mほどの奥村茶屋への階段を何とか登って、8時45分正丸峠着。

ここまでの谷筋の登山道はほとんど日が差さず暗かったが、峠は日差しがまぶしくて暑いくらいだった。東向きに景色が開けていて、昭和天皇行幸の御展望記念碑が立てられている。

奥村茶屋のシャッターは閉まっていたが、霞んで見づらい東京方向を眺めていると車でご夫婦が登ってきて、シャッターを開け始めた。ちょうど9時であった。伊豆ヶ岳方向は茶屋の奥の分岐を案内にしたがって進む。


登山口となる西武線正丸駅。1日500円の駐車場がある。平日だが、帰りには3分の2が埋まっていた。


2日前の台風で、登山道は川と化していた。こんなものかと思って登ったら、本当の沢だった。


正丸峠には昭和天皇記念碑がある。ちょうど9時だったので、茶屋のご夫婦が車で上がってきたところだった。

 

正丸駅は標高302m、正丸峠は630mだから、伊豆ヶ岳861mの半分以上は登ってきた計算になる。最後の登りはさすがにきつかったが、ひと休みしたので回復した。ここからは大好きな稜線歩きである。

秩父と奥多摩は同じ山並みの北側と南側なので直線距離はそれほど離れてはいないが、こうして歩いてみると印象がかなり違う。この日はたいへん天気がよく日差しがきつかったのだが、稜線を歩いているとそう感じないのは、やはり山の北にあるというのが大きいのかもしれない。

登山道の状況は心配したほどではなく、沢筋が台風で水が多かったのに比べ、稜線はぬかるみもなく歩きやすかった。その理由の一つが、登山道に杉の落ち葉が積もっていたことである。人がやったにしては広範囲過ぎるから、おそらく台風の影響で葉が散ってしまったのだろう。

正丸峠で2、3グループ見かけた後は山中で人と出会うことも声を聞くこともなく、この時点ではたいへん静かな稜線歩きだった。3つ4つとコブを越えていくけれども、それほど辛い登りはなく、やがて木々の間から景色の開けた小高山720mに到着。

ここにはベンチが3つ置かれていて、少し湿ってはいたが座る分にはほとんど問題はなかった。せっかくのいい景色だし人もいないので、持ってきたどら焼を食べる。朝食が4時台なので、甘いものがたいへんうれしく感じる。

目の前に連なる山並みは、武川岳から二子山に続く山々だろうか。その向こうにあるはずの武甲山はここからは見えないようだ。ずいぶんと山奥に来たような印象だが、秩父でもここは入口、まだまだ奥がある。

20分ほどゆっくりして出発。頂上から下ると、途端に人の声がし始めたのはちょっと驚いた。正丸峠に寄らず伊豆ヶ岳に直行するルートと合流するのが、小高山を下ったこのあたりだったからである。

先を歩いていたのは、小学生の団体であった。10人ちょっとだから、1クラスにしては少ない。あるいは、このあたりの学校はこんな規模なのかもしれない。その人数でも一度に休むとなると場所が限られる。下って登った五輪山にはベンチが3つあったが、すべて占領されていたので、立ったまま小休止して先に進む。

五輪山から下りたところからガレ場の広い道が続いているけれども、トラロープが張られ「落石危険」と書かれている。ここからが男坂で、かつての主ルートであった。

観光協会のクレジットで、鎖場は落石が頻発するので、女坂を通ってくださいと書いてある。トラロープもあるので、中に入りづらい。かつての主ルートだといっても、いま現在危険であれば避けるのがベターである。「立入禁止」とまで書かれていないのは、オールド登山者の抵抗を勘案してのものだろうか。

案内板の指示どおり女坂に向かうが、こちらも数年前の台風で斜面が崩落して新・女坂にルートが変更となっている。スイッチバックのきつい坂だが、すぐ上に男坂から伸びている稜線が見えるので終点は近い。さらにひと登りで頂上に続く稜線となる。

頂上近くは巨大な岩が続き、なるほどこれらの岩によって伊豆ヶ岳が有名になったのだろうと思わせる。800mにも満たない低山にもかかわらず伊豆ヶ岳がたいへん有名なのは、おそらく男坂の岩場にあったのだろうと思われるが、残念ながら今日では推奨されないルートである。

頂上はそれほど広くなく、三角点を中心にいくつか座れる岩がある他はベンチや展望施設はない。すでに先客が何人かいたことに加え、五輪山でパスした小学生団体がおっつけ登ってくるはずなので、5分ほど休んですぐに下ることにした。


正丸峠からひと登りすると小高山。ここがこの日一番の展望だったかな。誰もいなくて静かだったし。


小高山を過ぎると、途端ににぎやかになる。この階段を登ると五輪山で、小学生の団体に占領されていてそのまま先に進む。


男坂の入口にはトラロープが張られている。立入禁止とは書いてないけれども、こうされると入りづらい。

 

頂上から女坂を下る途中で、さきほどの団体と、もう一組小学生の団体とすれ違った。ガイドブックに埼玉県西部の小中学生のほとんどが来ている山と書いてあったが、なるほどと頷かせる盛況であった。

さきほど小学生に占領されていた五輪山は、みんな伊豆ヶ岳に向かったので誰もいない。この日はインスタントラーメンを作るつもりでEPIガスを持ってきていたので、さっそくお湯を沸かす。

とはいえ、朝晩は肌寒かったにもかかわらず11時が近くなると結構暑い。あたたかいみそラーメンもおいしかったけれど、冷えたフルーツパックがさらにおいしかったのは、やむを得ないことであった。

「冷えた」というのは、プラティパスに入れて凍らせておいた水がまだ半分以上氷のままだったからで、飲み水にはならなかったがヴィダーインゼリーやフルーツを冷やすのに役立った。寒い時にはあたたかいものが欲しいのに、暑くなると冷たいものがありがたいから現金なものである。

30分ほど休むと、伊豆ヶ岳の方からまたにぎやかな声が聞こえてきたので出発する。帰りは小高山の手前から正丸駅に直接下りるルートをとる。

この分岐を長岩峠というのだが、ここから先はこれまでにも増してたくさんの人とすれ違った。私同様のシニアがおり、中学生らしき団体がいる。話すのを聞いていると伊豆ヶ岳には行かず長岩峠から「げんきプラザ」というところに下りるらしい。ハイペースで登って来たのか、みんな息が上がっていた。

私は下りだったので息は上がらなかったが、スイッチバックの下りがずっと続いて休むところもなく、登るには正丸峠経由よりつらそうな道であった。30分ほど下ると数十mあろうかという巨岩「かめ岩」があり、今度は幼稚園生数十人の団体とすれ違った。台風の2日後で心配したが、どうやら行楽日和だったようである。

合流点までスイッチバックを繰り返してかなりバテたけれど、そこから正丸駅までの道も結構長かった。往路はさほど長いと感じなかったのだけれど、さすがにしばらくぶりの山歩き、それも前回は霧降高原で階段を登り下りしただけだったので、体力が衰えていたようである。

計画段階では、伊豆ヶ岳を経て子ノ権現まで約15kmを歩こうと思っていたのだが、これだと駐車場に戻るのが不便であるので、約8kmのコースに短縮したのである。15kmにしなくてよかったとしみじみ思った。

正丸駅に戻ったのは12時45分、五輪山からの下りは1時間半ほどかかった。階段の下り口にある水場で、顔を洗わせていただく。たいへん汗をかいたので、冷たくてありがたかった。

せっかく車で来たので、帰路は5kmほど下流にある休暇村奥武蔵の日帰り入浴で汗を流す。お風呂場は今年新装になった「もりとそらの湯」で、表示がなかったので温泉ではないようであったが、広くてきれいなお風呂であった。

この日の経過
正丸駅 7:25
8:45 正丸峠 9:00
9:25 小高山 9:45
10:20 伊豆ヶ岳 10:25
10:45 五輪山(昼食休憩) 11:20
11:50 かめ岩 11:50
12:45 正丸駅
[GPS測定距離 8.6km]

[Nov 12, 2018]


女坂経由で伊豆ヶ岳頂上へ。山頂はあまり広くなく、大勢いると長居できない。


帰りは長岩峠から正丸駅に直行するルートをとる。途中、かめ岩という巨岩があり、幼稚園生の団体と遭遇。

車だったので、帰りは休暇村奥武蔵の日帰り入浴を利用。今年(2018年)新装の新しい浴室でした。温泉ではないようですが。