093 ロマチェンコ、ライト級統一 [Dec 8, 2018]

WBA/WBO世界ライト級タイトルマッチ(2018/12/8、ニューヨークMSGシアター)
Oワシル・ロマチェンコ(11勝9KO1敗) 1.06倍
ホセ・ぺドラサ(25勝12KO1敗) 12.5倍

いまや、実力的にも興行的にも、ボクシング界の中心にいると言っていいほどの勢いにあるロマチェンコ、リナレス戦の次はいきなり統一戦である。相手は、ベルトランを完封したペドラサであるが、正直なところ役者が違うだろう。

2014年3月、プロ2戦目でオルランド・サリドに挑戦し、手段を選ばないサリドに苦杯を喫して後は世界タイトルマッチばかり10連勝、しかも8連続KO勝利中である。「ロマチェンコ勝ち」とジョーさんが呼ぶ相手を戦意喪失に追い込む卓越した技術は、もはやメイウェザー以上と言っていいだろう。

メイウェザーの場合は露骨に危険な相手を避ける傾向があり、階級最強を争う対戦は、ディエゴ・コラレスとカネロ・アルバレスくらいしか思い当たらない。フレイタスでもマルガリトでもサーマンでもやれば勝てたと思われるが、結局やらなかった。

ロマチェンコの場合は、その時点で階級最強と思われる相手との対戦をクリアしている点でメイウェザーより優れている。ライト級でも他に楽な相手はいたのに、あえて最強と思われるリナレスに挑戦した。もはや相手の方から対戦を避けられる傾向にあり、ジャボンテ・デービスは対戦を避けたと伝えられる(1階級とはいえクラスが違うので責められないが)。

ペドラサはWBOのチャンピオンなので、マイキーがロバート・イースターに勝って上のクラスに移った現在、対戦可能な唯一の対抗団体チャンピオンである。他の面々というと、アンソニー・クロラやルーク・キャンベルなどリナレスに負けた組や、マイキーに負けたイースターしかいない。

つまり、現時点におけるライト級の頂上決戦といっていいカードなのだが、それでもミスマッチになってしまう可能性がかなり大きいのは悲しいところである。

その最大の理由が、ペドラサがジャボンテ・デービスと戦った時、全く歯が立たなかったという実績である。デービスのスピードと敏捷性、パンチ力は素晴らしいものの、体格が小さくパワーの点では物足りない。だから計量失格しても上のクラスに上がらないのであり、そのデービスに打つ手がなかったということは、ロマチェンコにも同様であろうと推測されるのもやむを得ない。

クラスを上げてベルトランには完勝したけれども、普通に考えてベルトランはたいした選手ではないし、しかも30代半ばでピークをとっくに過ぎていた。かつて計量失格やドーピング陽性もあり、力が落ちる時は急激に落ちるタイプである(オルランド・サリドもそうだった)。

オッズにもそれは現れていて、チャンピオン対決というよりは選択防衛戦というような開き方になっている。おそらく試合もオッズ同様に開いた内容になりそうで、ライト級でも「ロマチェンコ勝ち」が見られると予想する。ロマチェンコKO勝ち。

 

WBA/WBO統一ライト級タイトルマッチ(12/8、ニューヨークMSGシアター)
ワシル・ロマチェンコ O 判定(3-0) X ホセ・ペドラサ

私の採点は116-110。つまり10Rまでは96-94ということで、「ミスマッチ」という予想は大外れだった。ロマチェンコは4年振りの判定勝ち。

予想外の緊迫した試合になった原因は、両者ともにある。まずペドロサだが、非常に動きがよく、突っ込みすぎずディフェンス重視の戦略がうまく当たって、ほとんど差がないラウンドを多く作ることに成功した。ジャッジの一人は1ラウンドしかペドロサに与えていないけれど、これはちょっとかわいそうだった。

もともとがテクニシャンで、パワーで圧倒するというより打たせずに打つタイプである。ベルトラン戦はまさにそのような勝ち方をしたが、今回もいい勝負ができたのは終始ロマチェンコが前に出てくれたからで、左右スイッチしたり足を使ったりして11Rまで深いダメージを受けなかったのはさすが2階級制覇王者である。

惜しむらくは、これまで「ロマチェンコ勝ち」を許してきた面々よりずっとパンチを当てられたにもかかわらず、パワーがなくロマチェンコをたじろがせるところまで行かなかったことである。意外にスコアが開いたのは、見栄えのあるパンチを入れられなかった点も大きかった。

序盤にロマチェンコの左目を切ったのはおそらくヒッティングなので、もう少しパワーがあれば、面白い場面があったかもしれない。もっとも、ロマチェンコが前がかりで来たから当ったのであって、動かれたらどうだったかは分からない。

一方のロマチェンコ、もともと向かってくる相手を捌く方が得意で、自分から仕掛けて強いタイプではない。にもかかわらず、今回の試合では最初から前に出てプレッシャーをかけた。その分、いつものように相手を空転させるフットワークもボディワークもあまり見られなかったのは物足りなかった。

あるいは、ライト級にフィットしていないのかもしれない。もし5ポンドのウェイト増が負担にしかなっていないとすれば、両足に2.5ポンドずつ重しをつけて戦っているのと同じだから、フットワークに切れがなかったのもうなずける。カウンターの切れもスーパーフェザーの時の方が鋭かった。

思えば、あのパッキャオも、ライト級あたりでフレディ・ローチに付き、それまでの左ストレートの突進一本から腰を落ち着けて右フックを叩き込む戦い方に変えたのだった。プロ入り時点ですでに完成度が高かったロマチェンコだから改善の余地は少ないのかもしれないが、このままの戦い方だと今後は厳しいかもしれない。

そうした課題があったにせよ、11Rの攻勢は見事だった。一発効かせた後に強振せず、空振りがほとんどなかったところはワイルダーにもぜひ見習ってほしいところである。そして、ダウンを奪ったのはリナレスと同じボディ打ち。パワーファイターではないので一発の破壊力には欠けるけれども、ああいう技ありの攻撃はさすがパウンドフォーパウンドである。

[Dec 9, 2018]